影山拓也 撮影=山口謙吾

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中国の伝統芸能「昆劇」や太鼓芸能集団「鼓童」などとのコラボレーションをはじめ、数多くの作品の演出・プロデュースを手掛けてきた歌舞伎界至高の女方・坂東玉三郎。7月27日(土)からは新たな試みとして、演出を手掛ける最新作『星列車で行こう』が京都・南座にて幕を開ける。脚本は『ハゲタカ』シリーズなどヒット作を次々と生み出すベストセラー作家・真山仁が担当。ある列車を舞台に、苦悩を抱える若者たちが夢を見つけだしていく様を、リアリティを交え描きだしていく。そして、列車の旅を彩るのは、ジャンルの垣根なくセレクトされた往年の名曲たち。登場人物たちの心情を表現する楽曲の数々にも注目だ。出演はIMP.の影山拓也を中心に、松田悟志、松村龍之介、石井一孝ら。初の舞台単独主演となる影山拓也に、作品に向けての意気込みや心境を聞いた。

影山拓也

――まず、この作品の見どころを教えてください。

見どころは、自分の夢を見つけるべく星列車に乗りこんだ、悩みや葛藤を抱えた青年3人の結末がどうなるかですね。台本を読ませていただいて、結末までのストーリーが本当に考えさせられましたし、すごく勇気もいただいたので、最後まで注目して観てほしいです。

――例えばどういうことを考えられましたか?

ありのままの自分でいいんだなということです。こうしなきゃいけないと思ったり、人と比べたりすることが誰しも一度はあると思うんです。でも今回の話で言いますと、ありのままの自分でいることが葛藤や悩みを解決してくれて、自分の目標にたどり着ける一番の近道なのかなと感じました。

――影山さんも悩んだ時期はありましたか?

結構、考えすぎてしまう性格なので、常にいろいろと考えてしまいます……、でも寝たら忘れてしまうタイプでもあります(笑)。悩みと言うと大げさですけど、何か思うことがあったらメンバーや家族に自分の気が済むまで、とことん話します。あとはもう寝る! 寝たら忘れるので(笑)。

――寝たら忘れるのはいいですね。

でも、もしかしたら寝ている間に一番大事なことを忘れている可能性もあるので、そういった点ではもう少し考えていかないといけないとは思います(笑)。

影山拓也

――今回初の単独主演舞台ですが、現時点での心境は、緊張なのかワクワクなのか、どちらでしょうか?

今まで感じたことがない感情が出ています。もちろんワクワクもしてますけども、緊張しているのか……なんか想像がつかないですね。

――今まで感じたことがない感情とは?

「これは果たして現実なのか」と。坂東玉三郎さん演出の舞台に初単独主演で出演させていただけると聞いた時には本当にびっくりしましたし、とても嬉しかったですし、その気持ちがいまだに消えないです。緊張もしてますし、ワクワクもありますけども……。ええ!? どういう感情なんですかね!?

――初めてお話を聞いた時は、どんなインパクトがあったのですか?

「坂東玉三郎さん」というワードにびっくりしました。衝撃を受けすぎて、正直、その時の感情をこと細かく覚えてないですね。「僕が坂東玉三郎さん演出の『星列車で行こう』という舞台に出演する」ということしか記憶にないです。

――お名前を聞いた時にびっくりしたのは、なぜでしょう?

坂東玉三郎さんは人間国宝じゃないですか。言うまでもないですけど歌舞伎の世界でも活躍されている方ですし、自分もプライベートで歌舞伎を観させていただいたことが何回かあったので、「あの玉三郎さんの演出ですか?」と。

――プライベートで歌舞伎をご覧になったのですね。それは興味があって?

そうですね。メンバーの基俊介と行きました。

――歌舞伎にはどんな印象を受けられましたか?

日本の伝統芸能ということもあって、最初は他の作品に比べて堅いイメージがあったんです。でも、幅広い世代の人が楽しめる面白いシーンがあって、何と言っても殺陣のシーンの迫力が違いました。

影山拓也

――『星列車で行こう』の劇場は、歌舞伎の発祥の地と言われている南座ですね。南座は『波濤を越えて』でもご出演されましたが、劇場の思い出はありますか?

図々しくも、南座さんは家に帰ってきたような温かさがあるんですよ。この機会にまた行かせていただけるので嬉しいですね。

――「ただいま」という安心感もありつつ?

今回に関しては、初主演というのもありますし、初めての試みがたくさんあるので、それどころじゃないと思います(笑)。

――初めての試みとは?

主演でやらせていただくこととか、ストレートプレイのお芝居で歌を歌わせていただくこととかですね。今までとは違う景色なのかなと思います。

――この作品で、越路吹雪「一寸おたずねします」や堀内孝雄「家を出てゆきたい」、「旅はいいもんだ」、アダモ「明日は月の上で」など​いろんなジャンルの歌を歌われるそうですね。昔の歌もありますが、それらに何か魅力や発見などはありますか?

今回、歌わせていただく楽曲は、僕がカラオケで歌う曲に似ています。僕も90年代、80年代の楽曲がすごく好きで、カラオケではそういう曲しか歌わないんですよ。なので、歌っていて楽しいです。ただ! ただですよ! 発声の仕方が全く違うので、猛勉強中です。

――それはどう違うのですか?

言葉にするのがとても難しいのですが、僕がIMP.で歌っている時の舌の動きから、喉の開き方もそうですし、空気の通し方も、何もかもが違うんです。例えば、「ヤ行」を発音する時は、「ヤ行」の前にちょっと「イ」を入れるとか。

――すごく細かいですね。詞にある単語の発音そのままじゃなくて、テクニックを入れる感じですね。

そうなんですよ。そこが難しいところでもありますし、楽しいところでもありますね。もうめちゃめちゃ、やりがいがあります。

影山拓也

――ちなみに、90年代、80年代の楽曲で十八番はあるのですか?

十八番というほどではないですが、僕がよく歌わせていただくのは中西保志さんの「最後の雨」とか、尾崎豊さんとか。本当に好きですね。今だから言えますけど、初めて玉三郎さんにお会いして、「ちょっと影山くんの歌、聴かせてもらってもいい?」とおっしゃって、披露させてもらったのが「最後の雨」です。

――そうなのですね。玉三郎さんは、なんとおっしゃっていましたか?

「いい声してるね」と言ってくださいました! 「ただ、まだ発声が舞台仕様になっていないから、ここから一緒に勉強していこうね」とも。

――いい経験が積めそうですね。

僕はIMP.として活動していく上でも、歌を武器にしていきたいとずっと思っているので、歌い方の引き出しが一つずつ増えていくのは嬉しいですし、IMP.のためにもなるのかなと感じています。

――座長という立場はいかがですか?

まだ自分でも「座長」なんて言えないです。恥ずかしくないですか!? 多分、IMP.のメンバーが一番そう思ってるんですよ。僕の性格とか、メンバーが一番知っているので、「え、影山が座長!?」と思われています。でも、ありがたいですね。座長としてはとにかく盛り上げて、僕なりに楽しい現場作りをしようと思っています。

――松田悟志さん、松村龍之介さん、石井一孝さんなど、共演者の方にお会いされたのは、先日行われた取材会が初めてだったのでしょうか?

この間の取材会が2回目でした。松田悟志さんは『仮面ライダー龍騎』の仮面ライダーナイトですよね? テレビで観ていたので、びっくりしました! 「あれ!? ヒーローだ!」と思って、直接、生で見られて嬉しかったです。カズさん(石井)はディズニー映画の『アラジン』の歌も歌われていますし、ミュージカルでも活躍されているじゃないですか。最前線で活躍されている方とこんなに近くで一緒にお芝居ができるなんて、これほど光栄なことはないですし、カズさんから歌の技術をいっぱい吸収しようと思っています。松村龍之介さんは、この間の取材会でちょっと距離が縮んだかな? と勝手ながら思ってます。

――それは、どういうことでそう思ったのですか?

僕のことを「かげ」と呼んでくださったんですよ。それが個人的にすごく嬉しくて。今回、京都に長期間滞在しますので、松村さんと2人でご飯に行けたらいいなと、勝手に想像しました(笑)。

影山拓也

――では、影山さんが演じる太郎のように、夢がないと思っている人が目の前にいるとしたら、どんなアドバイスを送りたいと思いますか?

好きなことをとことん追求することじゃないですかね。僕がこの世界に入ったのも、「好き」から始まったので。きらびやかな舞台で歌って踊っている人の姿を観るのが好きだったんです。そしたら、いつの間にか夢に変わっていて。なので、無理に夢を探そうとしなくてもいいのかなと思います。どんなことでもいいので、自分の好きを追求したら、それが将来、お仕事につながるはず。それこそありのままの自分でいることが一番いいのかなと思います。

――好きで始めたことでも、辛いことやしんどいことがあったら、「好き」がちょっと「嫌い」になることはないですか?

僕、不思議とないんですよ。

――なんと。いいですね。辞めたいと思うことも?

ないですね。この世界に入って13年目になりますけども、辞めたいと思ったことも一度もないです。

――では最近できた夢はありますか?

何でも大丈夫ですか? 去年、TOBEアーティスト全員でハワイに行かせていただきました。今年の4月にはIMP.で中国の成都で、海外で初めてのパフォーマンスをさせてもらったんです。海外のお仕事もやらせていただいて思ったのが、英語が話せる人になりたいと。なので、「英語を話せるようになる」が、今の僕の夢で、目標です。

影山拓也

取材・文=Iwamoto.K 撮影=山口謙吾