赤坂祐二会長(左)が鳥取新社長の経営にどこまで関与するかも注目だ(編集部撮影)

日本航空(JAL)の新社長に鳥取三津子氏が就任した。初の女性、初のCA(客室乗務員)出身など、初めてづくしのトップは今、メディアの注目を一身に浴びている。ただ記者会見の場などでは、鳥取氏を取り巻く経営陣の微妙な力関係も垣間見える。新体制の実態と課題は。Q&A形式で解説する。

※記事の内容は記者による解説動画「Q Five」からの抜粋です。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。

Q:鳥取社長への期待と実態の「ちぐはぐ」とは?

JALは鳥取社長の就任理由について、「お客様視点を持ちながら社員の力を最大限引き出し、新しい時代のリーダーとしてJALグループの企業価値を持続的に高めていくことができる人材」だから、と説明しています。

一方で、新社長発表後の3月に行われた中期経営計画の発表会では、経営陣の”微妙な力関係”が垣間見えました。

新中計を説明し、質疑応答を担当したのは、赤坂祐二・新会長と斎藤祐二・新副社長の2人が中心。鳥取新社長がマイクを握って発言したのは、冒頭の挨拶を除けば2回で、記者が鳥取社長を指名して行った質問への回答と、新社長の意気込みの発表のみでした。

これをJALのOBはどう見たか。「中計は経営企画が中心となって策定するので、細かい説明を斎藤氏が行うのは妥当。ただ概略は新社長の鳥取氏が説明するべきだった。鳥取氏は事業系に詳しくないのではないか?」といった声が聞かれました。

5月に行われた決算説明会の場にも、鳥取氏の姿はありませんでした。この点について斎藤氏は、「2022年も私が担当しているから」と回答しています。鳥取社長のメディア露出は今後ますます増えていくでしょうが、現時点での経営手腕は未知数といえるでしょう。

Q:前社長の赤坂新会長、その影響力をどう見る?

社長人事と同時に注目されているのが、赤坂会長の今後です。会社の関係者からは「依然として社内で強い影響力を持ち続けるのではないか」という指摘も相次いでいます。

なぜそう言われるのか。理由として一つ大きいのが、JALの取締役人事です。赤坂会長に近い人物が取締役に抜擢されました。6月に取締役常務に昇格した田村亮氏です。赤坂会長と同じ整備士出身で、子会社のJALエンジニアリングの社長も務めています。

JALエンジニアリングは不適切な整備などが原因で2023年の12月に国土交通省から業務改善勧告を受けています。にもかかわらず、大きな処分はなく、取締役へ昇格することとなりました。

JALの前会長・植木義晴氏は、社長6年、会長6年の計12年間トップに君臨しました。赤坂会長も、今回社長を6年務めた後に会長に就任しています。今後については未定ですが、赤坂氏も長期間にわたって会長職を務めることは容易に想像できます。

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(星出 遼平 : 東洋経済 記者)