「これですべて解決」という唯一の正解がないのが介護というもの。だからこそ不安になるのだけれど、少しでもラクになる介護とのつき合い方を探していきましょう。ここでは、親の異変を感じたときに、健康状態や心身の機能の衰えをチェックするためのリストや、認知症の疑いがあるときに冷静に行動するための心がけをご紹介。介護ライター・老年学研究者の島影真奈美さんに教えてもらいました。

親の異変を感じたときの「基本チェックリスト」

「もしかして認知症?」と思ったら、まずは下記をチェック。このリストは、高齢者が自分の生活や健康状態を振り返り、心身の機能で衰えがないかをチェックするためのもの。状態悪化を防ぐために介護の現場で活用されています。

□ 口の渇きが気になりますか
□ 週に1回以上は外出していますか
□ 昨年と比べて外出の回数が減っていますか
□ 周りの人から「いつも同じことを聞く」などのもの忘れがあると言われますか
□ 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか
□ 今日が何月何日かわからないときがありますか
□ (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない
□ (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
□ (ここ2週間)以前はラクにできていたことが今はおっくうに感じられる
□ (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない
□ (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
□ バスや電車で、1人で外出していますか
□ 日用品の買い物をしていますか
□ 預貯金の出し入れをしていますか
□ 友人の家を訪ねていますか
□ 家族や友人の相談にのっていますか
□ 階段を手すりや壁をつたわらずに上っていますか
□ 椅子に座った状態からなにもつかまらずに立ち上がっていますか
□ 15分くらい続けて歩いていますか
□ この1年間に転んだことがありますか
□ 転倒に対する不安は大きいですか
□ 6か月間で2kgから3kg以上の体重減少がありましたか
□ BMIが18.5未満ですか(※)
□ 半年前に比べてかたいものが食べにくくなりましたか
□ お茶や汁ものなどでむせることがありますか

※ BMI =体重(kg) ÷身長(m) ÷身長(m)
厚生労働省「介護予防マニュアル 第4版」をもとに作成

見逃さない!でも、焦らない。「認知症のサイン」の受け止め方

介護ライターの島影真奈美さんは「認知症の症状の出方は人それぞれ。リストもあくまで目安なので、複数当てはまっても決めつけは禁物」と指摘しつつ、「親の異変を目にして動揺するのは当然です。ただ、親を責めるのは意味がないし、こちらも多少クールダウンしてから動き出したい」と言います。

「まず状況を整理してみましょう。可能な範囲で親と自分を観察して、なにが起きているのか書き出す。『だれの、なにに対する不安なのか』が見えてくると、家族の話し合いや周囲への相談もしやすくなります」(島影さん、以下同)

同時に地域包括支援センターを含め、職場や行政など複数の相談先を探し、評判のいいクリニックなどをリサーチ。情報収集は、気持ちを落ちつける効果もあるそう。

「どうにも整理がつかないときは、『話しやすい人に話せる範囲で話してみる』のも手です。ひとりでぐるぐると思いつめないことが重要です」

「実家と親の悩み まるごと解決!BOOK」(扶桑社刊)では、介護のほかにも実家の片づけや親のお金・健康・防犯など、親について最近心配なことが増えた方々の「疑問や不安」を網羅的に扱い、各ジャンルのプロに聞いた対策法を紹介しています。にしおかすみこさん、松本明子さんのインタビューも必読です。