兵庫県の斎藤元彦知事

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 7月19日、兵庫県の斎藤元彦知事(46)のパワハラなどを告発した文書を調査する百条委員会(県議会の調査特別委員会)の第3回会合が開かれた。この日、告発文を書いた元県民局長が証人として出席する予定だったが、残念ながら亡くなってしまった。開会に先立ち、奥谷謙一委員長が弔意を表した。

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 奥谷委員長の弔意はおよそ5分に及び、最後にこうまとめた。

「願わくば、天上より私たちの処し方、行く末を見守っていただけますように、切にお願いし、贈る言葉に代えさせていただきます」

 全員が黙祷をして会合が始まった。元県民局長が記した陳述書が配布され、知事の発言とされるワインをおねだりする音声が議場に流された。そして、これから実施される県職員アンケートが当初の7000人から任用職員を加え9700人を対象にすること、アンケートの回答にあたって個人情報の保護が重要であることも確認された。

兵庫県の斎藤元彦知事

 今後のスケジュールについて意見交換がなされ、これで終わりかと思われたとき、ひょうご県民連合の竹内英明委員が挙手した。

竹内:県職員から寄せられたご意見を紹介したいと思います。「証人として招致された場合の手続きについて、県当局から県職員に通知がなされているその内容について、是非とも百条委員の皆さんにお知らせしたいことがある」ということで内部資料を頂戴しております。その資料を配付させていただきたい。

 資料は「百条委員会に関する各種服務について」という文書で、7月12日に県の各部総務課の副課長らを集めた会議で配布されたという。

【守秘義務免除の手続き】には「委員会から職務上の秘密または職上知り得た秘密が含まれる事項について出頭または出席の要請があった職員は守秘義務免除の申請手続きを行う」とあり、「(守秘義務免除の)対象となる内容は最小限のものとする」、さらに「各部総務課宛に申請し、これを各部総務課長が承認する」――。

県当局の調査妨害

竹内:事前に所属する総務課長の承認を取っておかねばならないなどありえない! 県民に告発文書や疑惑の真実を明らかにするために開催される当委員会の調査に、形を変えた人事当局からの調査妨害と言っても過言ではない。

 これに賛同したのが、同じくひょうご県民連合の上野英一委員だった。

上野:このところ職員局はおかしい。本来、職員を守るべきが、逆のことをやっている。元県民局長(※発言では本名=以下同)が嫌っていたプライバシーの部分、それも公益通報者保護法違反の調査をやった上で手にした情報を流布したり、それでもって脅しをかけたりしている。結果、追い込まれた元県民局長はああいう結果になったわけですから、本当に職員局は改めてもらわないと。私、4月初旬の代表者会議で人事局長が説明したときに、「あんたらそれは人事権の乱用、あるいは組織的パワハラやぞ」と申し上げたことがあるんですけども、全然その観点が抜けていると思うんで、改めて公益通報者保護法をしっかり頭に叩き込んでほしいと言っておきます。

 別の会派からもこの文書に関して「呆れ果てた」「アンケートの件数を減らそうとしているんでしょうか」などと声が上がった。

 確かに、アンケートが無記名だったとしても、証人に呼ばれたら上司に承認してもらわなければならないのなら、証人保護などできるわけもない。元県民局長のような報復人事を恐れて、アンケートに答える職員などいなくなるだろう。当局に説明を求めるなどの対処が必要とされ、この文書に対する話し合いは終わった。

 次に挙手したのは維新の会の岸口実副委員長だ。ちなみに、日本維新の会の推薦を受けて当選した斎藤知事は、大阪府以外で初めて誕生した維新系知事。それだけに今回も知事の擁護に回っていると言われている。

恨み節

岸口:7月8日、非公開である理事会の資料、会議内容が外部に漏洩しました。その議論の一部が切り取られ、週刊誌などで偏向報道されたことは誠に遺憾であります。当該の理事会では人事課の行った調査資料については7つの疑惑に直接関与するものに限定し、その他の資料は提出を求めないことが決定されたところであります。

 デイリー新潮は7月10日配信の「斎藤知事のパワハラを告発した兵庫県元幹部が死亡 百条委員会出席で紛糾していたプライバシー問題」で、維新の会の議員が元県民局長のプライバシーに関わる資料についても執拗に開示を求めていたことを報じた。併せて、兵庫県の情報公開条例には、個人として他人に知られたくない情報については非公開と定められていることも――。

岸口:もちろん我々には当該資料は一切提供されておらず、そもそもどの様な内容の資料なのか一切知り得ない立場にありました。従って内容を確認しなければ、疑惑に関するものなのか、プライバシーに関するものなのか、全くわからない状況にあったところであります。(中略)今後、調査が必要な資料が出てきた場合は、その都度、開示を求めて参りたいと思います。このことは真相解明に必要なものと考えております。

 今後、証人に立った職員に対しても、個人情報などの開示を求めるということだろうか。岸口副委員長の発言はまだ続く。

岸口:次に、SNS等で元県民局長が亡くなる直前に県議会議員と電話をしていたとする書き込みが多くあることを側聞しました。また、その県議が私であるとの書き込みも多くあったとのことでございます。私は過去に元県民局長と会合などでお会いしたことがありますが、個人的な接触は一切なく、携帯電話の番号も知りませんでしたし、お話しするような間柄ではございませんでした。全くの事実誤認であります。

 一体、何が言いたいのだろう。

「ここは百条委員会です」

岸口:そもそもこれらの情報こそが、特定された関係者にしか知り得ないプライバシーに関わる情報でございます。元県民局長が最後に県議と電話をした事実があったのかなかったのか、あったとすれば、そのような事実がなぜ明らかになったのか、そのことのほうが大いに問題であると私は考えております。万が一、当委員会の委員や県議が今回の一連の問題で元県民局長と接触していた事実があるのであれば、良識を持ってこの場で申告をしていただきたいと思います。

 なぜ申告しなければならないのか。どうやらネット上での書き込みに対する逆恨みのようなものらしい。

岸口:一連の報道があって以降、我が会派や我が会派の議員に誹謗中傷を内容とするメール等が多くあります。中には私になりすまし、複数のサイトに登録するなど看過できない状況にあります。心ない一部の人間によると思いますが、許しがたい行為であります。また最後に委員長に申し上げたいと思います。先日、元県民局長の死亡に関する報道に関し、奥谷委員長から私の名誉を傷つける発言がありました。私はその場で取り消しを求めましたが、「抗議でも何でもどうぞ」という発言がございましたので、この場を借りて抗議と取り消しを申し上げたいと思います。

 当の奥谷委員長がこれに応える。

奥谷:えー、整理します。何でしたっけ? 元県民局長と接触した方がいれば、この場で名乗り出ろということですか? 本委員会とは関係ないことと思いますので、それはちょっと置いておきます。

 自民党の藤田孝夫委員がたしなめる。

藤田:これは百条委員会ですから、文書問題をみんなで調査しよう、そしてあるべき方向性を見出そう、提言をしようという場です。個人的な誹謗中傷を受けたことを弁明する会ではありません。ですから、それがしたいのであれば、後日、維新の会として記者会見なさったらどうですか。ここでは控えていただきたい。

デイリー新潮編集部