中性脂肪を減らす「よいあぶら」一発で見抜く方法
健康にとって「よいあぶら」と「悪いあぶら」の違いについて解説します(写真:Kimi/PIXTA)
健康診断を受けるたび、一喜一憂する人の多いのが、内臓脂肪や中性脂肪、コレステロールの値。ですが、実際にはそうした「あぶら」がどうして体に悪いのかは、意外と知らないもの。また、医師の五藤良将氏によれば、一見同じように思える「あぶら」にも「よいあぶら」と「悪いあぶら」の2種類があるそうです。
日々の食生活に欠かすことのできない「あぶら」と健康の関係、さらに「よいあぶら/悪いあぶら」の簡単な見分け方について、五藤氏が解説します。
※本稿は五藤氏の著書『内臓脂肪 中性脂肪 コレステロールがみるみる落ちる 血液と体の「あぶら」を落とすスープ』より、本文を一部引用・再編集してお届けします。
「冷めたときに固まるか」どうかが見分ける基準
「よいあぶらっていうと、アマニ油とか、エゴマ油は聞いたことがあるけど……」
「ごま油とか、オリーブオイルも体によいって聞いたことがあるよ」
「でも、ごま油は体に悪いとも聞いたことがある。結局どっちなの?」
「不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸。名前は聞いたことがあるけど結局何が違うの?」
こんな風に、なんとなく「よいあぶら」や「悪いあぶら」について聞いたことがあるものの、具体的に「よいあぶらとは?」「悪いあぶらって?」と聞かれると、なかなか答えられない方も多いのではないでしょうか。
よいあぶらと、悪いあぶらの見分け方は簡単です。冷めたときに固まるあぶらは、悪いあぶらが多い。冷めても固まらないあぶらは、よいあぶらが多いのです。
たとえばすき焼きをして、食べ終わってしばらくするとあぶらが固まりますよね。冷めると固まってしまうあぶら、これが悪いあぶら。一方でオリーブオイルは固まりません。これはよいあぶら。
別のものだと、魚と角煮でもいうことができます。魚も冷えると煮凝りはできますが、角煮みたいにあぶらは真っ白にならないですよね。このイメージさえできれば大成功です。さて、ここから「なぜそういえるの?」ということを解説していきます。
分子がぎっちり詰まっている「飽和脂肪酸」
冷めると固まる悪いあぶらといわれるのは、「飽和脂肪酸」というあぶらです。「知ってる! 聞いたことあるよ!」。そんな方がいらっしゃるかと思います。では、さらにクイズをしていきしょう。
Q:「飽和」とは何でしょうか?
Q:「脂肪酸」とは何でしょうか?
こう聞かれると、うーん? となりませんか? ここが、あぶらを理解するうえで根本的な部分です。
そもそも脂質って何? と聞かれたとき、私は「『3匹の鯉のぼり』をイメージしてみてください」と答えるようにしています。
鯉のぼりのポール部分が「グリセリン」。そして、鯉のぼり本体の部分が「脂肪酸」と呼ばれるもの。ポールと本体を合わせたものは「トリグリセリド」といいます。私たちが普段目にする、「あぶら」の正体は、この「トリグリセリド」というものが集まったものです。
(出所:『内臓脂肪 中性脂肪 コレステロールがみるみる落ちる 血液と体の「あぶら」を落とすスープ』より)
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じつは、この鯉のぼりの部分、脂肪酸の種類によって、牛肉の脂だったり、魚の油だったりに変わっていくのです。
ここで、もう少し脂肪酸について解説していきましょう。
脂肪酸は、炭素と水素が鎖のようにつながってできています。この鎖が、どれくらい長く、どのようにつながっているかで種類が変わっていきます。たくさんの種類があるのですが、大きく分けると、2種類に分けられます。それが「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」です。
これがどう違うかというと、ぎちぎちに詰まっている(飽和している)か否かです。鯉のぼりのイラストをもう一度よく見てみてください。
左側の鯉のぼりは水素と炭素という分子がすべてつながっている状態です。分子がぎっちり詰まっているので、鯉のぼりの体はカチコチになり、うまく体を動かすことができません。その一方で、右側の鯉のぼりを見てください。左の鯉のぼりより、詰まっていないですよね?
炭素同士で二重につながっている部分があります。これを「二重結合」といいます。二重結合があると水素が少なくなり、そのぶん隙間ができます。右側の鯉のぼりは、スペースに余裕があるため、元気に風になびいて動くことができるのです。
じつは、この鯉のぼりが、よいあぶらと悪いあぶらと同じ構造なのです。
飽和している飽和脂肪酸は二重結合がなく、飽和している状態です。そのため、分子として安定しており、常温でも固まります。一方、不飽和脂肪酸は、二重結合があることで、分子的に不安定になり、常温でも固まらないのです。
オリーブオイルなどが常温でも固まらないのは、不飽和脂肪酸が多く含まれているからです。逆に、牛肉などの動物性のあぶらは飽和脂肪酸が多いので、常温で固体になっている、というわけです。
先ほど、飽和脂肪酸が健康に悪いといいましたね。つまり、常温で溶けているあぶらはぜひとりたいあぶら。常温で固体のあぶらは注意しないといけないあぶらとなります。飽和脂肪酸が多いあぶらをとりすぎると、中性脂肪や悪玉コレステロールを増やしてしまうからです。
中性脂肪を下げる「不飽和脂肪酸」
一方、よいあぶらといわれるのは、「不飽和脂肪酸」というあぶらです。先ほどの「飽和脂肪酸」に「不」という文字がつきましたね。つまり、飽和していない脂肪酸、ということです。
ぎちぎちに詰まっていないので……そう、常温でも液体のままです。
このあぶらは体内で作ることができない必須脂肪酸といわれ、食事でとらなければいけないあぶらで、魚や植物などに多く含まれています。
この不飽和脂肪酸は、炭素同士で二重につながっている部分があるといいましたが、この二重につながっている部分の数によって、オメガ3・オメガ6・オメガ9へさらに細かく分類されます。
オメガ3脂肪酸は中性脂肪を低下させる成分として注目されていて、かつおやいわし、さばなどの魚やアマニ油、えごま油、くるみやアーモンドなどのナッツ類に多く含まれています。
魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)には、体脂肪を燃やす作用があるという驚きの報告もあります。
オメガ9脂肪酸は、HDL(善玉)コレステロールを増やしてLDL(悪玉)コレステロールを減らすという素晴らしい働きがあります。また、動脈硬化や高血圧の予防に効果がありますし、腸の働きを活性化し、便秘の改善にも効果があります。
オメガ9のあぶらの中でも、私のおすすめは、化学処理や熱を加えることなく製造されている、「エキストラバージンオリーブオイル」です。
ある研究では、1日スプーン3杯程度のエキストラバージンオリーブオイルを摂取することによって、心臓病や心血管疾患による死亡のリスクが30%も減少するという報告もあります。
「オメガ6」と「トランス脂肪酸」には要注意!
よいあぶらとされる不飽和脂肪酸ですが、2つだけ注意してほしいものがあります。サラダ油やごま油などに含まれるオメガ6脂肪酸と、トランス脂肪酸です。
オメガ6脂肪酸は、体内で炎症を促進する物質を作ることに関わるため、とりすぎると体に悪い影響を与える可能性があります。基本的に、普通に生活していれば、オメガ6脂肪酸は十分に摂取できてしまいます。むしろとりすぎになりかねないので、要注意ということなんですね。
また、液体のあぶらを人工的に固形化するときに作られるトランス脂肪酸は心臓病のリスクを高めるといわれ、世界保健機関(WHO)では、トランス脂肪酸の摂取を総カロリー摂取量の1%未満に抑えることを推奨しています。アメリカでは、2018年6月からトランス脂肪酸の食品への使用が原則禁止されているほどです。
ちょっとややこしくなったので、よいあぶら、悪いあぶらを整理します。
よいあぶら…オメガ9脂肪酸、オメガ3脂肪酸
悪いあぶら…飽和脂肪酸、オメガ6脂肪酸、トランス脂肪酸
具体的にそれぞれどのあぶらが当てはまるのか、まとめましたので参考にしてみてください。
ただし、よいあぶらを多く含む食品にも、飽和脂肪酸やオメガ6脂肪酸も少量ですが含まれています。よいあぶらだからといって、極端にとりすぎるのは避けてください。また、カロリーのとりすぎにもなってしまいます。
(出所:『内臓脂肪 中性脂肪 コレステロールがみるみる落ちる 血液と体の「あぶら」を落とすスープ』より)
(五藤 良将 : 医療法人社団五良会理事長、竹内内科小児科医院院長)