人気の水遊びスポットでは「車内で着替え」する人多数

夏の定番レジャーといえば海水浴や川遊び、プールなど涼をとれる水場での遊びが人気です。水遊びには水着など濡れてもいい服を着用することが一般的ですので着替えることが必要になりますが、これらのスポット周辺には多くの観光客などが訪れるため、着替えや休憩に利用できるようなスペースはなかなか空きがでません。

すぐに空きが出ればいいのですが、いつ空きが出るかわからない状況のまま何もできずにいるとイライラしてしまいがちですし、子どもがグズり出してしまったりとなにかと面倒なもの。そんなときに、簡易な着替えスペースとして多くの人が利用しているのが車です。

車は一目をある程度遮ることができる室内空間を持っていますので、駐車さえできてしまえばロッカールームや更衣室の代わりに使うことが可能だと言えるでしょう。子どもだけでなく大人でも車内で着替えるという人もいますし、子どもが中で立てるほど広いミニバン軽自動車はもちろん、コンパクトカー、なかにはクーペなどでも着替える人がいるため、ビーチ沿いや河原近くの駐車場では水着を着た人が多く往来しています。

遊び場を間近にして興奮した子どもが車の陰から飛び出てくる場合もありますので、ビーチ沿いや河原近くの駐車場を通行するときには十分に注意しなければなりません。保護者も、着替え終わった子どもが飛び出していかないよう目を離さないようにしましょう。

そして実はそれ以外にも、車内で着替えるにあたり気をつけなければならないことがあります。

車内での着替えはなにかと不便…遊び終わって車に戻ったら「えっ!?」なトラブルも

車内で着替えをする際には外から車内が見えないようにしなければなりませんが、車の窓はさまざまな形があるため、タオルや服等で目隠しをしようとしても完璧にはいかず、「意外に難しいな…」と感じた方は少なくないでしょう。

すべての窓に車内側から貼り付けることでプライバシーを確保できる“プライバシーシェード”を利用するのがスマートですが、各モデルごとの専用設計であることが多く、あまりメジャーではない車では専用品がなかったり、機能的ではあるものの価格がそこそこ高かったりと、誰もが気軽に買えるというほどではありません。

しかし、見た目を気にしなければ段ボールや新聞紙等でも自作することは可能です。めくれてしまわないようするほか、吸盤やマジックテープなど脱着可能なもので固定し運転時には外せるようにすれば、車内のプライバシーは確保できます。

注意しなければならないのは、広いモデルもあるとはいえ、車内は更衣室と比べれば圧倒的に狭く、目隠しをすれば暗くなります。体をぶつけてしまったり知らぬ間にスイッチを押してしまったりする場合があるので、慎重に着替えたいところです。しかし、夏場のエアコンを切った車内は数分で温度が急上昇するため、あまりゆっくりもできません。

また、ルームランプが点きっぱなしになっていたり、知らぬ間に押したスイッチなどがそのままになっていたりすると、遊び終えて車に戻ったらバッテリーが上がってしまったということも考えられます。着替え終わったあとは車の状態の確認もしておくのがベターでしょう。

以上のように、車内での着替えはあくまでもやむを得ない場合の手段であると考え、できれば事前に水着を着用しておくとか場所を予約しておくとか、快適・安全に着替えができるよう準備しておくことが大切です。

「見られても恥ずかしくない」という考え方は間違い?

車内で着替えをする際は、前述したような目隠しをするなどして外から見えないようにする人がほとんどです。それは「見られたくない」という心理でいることがほとんどと考えられ、特に女性はその傾向が強いようですが、いっぽうで男性はそこまで「見られたくない」という意識は強くない傾向にあるようです。

しかし、「外から見えないようにする」のは自身のプライバシーのためになることはもちろんなのですが、法的には「他の人を不快にさせないため」にしなければなりません。十分な目隠しをせず車内で着替えをし、周囲の人からそれが見えてしまうような場合は「公然わいせつ罪」や軽犯罪法違反となる場合があるようです。

公然わいせつ罪は刑法第174条で「公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」と定められていて、軽犯罪法の第二十条では「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」を軽犯罪法違反と定めています。

走行中、停車中に関わらず、路上や一般道に面している駐車場など、車内が他人からも見える状態であれば、そこは「不特定の人や多数の人の目に触れる場所」となるため、車内で裸になるなどの行為は本来は禁止。車内での着替えで下半身など身体の一部が露出する場合は、他の人の目に入らないよう十分に対策をしましょう。

「見られても気にしない」と自分が思っていたとしても、周りの人にとっては「見たくないもの」かもしれません。「不特定の人や多数の人の目に触れる場所」であれば「見るほうが悪い」という言い訳は通じず、実際に車内で着替えていた男性が逮捕されたという事件も過去に発生しています。

のぞかれたら相手を“のぞき魔”として私人逮捕していい?

車内で着替えている様子が外から見えてしまうのは違反にあたるものの、十分な目隠し等ができており、わずかな隙間からたまたま見えてしまった、という場合は違反にあたりません。

「他人に見えちゃってもいい」という理由で目隠しが十分でない場合は違反にあたるおそれがありますが、「十分に対策したにも関わらず、アクシデントにより他人から見えてしまった」という場合は問題ないとされています。

ところで、ビーチ沿いの駐車場などでは、車内で着替える人が多いということから、わずかな隙間などからも車内を覗き見て着替えている様子を見ようとする“覗き魔”がいる場合があります。

これが盗撮被害につながっている場合は別の話であるものの、単に覗き見られただけとなった場合、基本的には「車内で着替えていたほうが悪い」とされ、覗きをした者はせいぜい口頭注意で留まるケースが多いです。覗かれたという、被害を受けたような心理にはなりますが、前述のとおり車の中は「不特定の人や多数の人の目に触れる場所」となるため、対策をしていなかった側に非があると判断されてしまいます。

自身のプライバシーを守ることであるのはもちろんですが、他人を不快にさせるなど迷惑につながるおそれをなくすためにも、車内で着替える際には目隠しは十分に行いましょう。