欧州サッカー今季活躍期待の日本人選手 前編

実に多くの日本人選手がプレーするようになった欧州サッカー各国リーグで、新シーズンは誰に注目して見るのが面白いか。識者におススメの選手を挙げてもらった。

後編「将来の可能性を感じさせる選手たち」>>


スポルティングの守田英正(左)とクリスタル・パレスの鎌田大地(右) photo by Getty Images

【日本代表への還元を考え、期待の3人】

西部謙司(サッカーライター)

<期待の選手>
守田英正(スポルティング/MF)
藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン/MF)
鈴木彩艶(パルマ/GK)

 ポルトガルの昨季チャンピオンチームの中心として活躍している守田英正は、日本代表への影響を考えても注目される。森保一監督が導入した3−4−2−1システムはスポルティングと共通していて、その中枢になっている守田には経験から蓄積されたものがあるからだ。逆に日本代表で得たものも、スポルティングに還元できるかもしれない。

 日本代表のコーチングスタッフに加わった長谷部誠コーチはフランフルトで3バックの経験があり、その知見も活かされるだろうが、このシステム下でコンスタントに結果を出している選手は守田だけだ。

 シント・トロイデンでレギュラーのボランチを務める藤田譲瑠チマは、遠藤航の後釜として期待したい。パリ五輪でも攻守にハイレベルのプレーを見せていた。遠藤は日本代表のキャプテンで中心的存在だが、新監督となったリバプールでレギュラーポジションを失っている。まだ開幕間もなく、挽回の機会はいずれ巡ってくるかもしれないが、試合に出ていない選手はコンディションの維持が難しい。日本代表において遠藤が替えの効かない存在であるほどバックアップの必要性も増す。

 また、ワールドカップで勝ち上がるにはGKの活躍が不可欠だと思う。パルマに移籍した鈴木彩艶は、開幕から3試合連続で先発起用されている。第3節のナポリ戦で退場処分となっているので4戦連続出場はできないが、第1GKとしてコンスタントにプレーして結果を残せば日本代表に還元できるものも大きいのではないか。素質は文句なしだが、まだ経験不足は否めず、勝負強さの点ではシント・トロイデンへ移籍した小久保玲央ブライアンのほうが上かもしれない。

 ふたりとも若く、欧州で経験を積むことでさらなるスケールアップが期待できる。リーグは違うが、切磋琢磨できる状況はこれまでにはなかった。鈴木の体格とパワーは欧州でもトップクラスのGKになれる資質を持っているので、セリエAで揉まれて飛躍してほしい。

【新加入の選手たちがどのくらい活躍するかに注目】

篠 幸彦(スポーツライター)

<期待の選手>
菅原由勢(サウサンプトン)
鎌田大地(クリスタル・パレス)
浅野拓磨(マジョルカ)

 近年、プレミアリーグに移籍を果たす日本人選手が増えるなか、今季はサウサンプトンに菅原由勢、クリスタル・パレスに鎌田大地が加入。昇格組のサウサンプトンはビルドアップからショートパスを丁寧につなぐポゼッションスタイルにこだわり、ここまで3試合ともボール支配率60%以上を記録。非常にチャレンジングなサッカーを展開している。

 そんななか、菅原は右ウイングバックで開幕から3試合連続で先発。タッチライン際で幅を取りながら右サイドの崩しの一端を担い、CKのキッカーも務めている。チームのスタイル的に、攻撃で個の能力に任せるよりもコンビネーションや裏に抜ける動きなど、菅原持ち前のポジショニングセンスを生かしやすい。

 開幕のニューカッスル戦ではハーフタイムでの交代を経験したが、第3節のブレントフォード戦では初のフル出場。チームのシーズン初ゴールを菅原が記録するなど、存在感を示している。開幕3連敗のサウサンプトンだが、この攻撃的なサッカーで菅原がどんなプレーを見せるのか注目したい。

 フランクフルト時代の恩師オリバー・グラスナー監督の希望で、クリスタル・パレスへ加入した鎌田。プレシーズンからシャドーのポジションで出場し、すでに主力のひとりとなっている。身体能力に秀でた選手が多いなかで、ゆったりと巧みにボールを引き出し、ライン間でボールを受けられる鎌田の存在は異彩を放っている。

 第2節ではベンチスタートとなり、途中出場からボランチでプレーしたものの、プレミアリーグのスピード感のなかでは厳しかった。チェルシー戦で再び先発し、自身で決定機のシュートを放つなど、徐々に存在感を見せている。

 カラバオカップのノリッジ戦では1ゴール1アシストを記録した。リーグ戦でも結果を残し、チームやサポーターからの信頼を確立したいところ。クリスタル・パレスのタレント陣を鎌田がどのように生かすのか楽しみだ。

 新加入組ではラ・リーガのマジョルカに移籍した浅野拓磨も面白い。マジョルカといえば、堅守速攻のイメージが強いが、今季からオサスナを長年率いたハゴバ・アラサテが新監督に就任し、ポゼッションスタイルに変貌を遂げている。

 浅野は長身のベダト・ムリキを頂点にシャドーやトップ下のような位置に入り、スピードを生かして2列目からの飛び出しで違いを生み出している。これまでのチームとはまったく違うスタイルのなかでの浅野の活躍に注目している。

後編「将来の可能性を感じさせる選手たち」へつづく>>