夏休み明け、子どもが「憂鬱」にならないためには? “今からできる対策”を臨床心理士に聞く
多くの小中学校、高校では、夏休みが間もなく終わります。夏休み中に家族と旅行を楽しんだり、部活動に励んだりした子どもは多いと思います。
ところで、子どもが夏休み明けに憂鬱(ゆううつ)になり、「学校に行きたくない」と言い出すことがあります。子どもが夏休み明けに憂鬱になるのをできるだけ防ぐために、保護者は夏休み中にどのような取り組みを行う必要があるのでしょうか。今からできる対策について、大阪カウンセリングセンターBellflower代表で、臨床心理士・公認心理師の町田奈穂さんに聞きました。
生活リズムの乱れが憂鬱の原因に
Q.夏休み明けに子どもが憂鬱になり、「学校に行きたくない」と言い出すことがあるようですが、なぜなのでしょうか。
町田さん「夏休み明けに子どもが憂鬱になりやすい原因として、生活リズムの乱れが考えられます。人は決められたことをこなしていくことを得意としています。その反面、いつもと違うことをすると、気だるさや憂鬱さが生じます。そのため、夏休みの生活リズムと違うリズムで、違うことをしなくてはいけない休み明けは『学校に行きたくない』と思うようになり、憂鬱になりやすいのです」
Q.では、休み明けに子どもが憂鬱にならないようにするために、残りの夏休みをどのように過ごさせたらよいのでしょうか。保護者が配慮すべき点について、教えてください。
町田さん「休み明けに子どもが憂鬱にならないようにするには、夏休み中も同じ生活リズムが送れるようにすることが大切です。
最も大切なのは、いつもと同じ時間に寝て、同じ時間に起きることです。翌日が休みだと、『朝は遅くまで寝られるから夜更かししよう』と考えがちです。しかし、就寝時間と起床時間を後ろにずらすことは、時差ボケ状態を引き起こします。いつも通りの生活リズムが送れるように、子どもに声掛けをしたり、1日の予定を組み立てたりするなど、工夫しましょう。
また、日常的に睡眠不足の傾向にある場合は、残りの夏休みを機に8時間以上の睡眠時間を確保することもお勧めです。多くの子どもたちは睡眠不足の傾向にありますが、睡眠不足は憂鬱な気分を引き起こしやすいため、注意が必要です。朝と夜に余裕のある夏休みこそ、日頃の睡眠不足を取り返す良い機会になるでしょう。
日々の睡眠不足は『睡眠負債』という形で蓄積され続けます。一時的に睡眠時間を増やしたところで睡眠負債がすぐに返済できるわけではないため、夏休み後も継続的に睡眠時間を確保し続けることが理想です。睡眠負債が多ければ多いほど、負債を返済するのに必要な期間は増えます」
Q.すでに子どもが夏休み中にダラダラと過ごしてしまっている場合、生活リズムを立て直すにはどのような対策が有効なのでしょうか。
町田さん「子どもと一緒に、朝・昼・夜に必ず行うことを一緒に考え、習慣化させることが有効です。例えば、起床後は『トイレ→顔を洗う→歯磨き→朝食→ラジオ体操をして1日をスタート』、就寝前は『お風呂→歯磨き→明日の準備→ストレッチをして寝る』といった形です。このように、朝・昼・夜に必ず行うことを習慣化させることで、リズムが刻みやすく、リズムの乱れを防止します。
他には、睡眠時間を増やすことも考えられます。夏休み中の生活リズムの乱れの多くは睡眠不足からくることが多いです。まずは『1日16分』から睡眠時間を増やしてあげましょう」
Q.もし夏休み明けに子どもが憂鬱になった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
町田さん「夏休み前は元気に学校に行っていたのに、夏休み明けに子どもが『学校に行きたくない』と言い出した場合は、生活リズムの乱れによって、やる気の出し方を忘れたことが原因と考えられます。『月曜日の憂鬱』という言葉があるように、私たち大人も休み明けには憂鬱になります。そこで、まずは『休み明けって、学校に行きたくなくなるよね』と子どもの気持ちに共感を示すことが大切です。
そして、可能であれば、登校班の集合場所や学校の近くまで一緒に行ってあげましょう。憂鬱な気分のときも、子どもは誰かと一緒であれば一歩を踏み出しやすくなります」