「子宮頸がんの治療法」はご存知ですか?検査方法も解説!医師が監修!

写真拡大

子宮頸がんは、子宮の入り口にある子宮頸部に発生する悪性腫瘍です。
子宮頸がんは、早期発見すれば治療可能とされるがんの一つですが、進行すると重篤な症状や合併症を引き起こします。

本記事では子宮頸がんの治療について以下の点を中心にご紹介します。

・子宮頸がんとは

・子宮頸がんの検査

・子宮頸がんの治療法

子宮頸がんの治療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

≫「子宮頸がん検診でひっかかる確率」はどれくらいかご存知ですか?医師が監修!

監修医師:
阿部 一也(医師)

医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。

そもそも子宮頸がんとは?

子宮頸がんは、子宮の下部である子宮頸部に発生するがんで、子宮がん全体の約7割を占めています。
20~30歳代の女性に多く、毎年約1万人の女性が発症し、約3,000人が亡くなっています。
「異形成」と呼ばれる前がん病変からゆっくりと増殖し、早期に発見されれば予後は良好といわれています。
しかし、進行し転移が起こると治療が難しくなります。

子宮頸がんの主な検査

各検査では、異常細胞の有無の確認、がんの診断、進行度や広がりなどを詳細に調べます。

細胞診

子宮頸部から細胞を採取し、顕微鏡で検査することにより、異常細胞を識別します。
異常が見つかった場合、さらに精密な検査へと進みます。

HPV検査

採取した細胞からHPVのDNAを検出し、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を調べます。
細胞診で異型細胞が見つかった場合や、結果が不確定な場合にHPV検査が追加されます。

コルポスコピー診

細胞診で異常が見つかった場合に行われる精密検査です。コルポスコープ(拡大鏡)を用いて、子宮頸部を直接観察し、病変がありそうな部位から組織片を採取します。
必要に応じて、さらに詳細な組織診を行うことがあります。

超音波検査

体外や腟内から超音波を用いて子宮や卵巣の様子を観察する検査です。
子宮頸がんの性質や状態、腫瘍と周囲の臓器との位置関係や、別の臓器やリンパ節への転移の有無を調べるために必要な検査です。

CT検査・MRI検査・PET検査

CT検査、MRI検査、およびPET検査は、がんの詳細な位置、大きさ、および他の臓器への影響を把握し、治療計画を立てていきます。
CT検査はX線を利用し、MRI検査は磁場を用いて体内の詳細な画像を映し出します。
PET検査は、超音波検査やCT検査、MRI検査で診断が確定しなかった場合に行われることがあり、がん細胞の代謝活動を可視化し、治療前の詳細ながん評価や、治療経過をモニタリングするのに役立ちます。

子宮頸がんの治療法①外科治療

子宮頸がんの治療法は、がんの進行度に応じて、外科治療や放射線治療、薬物療法や支持療法などから選択されます。
ここでは、子宮頸がんにおける外科治療の種類について解説します。

円錐切除術

初期段階の子宮頸がん(0期)(上皮内がん)や高度異形成(CIN3)に対して選択される治療法で、子宮頸部の異常な組織を円錐状に切り取ります。
子宮機能は温存されるため、妊娠を希望する患者さんに適しています。
しかし、切除した組織の検査で進行がんが確認された場合は、子宮摘出などの追加治療が必要になることもあります。

単純子宮全摘出術

子宮頸部の周囲の組織を残し、子宮本体のみを切除します。
円錐切除術で切除した面に高度異形成(CIN3)が見られた場合や、ごく早期のがんの診断を受けた場合に適用されることがあります。
妊娠は不可能になりますが、性交渉は可能とされています。

広汎子宮全摘出術

がんが周囲の組織やリンパ節に広がっている可能性がある場合に行われます。
がん細胞を可能な限り取り除き、再発や転移のリスクを抑えることを目的とし、子宮と腟膣の一部、卵管、卵巣、および骨盤内リンパ節を含む広範囲の組織が切除されます。
広範囲にわたる切除のため、排尿トラブル、リンパ浮腫や性生活への影響などの合併症が起こるリスクもあります。

準広汎子宮全摘出術

初期の子宮頸がん(IA2~IB1期)で、妊娠を希望する患者さんに適した手術です。子宮体部と卵巣を残し、子宮頸部、腟の一部、および子宮頸部周囲の支持組織を摘出します。
手術中の状況に応じて、子宮全摘への変更や骨盤リンパ節郭清、術後の追加治療が必要になる可能性もあります。

子宮頸がんの治療法②放射線治療

子宮頸がんの放射線治療は、手術が難しい進行期のがんに対する選択肢の1つです。

放射線治療について

放射線治療では、がん細胞を破壊する為に高エネルギー放射線を利用します。
外部照射では、体外から放射線を照射し、がんが拡大する可能性のある領域を治療します。
小線源治療(腔内照射)では、子宮腔内や腟腔内に直接放射線源を挿入し、主病巣に集中的に放射線を照射します。CTやMRIを活用することで照射範囲を正確に把握し、がん細胞を撃退します。

放射線治療の副作用

治療中から数週間後には、下痢、皮膚の赤みや色素沈着、吐き気、食欲低下、膀胱炎や直腸炎などの刺激症状が現れることがあります。
治療後数ヶ月から数年後には、卵巣の機能低下による閉経状態、直腸や膀胱からの出血、便通障害、腹痛、足のむくみなどが起こる可能性があります。
さらには、直腸と腟、膀胱と腟の間にろう孔が形成される場合や、腸閉塞、腸の穿孔、放射線性骨炎、二次がんのリスクもあります。

子宮頸がんの治療法③薬物療法

薬物療法の二つの主要なタイプについて解説します。

細胞障害性抗がん剤

がん細胞の増殖メカニズムを阻害することでがん細胞を死滅させる薬剤です。放射線療法の効果を引き出す目的で使用されることもあります。
がん細胞だけでなく正常細胞にも影響を与えるため、吐き気、脱毛、白血球減少など副作用のリスクがあります。

分子標的薬

がん細胞の成長や増殖に必要な特定の分子をターゲットに作用することで、がん細胞の活動を抑制します。他の細胞障害性抗がん剤と併用することで治療効果の向上が期待できます。
正常細胞への影響は少ないですが、消化管に穴が開く、血栓形成、高血圧など副作用のリスクがあります。

子宮頸がんの治療法④支持療法

支持療法(緩和ケア)は、がんによる苦痛や治療の副作用、心理的なストレスや社会的な問題を和らげ、患者さんがより良い生活の質(QOL)を保てるよう支援する治療法です。
患者さんに合わせた個別のケアプランが策定され、医療スタッフ、家族、患者さん自身が一体となってケアに取り組み、がんと共に生きる道を模索する重要な治療法です。

子宮頸がんが再発した場合の治療

再発した子宮頸がんの治療は、初回治療で放射線療法が行われていない場合や、放射線が照射されていない部位に再発した場合は、放射線療法が選択肢となります。
放射線療法を行った部位に再発した場合は、化学療法や緩和ケアを中心とした治療が検討されます。
再発した子宮頸がんの治療には、個々の状況や再発の特性を詳細に評価し、患者さんに合った治療計画を立てることが重要です。

子宮頸がんについてよくある質問

ここでは子宮頸がんについてよくある2つの質問にお答えします。

なぜ子宮頸がんになるのでしょうか?

阿部 一也 医師

主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で、主に性的接触を通じて伝播します。
免疫システムがHPVウイルスを排除するよう働きかけていますが、一部のHPV感染は時間をかけて子宮頸部の細胞を「異形成(前がん状態)」へと変化させ、子宮頸がんへと進行する可能性があります。

子宮頸がんの予防法はありますか?

阿部 一也 医師

子宮頸がんの予防には2つの主要な方法があります。
1つ目はHPVワクチンの接種です。
子宮頸がんの原因となるHPV型の予防が期待でき、性交経験のない若年層に接種することで、将来的な子宮頸がんのリスクの減少を目指します。
2つ目は定期的な子宮頸がん検診です。早期の子宮頸がんを発見でき、早期治療につながります。

まとめ

ここまで子宮頸がんの治療についてお伝えしてきました。
子宮頸がんの治療の要点をまとめると以下の通りです。

・子宮頸がんとは、子宮の入口部分に発生するがんで、主にヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因

・子宮頸がんの検査は、細胞診やHPV検査、コルポスコピーなどによって、異常細胞やがんの有無を確認する

・子宮頸がんの治療は、外科治療、放射線治療、薬物療法を主とし、症状緩和を目的とした支持療法も重要

子宮頸がんの治療法にはさまざまな選択肢があることをおわかりいただけただけましたか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

子宮頸がんと関連する病気

子宮頸がんと関連する病気は個ほ6どあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

子宮頸がん肛門がん

腟がん

尖圭コンジローマ

再発性喉頭乳頭種

上皮内腺がん


具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

子宮頸がんと関連する症状

子宮頸がんと関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

不正出血

おりものの変化

月経の変化

性交時痛

下腹部痛

腰痛


これらの症状が持続する場合、または新たに現れた場合、医師の診察を受けることが大切です。

参考文献

公益社団法人日本産婦人科学会

日本医師会ホームページ

厚生労働省