食楽web

●日本最古の喫茶店として知られる神戸の『放香堂珈琲』。神戸旅行で一度は訪れてほしいその喫茶店の魅力を伝えます。

 オシャレでハイカラな印象のある港町神戸に『放香堂珈琲』という1軒の喫茶店があります。実はそのお店、日本で一番古いと言われている喫茶店なんです。

 歴史の教科書などにも登場し、日本の喫茶店やそもそものコーヒー文化を語る上で欠かせないお店、コーヒー好きとしてはぜひ訪れたいお店の一つとなっています。

本来は京都で宇治茶を扱っていた『放香堂』

写真左が喫茶店の『放香堂珈琲』、右側が日本茶専門店『放香堂』

 お店は、三宮の一つ隣の元町駅を降りて数分、中華街と並行して伸びる商店街を西へ歩いて行った先にあります。

 いわゆるコーヒーの飲める喫茶店と思って来たのですが、お店の半分は日本茶葉を売っている日本茶専門店『放香堂』となっています。

お茶屋さんの中は歴史を感じる店内

『放香堂』という名前のお店が2つ存在しているのですが、宇治茶を主とする日本茶専門店『放香堂』は日本のコーヒー史に深く関係しています。

 そもそも京都で宇治茶を取り扱っていたお店で、明治維新の前年で神戸開港となる慶応3(1867)年に神戸に進出、海外へ日本茶の輸出を行っていました。

 外国と交易する中でインドからの輸入品として買い付けていたのがコーヒーで、明治11(1878)年にコーヒーの魅力を伝えるために店頭で珈琲が飲めるお店を開始。日本初の珈琲が飲める喫茶店となったそうです。

放香堂珈琲のコーヒーは神戸ゆかりの麟太郎

「麟太郎」(ポットサイズ) 610円

 そんな歴史のある『放香堂珈琲』でコーヒーを飲んでみようとメニューを見てみると、コーヒーの名前は「麟太郎(りんたろう)」。神戸港の前身ともいえる神戸海軍操練所を開設した勝海舟の幼名、神戸の歴史を語る上でピッタリの名前となっています。

 ちなみにこちらの「麟太郎」。基本価格の500円に110円プラスすると、ムードある銅製のポットで提供してもらえます。

飲むと思わずホッコリするタイプのコーヒー

 麟太郎はインド産のアラビカ種の深煎りで酸味は少なめ。スッキリとマイルドで、ゆったり心落ち着く味わい。歴史を感じるのにピッタリの一杯という感じです。

 歴史的なお店ながら、想像していたコーヒーより遥かにリーズナブルなのにもビックリ。ポットにおよそ2杯分入ったコーヒーが飲めるので、近くに住んでいたら普段使いしたくなります。

 店内を見渡してみると、旅行者というより近隣の人の利用も多いように感じられ、歴史のある店であることと同時に地域の人に愛されているのが実感できます。

石臼でコーヒーを挽く放香堂珈琲の日常

石臼とコーヒー豆という珍しくも画になる組み合わせ

 こちらの喫茶店は日本のコーヒーの歴史とイコールといっても過言ではないので、コーヒーを輸入し始めた当初はコーヒーミルなども当然ありませんでした。そこで目を付けたのが、お茶の葉を抹茶に挽く際などに使われる、石臼。

 この石臼は今でも店頭に置いてあり、現役として使われています。ゴリゴリと音を立てて回る石臼でコーヒーを挽くのはかなり珍しく、せっかくなので体験させてもらいました。

 ずっしりとした重さの石臼を回す度にコーヒー豆の潰れるプチっとした独特の感触。ミルを使うのとは一味違うゴリゴリプチプチと楽しい感覚となっています。

 こちらの石臼、あまり効率的とはいえないので、お客さんの少ない時間を見計らっては、コーヒーを挽いているそうです。

実際に辞書に掲載されているようすのコピー [食楽web]

 日本最古の喫茶店として歴史の教科書や辞書にも登場する『放香堂珈琲』。今も石臼の回るお店は、旅行で神戸に行く場合や関西でカフェ巡りをする際に、ぜひ気軽に立ち寄ってみて下さい。

(撮影・文◎けいたろう)

●SHOP INFO
放香堂加琲

住:兵庫県神戸市中央区元町通3-10-6
TEL:078-321-5454
営:9:00~18:00(L.O. 17:30)
※11:00までモーニングサービスあり
休:不定休
https://www.hokodocoffee.com/

●著者プロフィール

けいたろう
旅するグルメライター。大阪と京都をむすぶ京阪電車の沿線在住で、複数の旅行情報サイトにて旅とグルメのガイド記事を執筆。気になるグルメ情報があるとB級グルメも高級店も穴場のお店も有名行列店でも、とにかく幅広く取材!食楽webでは関西グルメ情報を中心に紹介しています。