君がいるだけでがんばれる 患者の治療やリハビリに寄り添うファシリティドッグ 各地のこども病院で活躍してるよ
盲導犬、災害救助犬、警察犬、探知犬、介助犬、セラピー犬……社会活動を行う「働くワンコ」は数多くいますが、近年、医療従事者の間で注目を浴びつつあるのが「ホスピタル・ファシリティドッグ」(以下、ファシリティドッグ)という存在。
医療現場で活躍するワンコのことで、元々はアメリカで普及。患者の治療やリハビリに寄り添いサポートしながら、癒しも与える存在として支持されるようになり、近年日本でも導入が始まりました。
しかし、まだまだ馴染みが薄いのも正直なところ。ファシリティドッグは医療現場でどんな活躍をするのでしょうか。日本での普及と育成を推進する、特定非営利活動法人・シャイン・オン・キッズ(以下、シャイン・オン!キッズ)担当者の解説と合わせて紹介します。
患者の精神的負担を支えるのが主な役目
言うに及ばず、医療現場で患者が取り組むべき治療やリハビリは総じて楽ではありません。苦痛を伴うもの、ストレスを伴うものなど様々ですが、そういった場面で活躍するのがファシリティドッグだと担当者は言います。
「ファシリティドッグが医療現場で行う活動は多岐にわたります。小児がんの場合、骨髄穿刺という強い痛みを伴う検査を受けることがありますが、そのような処置の現場にも寄り添います。
また、歩行のリハビリを行うとき、医療従事者が患者さんに対し、ただ『歩いてください』と促しても気持ちが前向きにならない場合にも、ファシリティドッグが寄り添うことで、リハビリが楽しくなるよう支援することもあります。こういったサポートの他にも採血、点滴、注射の付き添い、手術室までの移動の付き添いなども行い、あらゆる治療に伴う患者さんの精神的な負担の軽減を目指し、ファシリティドッグが支援をしています」(担当者)
特に小児医療の現場ではファシリティドッグの存在が注目されています。現時点でシャイン・オン!キッズからファシリティドッグは、オーストラリアから輸入したワンコを国際基準に沿って育成し各病院に提供していると言います。
「候補犬のトレーニングは、補助犬育成団体の世界的な統括組織 Assistance Dogs Internationalの基準に沿って進めます。
生後8〜12週の子犬のころから約1歳半〜2歳にかけて、犬の個性や学習スタイルに応じて『社会化トレーニング』を行います。
そして1歳以降は、病院内での実践的なトレーニングを行います。初めは院内環境に馴れることを目標に医療機器などに触れていきます。そして、トレーニングが進むにつれ処置や検査の付き添いや、ベッド上での添い寝の練習などを行い、一定基準を満たした上で卒業となります」(担当者)
「ハンドラー」とともに一つの病院に常勤
実際に医療現場に導入された後は、「ハンドラー」と呼ばれる人とファシリティドッグがペアとなり活動します。
現在、シャイン・オン!キッズでは、臨床経験のある看護師がハンドラーとなり、医療スタッフの一員として病院に常勤しています。同じハンドラーと同じファシリティドッグが繰り返し訪問することで、患者さんやその家族とのより深い信頼関係構築が期待できるからです。
また、個々の患者さんによって医療現場ごとにファシリティドッグに求めるサポートはまちまち。こういった面でも「臨床経験のあるその病院で働く看護師」であれば、カルテから情報を把握でき、そのときどきで患者さんの医療現場ごとに異なるニーズに対応しやすく、また院内感染対策などにも徹底できる利点があるからです。
「処置室で怖くて自分の足で歩いて入れなくなってしまった子どもでも、ファシリティドッグが一緒だと自分で歩いて入れるようになる子もいます。子どもたちにとって『やろう!』と決意できることは重要です。そしてこれらを促すことは、医師や看護師、作業療法士など現場のスタッフとの連携が必須で、この点もハンドラーを看護師に設定している理由の一つです」(担当者)
「ファシリティドッグ」が当たり前のように活躍できる社会を目指す
担当者はファシリティドッグの未来について、「ファシリティドッグが医療の基本ケアとして認められること、日本中の病院にファシリティドッグが当たり前のように活躍できる社会の実現を目指す」と言います。
ここまでの話を聞きファシリティドッグ導入で得られるメリットを考えると、子ども病院だけでなく、ゆくゆくは全世代の多くの病院に採用される日が来ると良いなとも思いました。
苦しい思いを強いられる患者さんに寄り添い、支援をするファシリティドッグ。まずは、その存在がより一層の注目を浴び、医療現場のニーズや意見と合わせて、さらなる可能性を見出していけると良いですね。
(まいどなニュース特約・松田 義人)