「孤独のグルメ」の初映画、釜山映画祭で初お披露目 監督・主演の松重豊さん「僕の奇跡」
韓国・釜山市で開幕した釜山国際映画祭（BIFF）で3日夜、連続ドラマシリーズ「孤独のグルメ」の初の映画が、来年1月の日本公開（韓国は同3月）に先駆けてお披露目された。主人公の爽快な食べっぷりは「ホンパブ（韓国語で『一人飯』の意味）」が韓国で広がったきっかけの一つとされ、日本に劣らない人気がある。監督、脚本、主演を務める松重豊さん（61）＝福岡市出身＝も参加し「料理をおいしく食べることだけで、東アジアでこれだけ愛されるドラマになったのは僕の奇跡です」と話した。
松重さんは2日の開幕式で、口をもぐもぐさせながらレッドカーペットを歩く姿も話題になった。3日、映画初公開を前に現地で記者会見やファン向けイベントに参加した松重さんは「福岡で育ち、幼い頃から韓国のラジオを聞いていた。食とドラマを通じて、日韓関係が良くなると信じている」などと述べた。
輸入雑貨商を営む主人公の井之頭五郎が「腹が…減った…」と、営業先で食事処に立ち寄り、自由に食するグルメドラマ。2012年に放映が始まった。映画は約2時間でドラマより長く、フランスや韓国、長崎県の五島列島などを舞台に、えたいの知れないスープを探す旅に出るストーリー。韓国の人気俳優と交わるコミカルなシーンもある。
韓国では「孤独な美食家」との題名で、10年代の後半からネット配信などで人気が出てきたようだ。
釜山市の男性会社員（30）は「『おいしい』と決まり文句ばかりのグルメ番組とは違う」とファンの一人。別の同市男性会社員（26）は「静かに食と向き合える雰囲気や、店主との温かくリラックスしたやりとりが好き」と話す。ソウル市の会社員（49）は「いつの間にか孤独が幸福感に変わってる」と、ポジティブに進む設定を好んでいる。
韓国では会食文化が根強く続いてきた一方で、流行の移り変わりが激しく、新しい店ができては消える。
韓国文化に詳しい翻訳家でライターの桑畑優香さんは「小さい店で腕1本、味を守り続ける日本の職人技のようなものへの憧れもあるようだ」と、人気の背景を説明している。【釜山・平山成美】
