早稲田、慶應、上智……有名私大に次々入学!母国を棄て日本の大学に留学する中国人たちの驚きの実態

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中国から逃げ出す方法の一つ

〈日本の大学のランクはこんな風に分かれています。英語に自信のある人は、上智を狙うといいでしょう。成績に自信のない人は△△大学がオススメです。入試は面接と論文だけ。ランクは低いですが、簡単に入れます〉

「赤いインスタグラム」と呼ばれる中国のSNS「小紅書(RED)」。その検索窓に「日本 留学」と打ち込めば、数え切れないほどの日本留学の情報が溢れ出す。なかにはご丁寧に日本の大学ランキングを作成し、「Fラン大学」の意味を解説する動画も ……。

前章で見たように、中国の若者が置かれている状況は極めて過酷だ。良い大学を卒業しても、職はない。ようやく見つけた仕事も賃金は低く、将来性はない。沈鬱な空気に覆われるこの社会で貴重な青春を費やすなら、海外に脱出した方が良いのではないか-こう考え、海外へと「潤」する若者が後を絶たない。

「潤」は中国語で「RUN」と読む。「うるおう」の意味を持ち、英語のrunと発音表記が同じことから、「中国から外へ逃げ出す」ことを表す言葉で、いまの中国社会を理解する重要なキーワードとなっている。

慶應は閉鎖的だから

アメリカやカナダ、シンガポールが人気の「潤」先だが、物価が高いことなどから親が敬遠するケースも少なくない。そこで過熱しているのが、日本への留学だ。今年4月、息子が有名私大に合格した上海在住の李淑英さん(仮名、40代女性)は、日本の大学に進学させた理由をこう語る。

「欧米ではアジア人差別もあると聞きますし、子供に会おうと思っても、簡単には会いに行けない。その点、日本は上海から約4時間。近いし安全だし、中国人も多く暮らしやすい。この夏も、息子に会いに行くついでに温泉旅行を楽しみました」

息子さんがその大学を選んだ理由は? と聞くと、こんな答えが返ってきた。

「学力的には慶應や他の私立も狙えました。ただ、慶應は三田会などの組織が強いイメージで、エスカレーターで上がってきた人も多く閉鎖的な感じがありました。息子の選んだ大学は開放的だし、学校周辺には中国人も多いので環境的にも良い。あと、慶應を作った福澤諭吉は、中国を見下していたんでしょ?」

多少の誤解を含んでいる気もするが、なぜ日本の大学事情に詳しいのか。李さんが続ける。

「微信(中国最大のメッセージアプリ。LINEのようなもの)に日本留学を目指す親のグループがあるんですよ。そこで情報交換をしています。先に子供を日本留学させた『先輩ママ』たちが、各大学の受験事情や勉強法を熱心に教えてくれるんです。次は私が誰かの先輩になる番ですね」

中国には「鶏娃」(ジーワー)という言葉がある。ニワトリの血を注射して、興奮状態にさせてでも勉強させようとするような教育熱心な親を持つ子(娃)のことを指す言葉だが、彼女もまた、鶏娃の親の一人だ。

こうした留学需要の高まりを受けて、留学支援事業も勢いを増している。

学生の街・高田馬場。早稲田を中心に多くの大学の最寄りとなっている高田馬場駅の周辺には、中国語の看板が乱立している。その多くが、中国人の学生向けの予備校だ。

2024年9月14・21日合併号より

後編記事『東大を目指す中学生の子に部屋を購入…!加熱する「中国人の日本留学」その驚きの実態』に続く。

東大を目指す中学生の子に部屋を購入…!加熱する「中国人の日本留学」その驚きの実態