米ロサンゼルス合宿でサンドバッグを打ち、滝のような汗を流す中谷潤人【写真:浜田洋平】

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中谷潤人の米国合宿に潜入

 ボクシングのWBC世界バンタム級王者・中谷潤人(M.T)が23日(日本時間24日)、米ロサンゼルス合宿のスパーリングを打ち上げた。10月14日に東京・有明アリーナで同級1位ペッチ・ソー・チットパッタナ(タイ)と2度目の防衛戦を予定。現地でTHE ANSWERの取材に応じ、過酷なスパー合宿の一端を明かした。戦績は26歳の中谷が28勝(21KO)、30歳のペッチが76勝(53KO)1敗。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 世界の猛者が集うジムで研鑽に励んでいた。乾いた空気が流れるロサンゼルス。中谷は午前9時過ぎに拠点の「ノックアウトボクシングジム」に到着すると、ウォーミングアップを済ませ、すぐにリングに上がった。次戦の挑戦者と同じサウスポーと10回、右構えと2回の計12回。各回のインターバルは30秒だけだ。

「やっぱり強い選手が集まってくるので刺激的です。チーム(トレーナーやマネージャー)がここにいるので、より試合に向けて『一緒に頑張っていける』という感覚ができるのは大きいかなと思います」

 リーチの長さを生かした遠距離と、近距離からの右アッパーを使いわけ。中盤はノーガードで相手と頭をつけ合い、パンチを見切る練習に励んだ。あえてロープを背負い、ブロックを固めた防御姿勢から打ち返すシーンも。「いい感じの調整ができていますね」。互いにヒートアップすると、激しく打ち合うバチバチの空気に。「いつも通りです」。鈍いパンチの音がジム内に響いた。

 8月末から1か月のスパー合宿。最大13回を含め、この日で約150ラウンドを消化した。元全米アマチュア王者で井上尚弥とのスパー経験もあるジャフェスリー・ラミド、アマのインターナショナル王者などハングリーな選手たちと手合わせ。約5年ぶりとなるサウスポーとの対戦だが、相手対策より「自分の成長にシフトしている」と重点を置いた。

 いつもの合宿は15歳から師事するルディ・エルナンデストレーナーが突如5分のスパーを命じるなど“無茶ぶり”があるが、今回は特になし。何もないのが逆に不安にさせるが、「ペースを崩されてナンボなので、その辺は受け入れています」と笑う。

 スパーの後は、サンドバッグ3つと壁に設置されたクッションに囲まれた状況からパンチを打つ練習。ぐるぐるとステップを踏み、計4箇所にパワーパンチを打ちこんだ。マネジャーの弟・龍人氏が「出し切る!」「最後だよ!」と檄を飛ばし、終わった後には滝のような汗。試合終盤の苦しい時にも手を出せるようになるという。

「米国合宿は毎回あんな感じです。動きながら相手を追ったり、下がったりするイメージ。スパーの後にサンドバッグやシャドーで追い込みます。なかなか手が出てこない時がありますけど、それを乗り越えると出てくるようになります」

夢に描く井上尚弥戦「自分がいけると思えばいきます」

 2月に3階級制覇を達成し、7月の前戦では左ボディーストレートでわずか157秒の衝撃KO勝ちを飾った。世界で最も権威のある米専門誌「ザ・リング」の階級を超えた格付けランク「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で9位に入る快挙。次代の最強ボクサーと目され、世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥に次ぐ日本人2人目の1位君臨を近い将来の目標に掲げている。

 井上戦の実現を描いているが、相手は1つ重いスーパーバンタム級。再来年頃にはさらに上のフェザー級に上げることが予想されるため、中谷は体づくりなどスーパーバンタム級に適応する時間が多いとは言えない状況だ。「無理はしない」と慎重な姿勢を貫きつつ、「流れで自分がいけると思えばいきます」と口にした。

「(自分は)身長があるので、体重は意識すれば勝手に増える。その辺りは問題ないかなというところと、多少の筋力的な肉付けは必要なものをイメージしています。やっぱり筋肉をつけるのもすぐにはできない。多少の時間は要するとは思いますが、人間できると思えばできちゃうので対応していきたいですね」

 ただ、井上は今月4日に報道陣に対し「皆さんは中谷潤人がバンタム級で1位だとしているかもしれませんが、井上拓真は結構くせ者ですよ?」と弟のWBA世界バンタム級王者・拓真を引き合いに出した。コメントを記事で知った中谷は、言われるまでもなく拓真との統一戦をクリアする構えだ。

「まずは統一戦をやりたい。拓真選手を軽視しているわけでもないですし、リスペクトしている選手の一人。だから戦いたい気持ちがあります。同じバンタム級なので、そこでしっかり実力を示したい」

 まずは2度目の防衛戦でのベルト死守へ、日本時間26日に帰国。米国で磨いた技術と精神力を携え、日本で暴れ回る。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)