イスラエルではパレスチナのガザ地区において、イスラム原理主義組織のハマスとの軍事衝突が続いています。そんなイスラエルでは、偽のウェブサイトやSNSアカウントを使って親イスラエルや反パレスチナ、イスラム嫌悪のコンテンツを発信するネットワークが構築されています。これらの活動に関わる人物について、海外メディアのThe Guardianが報じています。

Revealed: the tech entrepreneur behind a pro-Israel hate network | The far right | The Guardian

https://www.theguardian.com/world/article/2024/jun/29/daniel-linden-shirion-collective-pro-israel-palestine-hate



イスラエルでは複数の組織が親イスラエル的な情報発信を行っていますが、その1つに「Shirion Collective」が存在します。Shirion Collectiveは、多くのユダヤ人を含む親パレスチナ活動家に対する嫌がらせ行為や陰謀論の拡散などを行い、アメリカやオーストラリア、イギリスなどのユーザーに対して親イスラエル的な世論の形成を試みています。

Shirion Collectiveは自らを「監視集団」と位置付けており、「主要なメディアが行わない『反ユダヤ主義』の積極的な追跡や暴露を実施します」と説明しています。また、2023年後半から、Shirion Collectiveは親パレスチナ活動家の抗議活動に関与した人々の身元を特定するために「報奨金」の提供を実施しています。





記事作成時点では、2024年6月19日に「報奨金の対象となった抗議者の身元を特定した」として、1000ドル(約16万円)の報奨金を支払ったと主張しています。





また、Shirion Collectiveは「左翼主義者が親パレスチナの抗議活動を後押しするために、アメリカに不法滞在者を連行している」「イスラム教徒がヨーロッパを乗っ取る」などの陰謀論も唱えています。





こうした活動を行うShirion Collectiveの背後に存在する人物について、The Guardianは調査を実施。その結果、アメリカ在住の「ダニエル・リンデン」というテクノロジー起業家の存在が明らかになりました。

リンデン氏はこれまで、「Linden Services」「Focus Interactions Ltd」「Clickstein LLC」などの企業を設立しています。近年では、アダルトコンテンツプラットフォームであるOnlyFansで、AIモデルの合成に取り組んでいます。リンデン氏はAIコンサルタント会社のChiefAIOficcerにおいて、「最高AIオフィサー認定コース」の3人のインストラクターのうちの1人として紹介されています。



Shirion Collectiveとリンデン氏を結び付けたきっかけとなったのは、インターネット掲示板サイトのRedditで公開されているShirion Collectiveについてのサブレディットです。このサブレディットは「Danimde」というユーザーにモデレートされており、The Guardianが「Danimde」について追跡すると、「@dantheprompt」というX(旧Twitter)アカウントに結び付きました。記事作成時点で「@dantheprompt」のアカウントは削除されていますが、The Guardianの調査では、「@dantheprompt」のアカウント所有者はリンデン氏であることが確認されています。

また、Shirion Collectiveはオンライン募金サイトのGoFundMeで募金を集めており、その活動の主催者は当初フロリダ州ゲインズビルに住む「Dani L」と設定されていました。なお、記事作成時点での主催者名は「Dani M」と変更されています。さらに「Dani M」はコロラド州デュランゴに在住しているとの記載がありますが、リンデン氏はどちらの都市にも住んでいた経歴があります。



Global Project Against Hate And Extremismで共同設立者兼最高戦略責任者を務めるハイディ・ベイリッヒ氏は「リンデン氏をはじめとする過激派のアクターたちは、偽のメッセージを発信したり、状況をより不安定にしたりして、自らの利益のために抗議活動や暴動などを利用します。いずれにせよ、リンデン氏は憎悪に満ちたメッセージを世界中に広めています」と批判しました。

なお、The Guardianはリンデン氏に対してコメントを求めていますが、記事作成時点で明確な返答は得られていません。