トミー・ジョンから復帰の中日・石川翔。変わったのは身体だけではなかった
昨年3月に昨年3月に右肘内側側副靱帯再建術、通称「トミー・ジョン手術」を受けた中日・石川翔投手が、今年6月1日、ウエスタン・リーグのくふうハヤテ戦で実践復帰しました。7月13日放送のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』は、「松木平優太が支配下登録された今、石川翔は何を思う?」と題して若狭敬一が語りました。支配下登録が埋まったことについて質問された石川投手の答えは?
同い歳の投手3人
石川翔投手はプロ7年目の24歳。支配下登録で入りましたが現在は育成選手、背番号208番です。
2017年、ドラフト2位で栃木県の青藍泰斗高校からドラゴンズに入団。
ドラフト同期で同じ歳の投手は、4位で指名され。現在リリーフとして大活躍の清水達也投手。そして6位指名を受けた山本拓実投手は現在北海道日本ハムファイターズにいます。
石川翔投手の一軍での成績は、ルーキーイヤーの2018年、1試合1イニング、無失点、0勝0敗、防御率0.00、1ホールドです。
若狭「彼が一軍で残した成績はこれだけです。あれから7年経って、この3人、ずいぶん現在地が違う感じがします」
怪我が多い理由
石川投手は怪我の多い選手です。まずルーキーイヤーの春先に、いきなり両足踵の手術がありました。
翌2019年3月には右肘骨折。2021年8月には右肩を痛めました。
そして2021年オフに育成契約となり、昨年3月にトミー・ジョン手術を受けます。
長いリハビリを経て今年6月1日、ナゴヤ球場で行われたくふうハヤテ戦で実戦登板しました。
トミー・ジョン手術を受けてから復帰までの1年3ヶ月間に何があったのでしょうか?
この手術を受けると1年ほど投げられないとされますが、この間に石川投手はこれまでのプロ野球人生を振り返っていたそうです。
怪我が続いた理由はふたつ。身体は大きいけど硬い。フォームは反動が大きくぶれること。
そして「身体とフォームを作り直さなければいけない」との結論に達したそうです。
石川投手は、まず身体のリセットを実行。手術の時に91キロあった体重を79キロまで減量し、入団当時の体重に戻したそうです。
身体をリセットした石川投手は、大きいだけではなく柔らかい身体にするためにゼロから作り直していきました。
ダルビッシュのアドバイス
手術からの復活にはダルビッシュ有投手の力があったそうです。
石川投手が手術を受けたのが2023年3月。この時、WBCが開催されていました。
「同じ手術をした憧れの人にアドバイスを貰いたい」と思っていた石川投手は、侍ジャパンのメンバーに選ばれていた高橋宏斗投手に、ダルビッシュ投手からアドバイスを貰ってくれるように依頼。
高橋投手は二つ返事でダルビッシュ投手に繋ぐと、連日のように高橋投手のラインを通じて、ダルビッシュ投手のアドバイスが届いたそうです。
術後にはどんな食事、どんなサプリが効果的かなど詳細なものだったんだとか。
若狭「ダルビッシュ投手は石川投手とは面識がありません。同じプロのピッチャーであり同じ手術をした球界の後輩として、惜しげもなくアドバイスを送ったんですね」
フォーム改造
手術から4ヶ月経ち、リハビリも順調に進んでいた昨年7月、ようやくピッチングを再開します。
秋のキャンプで投げられるようにしようと思っていた10月のこと。
マウンドを意識して、傾斜を使ったキャッチボールをした瞬間、右肘痛が再発。そこから1ヶ月投げられない状態が続いたそうです。
なぜ右肘に痛みが走ったのでしょうか?身体は、柔らかくしなやかに強く大きく作り直したはず。しかし、反動が大きくぶれるフォームはそのまま。
石川投手は、落合英二コーチの門を叩くと、ぶれないフォーム作りを、基本から徹底的に叩き込んでもらったそうです。
ナゴヤ球場で復活
2024年6月1日、ナゴヤ球場。中日対くふうハヤテ戦6-0。6点リードの8回の表。3番手でマウンドに上がりました。
「不安でしたが、その不安な気持ちを自分で押し殺しました」と石川投手の言葉。
大きく強くしなやかで柔らかい身体で反動小さくぶれないフォームで投球。1イニング、パーフェクト無失点。2奪三振。この日のマックス、155キロ。
今までやって来た全てが良い結果となって現れました。
支配下4年を経て、育成3年目の 今シーズンは二軍で6試合に出場し1勝0敗、防御率1.59。
ファンの間では、支配下登録枠の最後の一枠は石川投手かも、という声もあったようです。
しかし、結果は松木平優太投手に決まりました。支配下登録枠が全て埋まったタイミングで、若狭は石川投手に取材したそうです。
「松木平優太が支配下登録されました。今、あなたは何を思いますか?」と質問すると、「『おめでとう。頑張れよ』です。悔しいとかは全くありません」と明るい答えが帰ってきたそうです。
心もぶれない
さらに石川投手は、「僕が監督や球団代表だったら、6年間怪我ばっかりしているピッチャーが、ちょっと二軍で投げたからって支配下にするわけがないですよ。絶対しません」との言葉。
キッパリとした言葉から自信も感じられ、「今年すべきことは、二軍で怪我なく完走して抑えること」と続けました。
さらに「去年の僕だったら『俺じゃなかったんだ』って動揺してたと思います。でも、そんな自分ともお別れしました」と続けたそうです。
若狭「石川翔は、身体だけではなく、心も強くしなやかに柔らかくなってました。石川翔はフォームだけではなく、心もぶれなくなっていました」
(尾関)