10年以上前に作った預金通帳が見つかりました。「休眠預金」として預金保険機構に移管されると、預金の引き出しできなくなるのですか?
休眠預金とは
休眠預金とは、入出金等最後の「取引」から10年以上取引がない預金等をいいます。2009年1月1日以降に最後の取引から10年以上たった預金等が原則として対象になります。
休眠預金は各金融機関から預金保険機構に移管され、民間の団体が行う子ども若者支援、生活困難者支援、地域活性化等支援の活動の支援に活用されます。助成額のこれまでの総額は、通常枠と緊急枠を合わせて、約290億円です(2024年3月19日時点)。
最後の「取引」から9年が経過した預金があると、その金融機関のウェブサイトで公告が実施されます。
2009年1月1日以降の最後の取引から10年以上たっている預貯金について、預金残高が1万円以上の場合は、金融機関から登録されている住所に通知が届きます。通知が届けば、その預金は休眠預金にはなりません。登録されている住所から引っ越して転居先不明で通知が届かなかった場合は休眠預金になります。
この通知は郵送ではなく電子メールで届くケースもあります。電子メールの場合、その内容が受信できれば休眠預金にはなりません。
預金残高が1万円未満の場合は、通知は送られず、休眠預金になります。
入出金などは、全金融機関共通で「取引」になります。他方で、例えば通帳への記帳や残高照会が「取引」と見なされない金融機関もあります。金融機関ごとに「取引」の定義は異なっていますので、詳細は取引のある金融機関にお問い合わせください。
休眠預金の対象となる「預金等」とは
休眠預金は預金保険機構に移管されるので、休眠預金等になる可能性がある「預金等」とは、預金保険制度の対象となる預貯金などです。具体的には、普通預金のみならず、定期預金、貯金、定期積金なども対象です。
一方で、預金保険制度の対象とならない、外貨預金や財形住宅や財形年金など特定の目的のための預貯金、仕組み預金などは対象外ですので、いつでも、預けた金融機関で引き出しが可能です。
休眠預金は引き出せる?
休眠預金になっても、引き続き取引のあった金融機関で元本と利息を引き出すことが可能です。引き出しに期限はありません。
2022年度の休眠預金発生額(移管額)は1528億円、預金者への支払額は350億円となっています。
取引のあった金融機関に、通帳やキャッシュカード、本人確認書類などを持参すれば引き出すことができます。通帳などを紛失しているケースでも、本人確認書類(身分証明書)などを持参すれば、引き出すことができます。
残高照会(ATMでは不可)や引き出しの必要となる手続きについては、窓口に行く前に取引のあった金融機関に電話等でお問い合わせください。
なお、休眠預金等を引き出す際、現金での受け取りになるのか、元の口座を引き続き使えるのか、については、金融機関ごとに対応が異なりますので、まずは取引のあった金融機関に確認してみましょう。
ゆうちょの休眠貯金の注意点
郵政民営化前前に預け入れた一部の郵便貯金については、銀行の休眠預金とは取り扱いが異なります。
平成19年9月30日以前(郵政民営化前)に預け入れた定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金等の定期性の郵便貯金は、預入期間満了日の翌日から 20 年2カ月間払い戻し等の取り扱いがない場合、払い戻し請求権が消滅しますので注意してください。
郵政民営化前に預け入れた通常郵便貯金、通常貯蓄貯金は、郵政民営化の際にゆうちょ銀行に承継されていますので、旧郵便貯金法の適用はなく、同法による権利消滅の対象とはなりません。
郵政民営化以後に預け入れた貯金も権利消滅の対象外です。取り扱いは他の金融機関の休眠預金と同じです。
まとめ
休眠預金等活用法に基づき、2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引のない預金等(休眠預金等)は、民間公益活動に活用されることになっています。
ただし、休眠預金等となったとしても、引き続き取引のあった金融機関で引き出すことが可能です。休眠預金等の有無、引き出し手続きなどの詳細は、金融機関に確認が必要です。また、キャッシュカードや通帳がどこにあるのか、金融機関に届けている内容(住所、メールアドレスなど)に変更がないか、今一度確認しておくとよいでしょう。
出典
金融庁 長い間、お取引のない預金等はありませんか?
預金保険機構 長い間お取引のない預金(休眠預金)
内閣府 休眠預金等活用制度について
一般社団法人銀行協会 休眠預金ってご存知ですか?
ゆうちょ銀行 長期間ご利用のない貯金のお取り扱いについて
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。