呼吸に意識を集中させるマインドフルネス呼吸を20分間続けることで、がんの痛みの強さや不快感を急速に軽減し、それに伴う不安を和らげることができるという研究結果が発表されました。

Mindful breathing for cancer pain: efficacy of a single 20-minute session - a randomised controlled study | BMJ Supportive & Palliative Care

https://spcare.bmj.com/content/early/2024/07/22/spcare-2023-004762

Study finds 20 minutes of mindful breathing can rapidly reduce intensity of cancer pain

https://medicalxpress.com/news/2024-08-minutes-mindful-rapidly-intensity-cancer.html

がんによる痛みは、腫瘍が周辺組織を圧迫あるいは浸潤する場合や治療の副作用などにより発生し、世界中のがん患者のうち30〜40%が中程度から重度の痛みを経験していると推定されています。

マレーシア・サラワク大学のセン・ベン・タン氏らは、「モルヒネなどの薬を使って痛みを和らげる戦略が進化していますが、薬剤を使った副作用と依存症のリスクも懸念されています」と述べ、薬に頼らない認知行動療法やマインドフルネスに基づく治療プログラムへのアプローチも存在すると説明しています。そこで、タン氏らは呼吸をコントロールすることによって痛みを軽減するアプローチを行いました。



タン氏らはマレーシアの大学医療センターで治療を受けている患者を研究対象に選び、中程度から重度の痛みを訴える患者40人を2つのグループに振り分けました。一方のグループは、マインドフルネスの訓練を受けた医師の指導の下、速さ、リズム、ポーズなどに重点を置いた呼吸セッションを実施し、5分間のセッションを4回連続で行い、意識的に呼吸を整えるように促しました。もう一方のグループには特別な治療は行わず、研究助手が聞き取り調査を行いました。

呼吸法を実施したグループは、医師から「そっと目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をしてください。鼻を通る空気の流れに注目してください。吸って、吐いて……」といった言葉や、「全身を一気にリラックスさせます。息を吸うと、息を吸っているときに体が落ち着きます。息を吐くと、笑顔になります」などの言葉をかけられ、リラックスした状態でセッションが続けられたといいます。

セッションの後、患者に痛みの強さと不快感を自己申告してもらった結果、呼吸法を実施した患者は、呼吸法を行わなかったグループの患者と比較して、痛みの強さと不快感が有意に減少したことが示されたとのこと。



この結果から、タン氏らは「今回の知見から、短期間の介入でがん患者の痛みの強さや不快感を軽減し、不安を和らげる可能性があることが示唆されました。これらの知見をまとめるにはさらなる研究が必要ですが、本研究は、がん治療における痛みのコントロールに役立つ、実現可能で利用しやすいアプローチに関する貴重な知見となり得ます」と述べました。

タン氏らは、本研究の規模が比較的小さく、1つの医療センターのみで実施されたなどの制限があったと認めています。その上で、「すべての患者に効果が現れ、有害事象がなかったことは、20分間の呼吸による痛みの軽減が実現可能であり、安全であることを裏付けています。この呼吸法はすぐに習得でき、有益な効果をもたらします」と語りました。