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今でも古さを感じさせないスタイリング

BMW i3を新車で購入した人は、かなり未来志向だったに違いない。登場は2013年で、その頃としてはクラス最高の完成度をAUTOCARでは絶賛している。惜しまれつつ、2022年7月に生産終了を迎えた。

【画像】今も古さを感じさせない BMW i3 同時期のHVスーパーカー i8 現行のi4とi5、i7も 全155枚

i3は6年間の月日をかけて開発され、極めて高水準な技術が投入されていた。航続距離は10年前では優秀といえ、加速は最高速域まで衰えず、斬新なスタイリングは今見てもまったく古さを感じさせない。


BMW i3(2013〜2022年/英国仕様)

このプロジェクトは極秘扱いとされ、ドイツ・ミュンヘンの研究開発センター内でも、一部の人しか詳細を知らなかった。発売と同時に多くの物議を醸し出し、社内には開発費が無駄になったと嘆いた人もいたらしい。

それでも、その後のBMWだけでなく、ハイブリッドやバッテリーEV全体へ与えたインパクトは大きかった。英国ではテスラ・モデルSより発売は早く、未来のクルマが従来的なサルーンとは異なる可能性があることを、われわれへ印象付けた。

i3最大の特徴が、限界へ挑戦したような設計にある。アルミニウム製シャシーの上に、カーボンファイバー製ボディが架装され、車重は1290kgと軽量。ルノー・ゾエより300kgも軽く仕上がっていた。

パワートレインは、2種類から選べた。最高出力170psの駆動用モーターが載った、航続距離160kmのバッテリーEV仕様が、その1つ。バイク用の2気筒647ccガソリンエンジンが発電を担う、レンジエクステンダー付きハイブリッド仕様、RExも選択できた。

M4に迫る中間加速 コーナリングも強み

駆動用バッテリーの容量は、当初22kWh。その後、33kWhと42.2kWhも追加されている。いずれもシングルスピードのトランスミッションを介し、駆動用モーターがリアアクスルを駆動する。

0-100km/h加速は、BMW 320dと同等の7.3秒。中間加速は鋭く、80kmから120km/hまで4.9秒でこなす。これは、現行のBMW M4に0.5秒遅れるだけだ。


BMW i3(2013〜2022年/英国仕様)

動力性能に加えて、i3の強みといえるのがコーナリング。背が高めのプロポーションながら、ボディロールは小さく、充分なグリップとシャシーバランスを獲得している。カーブが連続する郊外の道を、爽快に駆け回れる。

2018年にフェイスリフトを受け、スポーティなi3 sが登場している。最高出力は11psアップし、車高は10mmダウン。トレッドは40mm広がり、20インチのホイールをハイグリップなタイヤが包んだ。安定性が向上し、運転の魅力度も増していた。

インテリアは高級ラウンジのようで、耐久性も高い。トランスミッション・トンネルがなく、シンプルなダッシュボード回りで、実際の広さ以上の開放感もある。インフォテインメント・システムは、当時のiドライブ。ロータリーダイヤル付きだ。

中古車で選ぶなら、レンジエクステンダー付きのi3 s RExが英国編集部のオススメ。ハイブリッドで航続距離は305kmと長いから、毎日の通勤にも充分耐えられるはず。

ハンサムですばしっこく、広々としたi3。仕様次第で充分な航続距離も得られる。その魅力に惹かれ、アウディのチーフデザイナーだった人物は、2台購入したという。

新車時代のAUTOCARの評価は?

印象的なスタイリングとインテリア、運転好きを惹き込む軽快な走りなど、間違いない魅力を備えたi3。こんなクルマはとても珍しい。テスラが先行して実現したが、BMWもそれに並んだ。

クルマ自体と運転を楽しめる、バッテリーEVといえる。我慢は最小限に留められ、思い切り謳歌するために存在するようなモデルだ。 (2014年1月22日)


BMW i3(2013〜2022年/英国仕様)

オーナーの意見を聞いてみる

ジェラルド・マクガバン氏

「実は2台目のi3で、かれこれ3年目になります。多くのBMWを購入してきましたが、その殆どはMモデルでした。それでも、i3はこれまで所有してきたBMWの中で、最高の1台だと思っています」


BMW i3(2013〜2022年/英国仕様)

「個性と楽しさが巧みに融合したようなクルマで、運転すれば笑顔になれます。スタイリングは、万人受けするものではないかもしれませんね。でも、昨日新車として発表されたとしても違和感ないほど、デザインは新鮮だと思いませんか」

「確かに、300kmしか走れない航続距離や、古いiドライブは改善したいポイントです。しかし、それ以外はパーフェクトです」

購入時に気をつけたいポイント

エアコン

エアコン・コンプレッサーの故障へ用心したい。車内だけでなく、駆動用バッテリーの冷却にも用いられており、致命的な問題に繋がる可能性がある。コンプレッサーの金属片がエアコンの配管内に飛び散り、修理が高額になることも多いという。

予め、エアコンの動作は確認した方が良いだろう。前オーナーに、経過なども確認できればベターだ。

燃料系統


BMW i3(2013〜2022年/英国仕様)

レンジエクステンダー付きのi3では、2013年9月から2016年12月までの製造車両で、燃料タンクのベンチレーション系が擦れて、気化したガソリンが漏れる不具合が報告されている。最悪の場合、火災につながるという。ディーラーで対策は可能だ。

ブレーキ

i3の回生ブレーキは強力。基本的に、走行中は摩擦ブレーキに頼る必要はない。そのかわり、使用頻度が少ないがゆえに錆びがち。減っていなくても、ディスク交換が必要になることも多い。予め状態は確認しておきたい。

電気系統

車載機能やインフォテインメント・システムの不調は、補機バッテリーの劣化が原因のことが多いという。オーナー間の情報では、補機バッテリーは3年ほどで駄目になるとされている。すべての機能が正常に動くか、確かめておきたい。

ボディ

ドア開口部の形状が特殊で、乗り降りを繰り返しているうちに、ラバーシールが擦れて
破れてしまう。密閉性が損なわれ、雨水が侵入することもある。事前に状態を観察しておきたい。

知っておくべきこと

英国仕様のi3には、タイプ2と呼ばれる充電ポートが標準装備されている。ACコンセントに繋ぐと、11kWの速度で充電される。これは、かなり遅い。

DCで最大50kWの速度に対応する、CCSと呼ばれる高性能な充電ポートはオプションだった。現代の水準では速いといえないが、駆動用バッテリーが小容量だから、比較的短時間で満たせる。


BMW i3(2013〜2022年/英国仕様)

i3のキャビン構造はカーボンファイバー製で、腐食しにくく高強度。開口部を広く取り、観音開きのドアを実現させている。安全性は高く、当時のユーロNCAPで4つ星を獲得している。大人でも子供でも、乗員保護性能は優れる。

英国ではいくら払うべき?

5000ポンド(約96万円)〜7999ポンド(約152万円)

2013年式から2014年式のi3を英国では探せる価格帯。走行距離は10万km前後。レンジエクステンダー付きは珍しい。

8000ポンド(約153万円)〜1万999ポンド(約210万円)

レンジエクステンダー付きが増えてくる。走行距離が4万kmを切るような例も、探せばあるようだ。

1万1000ポンド(約211万円)〜1万4999ポンド(約287万円)


BMW i3 レンジエクステンダー(2013年式/英国仕様)

好条件で走行距離の短いi3がご希望なら、英国ではこの価格帯から。しっかりメンテナンスされ、保証が付帯される例も多い。

1万5000ポンド(約288万円)以上

最も条件の良いi3を選ぶなら、英国ではこの価格帯を考えたい。

英国で掘り出し物を発見

BMW i3 レンジエクステンダー 登録:2013年 走行距離:4万5100km 価格:9900ポンド(約190万円)

2013年式の初期型だが、走行距離が短く、ボディやインテリアの状態はかなり良好。しっかり手入れされてきた、1オーナー車とのこと。汚れにくい、オプションのレザー内装が付いている。