最終ラインからのビルドアップが肝に【写真:ロイター】

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マンCやアーセナル、レバークーゼンなども3バック採用…利き足も大きなポイントに

 自陣からビルドアップの際、最終ラインを3人で構成するチームが増えている。

 代表的なところではマンチェスター・シティ、アーセナル、チェルシー、リバプールのプレミアリーグ上位勢、ブンデスリーガ昨季王者のレバークーゼン、ロベルト・デ・ゼルビ新監督のマルセイユなどが挙げられる。これらのチームも状況に応じて3と4を使い分けているが、基本を3枚回しにするチームは少なくない。

 4バックでも、どちらかのサイドバック(SB)が高い位置へ上がって3バック化する。あるいはレアケースだが、シティのようにセンターバック(CB)がボランチ化する「偽CB」による4→3もある。

 3枚回しの理由は、相手のFWに対して数的優位を作ること。さらにパスの距離を短めにできること。

 4バックといっても、SBがタッチラインいっぱいに開いてしまえばビルドアップの中央部は実質2バックである。そこに相手の2トップがプレスしてくると数的優位がなくなり、GKへバックパスか詰められる前に蹴るしかなくなる。3バックなら1人はフリーにできる。もちろん3バックに対して3人がハイプレスすればそのかぎりではないが、その時はボランチがフリーになりやすく、もしそこもマークしてくるなら、前線近くまたはサイドは確実にフリーができるのでボールを前進させられる。

 現在イタリアでコモの監督を務めているセスク・ファブレガス氏は、「相手がプレスをしてくるなら、深い位置でキープして引き出せば背後を取りやすい。その時のパスの距離は15メートルより7、8メートルのほうがミスは出にくい」と、話していた。パスの距離が長くても問題ないチームもあるが、一般的に距離は短めのほうが技術的な難しさは減る。また、近い距離でのパスによって相手を釣り出す効果も期待できる。

 後方3枚回しはビルドアップ重視チームの基本形になってきたが、それとは別に4バックあるいは長い距離のパスによるビルドアップを行う場合、SBが「逆足」を使えることが重要になってきている。

 従来、右SBは右利き、左SBは左利きが望ましいとされてきた。サイドと同じ足でボールを蹴ったほうが、より奥行を使えるというのが大きな理由である。

 ところが、現在は守備側のプレスが速くなり、長いパスをCBからSBへ展開した時に寄せきられてしまうケースが増えている。その時に、例えば右SBが右足でボールを扱いながら身体を入れるとタッチライン方向を向いてしまうのでパスコースが極めて限定されてしまう。しかし、左足を使って半身でキープできればフィールド中央へ向けるのでパスコースは一気に開けるのだ。

 ポルトガル王者のスポルティングはビルドアップの距離が長めで、ウイングバックがパスを受けた時に寄せ切られてしまいがちなのだが、右ウイングバックが左利きなのでそこで詰まりにくい。右ウイングバックのバックアップも左利き。左サイドも左利きなので、単にウイングバックに右利きがいないだけかもしれないが、サイドと利き足が逆のほうがビルドアップで利点があるのだ。さらに両足利きであることも求められていくだろうと予想できる。

 グアルディオラ方式の普及によって、ビルドアップは形だけでなく技術的な進歩が今後も必要とされていくのだろう。(西部謙司 / Kenji Nishibe)