東大生が出題!「思考力」をぐんと高めるクイズ
(画像:東大カルペ・ディエム提供)
最近の学校のテストや入試問題では、問いを立てて身の回りのことに疑問を持つ、「探求型思考力」が問われる傾向にあります。『アカデミックマインド育成講座』を監修した東大カルペ・ディエムの西岡壱誠氏が、問題が解けずに悩んでいる子どもに対して、有効なアドバイスを紹介します。
麻布中学や東大で出題された問題
昨今の中学入試・高校入試・大学入試は、昔と大きく変わってきています。
社会の問題を例に紹介すると、昔は、「大豆の生産量世界一の国はどこか答えなさい」「ペリーが来航したのは何年か答えなさい」といったように、データや歴史的事実を覚えれば解けるような問題が多く出題されていました。
しかし昨今では「大豆の生産量世界一の国はブラジルですが、それは一体どうしてなのか、ブラジルの国土に触れて答えなさい」といったように、「なぜそうなっているのか」という背景事情を問う問題が増えています。
もっと具体的な例を挙げましょう。麻布中学校では「大型スーパーやコンビニのプライベート商品として、袋入りの便利なカット野菜が増えてきたのはなぜですか」という問題が2021年度に出題されました。
また、2022年度の東京大学の入試では「ブルーベリーの収穫量第1位は東京都である。東京都でブルーベリーの栽培が盛んな理由を1行で説明せよ」という問題も出題されました。
これらも「データそのもの」ではなく、「なぜそういうデータが出ているのか」を問う問題であり、データだけを覚えても答えを導き出すことはできません。
「覚えれば解ける」入試問題から、「覚えていても、考えなければ解けない」入試問題へと変化してきているのです。
われわれは全国の中学・高校で、「アカデミックマインド育成講座」を実施しています。最近の入試で出題されている「思考力を問う問題」や、われわれが作ったその類題を子どもたちに解いてもらい、思考力をアップさせる授業を行っているのです。
今回は、その授業で出題している問題をご紹介しながら、思考力の身に付け方についてお話ししたいと思います。
中国が大豆の輸入量世界一なのはなぜ?
まずは、こちらの問題をご覧ください。
「2022年のデータを見ると、大豆の輸入量世界一は中国になっており、これは輸入量全体の59.4%となっている。なぜ中国が輸入量世界一なのか、答えなさい」
なんと世界で貿易されている大豆の約6割を、中国が消費しているのです。これはなぜか考えなさい、という問題ですね。
他のデータも見てみると、中国は世界で4番目に大豆の生産量が多い国でありながら、ブラジルやアルゼンチンから莫大な量の大豆を輸入しています。
「うーん、中国人が大豆を好んで食べるのかな。でも、中華料理に大豆を使った料理ってどんなのがあったかな」
と考えてしまうと、この問題は答えられません。思考力を問う問題が解けるようになるためには、そもそも、「事実」と「解釈」をしっかりと分けて考える必要があります。
例えばみなさんは、ここまで読んで、この問題は「中国人はなぜ、大豆を世界一食べるのか」という問いだと勘違いしていませんか?
実はそれは間違いです。ここまで出てきた「大豆の輸入量世界一」「世界で4番目に大豆の生産量が多い」という情報は、あくまで「輸入量」「生産量」について触れているだけです。「食べている」とは一言も書いていません。思考力を使った問題では、こうした微妙なニュアンスの違いをしっかり意識する必要があります。
【2024年10月24日16時追記】初出時、一部表記に誤りがありましたので、上記のように修正しました。
この問題で問われているのは、「中国人はなぜ、大豆を多く消費するのか」ということです。では、「消費」とはなんでしょうか? この問題を解くためには、「消費」という言葉の定義がカギになります。
「消費」という言葉には、いろんな解釈が考えられます。もちろん人間が食べるのも「消費」ですが、何か工業に使うのも「消費」ですし、人間以外の動物が食べるのも「消費」です。「人間が食べる以外の方法で、消費しているとしたら、どんな方法だろうか」と考えていくと、答えが見えてきます。
豚を育てるための飼料として使用
正解は、主に「飼料用として、家畜に食べさせている」からです。中国では、豚肉が好んで食べられています。中華料理でも、大豆はぱっと思いつきませんが、豚肉を使った料理は多いですよね。
そして、その豚を育てるための餌「飼料」として、大豆の需要が増えているのです。国内の生産だけでは足りない分を輸入して、豚に消費させているというわけですね。
「思考力を問う問題は、訓練をしても解けるようにならない」と考えている人も多いかもしれません。
実際、「思考力を身に付ける」と言われると、どんなふうに身に付ければいいのか分からなくなってしまいますよね。
でも「事実と解釈を分けて考える」「言葉の定義をしっかりと考えて問題に取り組む」などの、「技術」を身に付けると、思考力を一段と高めることができます。
(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)