フランス人の夫と結婚したフリーアナウンサーの中村江里子さん。日本とパリでは、恋愛の価値観や同性婚、選択的夫婦別姓への考え方が違っていると語ります。そこで、ジャーナリストの鈴木 款さんを交え、「日仏大人の恋愛事情」について語ってもらいました。

日本とフランスは「恋愛の始め方」がそもそも違う

“おひとりさま”が増え続ける日本と、年齢に関係なく恋愛を楽しむフランス。ここでは、フジテレビ解説委員でジャーナリストの鈴木 款さんと、「大人の恋愛事情」についてお話ししました。

【イラスト】日本とフランスで違う恋愛観

中村江里子さん(以下「中村」):フランス人の恋愛の始め方は、気になる人がいたら、まずデートをして、なんならキスまでしてしまい、そのときの感覚で付き合っていくと聞きました。言葉で「つき合いましょう」というわけではなく、最初からカップルとしてスタートして、思った相手と違ったら、お別れをするスタイルです。

鈴木 款さん(以下「鈴木」):日本の高齢世代では、感覚でつき合うというのはむずかしそうですね。

中村:お互いに誘いにくい状況だと、面倒になって、ひとりのほうがラクだと思う人も増えるのでしょうね。

鈴木:そういうこともあるかもしれませんね。

日仏それぞれ恋愛に求めるもの

中村:日本で大人の男女が恋愛に求めるものはなんでしょうか。

鈴木:独身ミドル・シニア世代が婚活・恋活で重視する上位は、価値観、年齢、健康状態というデータがあります(上の表)。

中村:フランスではマクロン大統領をはじめ、年上の女性と若い男性のカップルは珍しいことではありません。相手に求めるものは、楽しい会話や学びという男性も多いです。

鈴木:日本ですと、たとえば芸能界で、男性が年上で女性が若い年の差カップルが話題になることがありますが、その逆パターンはあまり聞きませんね。

中村:フランスでも自分の娘ぐらいの年齢の女性とばかり恋愛している男性もいますが、女性のほうが10歳以上年上というカップルも珍しくはないです。

日本の未婚背景には「収入」が隠れている

鈴木:日本の若い世代についていうと、恋愛や結婚できない背景には、収入が大きな要因になっています。

中村:お金は2人で出し合えばいいのではと思うのですが、とくに男性が責任を感じているのですよね。

鈴木:日本では賃金が20年以上ほとんど伸びていないなかで、物価や子育て費用はすごく上がっているので、家庭をもつことはあきらめようと考える若い世代が残念ながら増えています。

中村:そうやって恋愛や結婚から遠ざかってしまうのですね…。

鈴木:少子化対策として、東京都がアプリなど婚活事業に予算5億円をかけていますが、賛否両論ですね。行政が厳密に個人情報を扱うので安心といわれる一方で、「子育て世代への支援など、ほかにもやることがあるのでは…」という批判もあります。

中村:自治体がお膳立てするのは、フランスからすると大きな驚きです。

同性婚も多いフランス。日本では高齢層が反対

鈴木:日本ではまだ同性婚が認められていませんが、フランスでは2013年に同性婚法が成立しています。

中村:まわりでも同性カップルは多いですし、隠すことなく公表されています。同性婚をして子どもをもつ人も少なくありません。

鈴木:アメリカの会社が世界24か国で調査した結果によると、日本では74%の人が同性婚に賛成しています。一方、別の調査では高齢者に反対意見が多い傾向があります。同性婚に宗教上の理由で反対する人たちもいます。日本では家制度を守るなどの理由で、選択的夫婦別姓がまだ認められていません。

フランスは夫婦別姓の方が多い

中村:夫婦別姓は、フランスでは議論にならないほど当たり前になっています。フランス人同士でも国際結婚でも、夫婦別姓の方が多いです。ただ、いずれの場合も公的な書類には生まれたときの姓の記載を求められます。また、子どもたちの友人には両親の連結姓のお子さんも多いです。多様性は日本だと会社でも、受け入れられないのでしょうか。

鈴木:選択的夫婦別姓は国民の6〜7割が賛成しているという調査結果がありますし、経団連も「女性活躍を阻害する」と早期実現を求めています。政治はこうした声を聴くべきだと思います。多様性を認めない企業への社会の視線は年々厳しくなっています。若い世代は多様性を自然に受け入れていて、多様性を認めない企業は、今後存続自体がむずかしくなるでしょうね。