2017年、中学1年生ときにTikTokを始めると、かわいさだけではない個性の強さで、またたく間に同世代の心を掴んだ、まいきちさん。14歳でフォロワー88万人を抱え、2020年には自身が作詞を手がけた楽曲で歌手としてメジャーデビューをするなど、TikTokドリームを体現している。が、本人はクールに「1歳から芸能活動をしているから、実は結構芸歴が長いんです」と話すのだ。そんなまいきちさんの、動画制作やファッションのこだわり、そして、「私がかわいい!」と公言する理由とは? 前後編に分けてのロングインタビューを。

 

まいきち…2005年1月30日生まれ、大阪府出身。中学1年生でTikTokを開始したことがきっかけで、2019年にユニバーサルミュージックと専属契約し、2021年2月26日に『どこでもスタート』でメジャーデビュー。2021年よりファッションメディア『Ranzuki』の専属モデルに就任した。YouTubeでは魅力的な歌声を披露している。X/Instagram/TikTok/YouTube

まいきちさん 公式TikTok @maikichi0130

 

【まいきちさん撮り下ろし写真】

 

中学生で「Musical.ly」に没頭

──子役をやっていたんですね。

 

まいきち そうなんです。TikTokを始める前も、歌手デビューを目指してダンスボーカルグループのコンサートに参加したりして。その活動をするために、当時住んでいた大阪と東京を行き来しているときに、趣味でTikTokを始めたんです。そしたら伸びちゃって、いろんなことがパパパッと進んじゃって。

 

──どこで火がつくか分からないですよね。

 

まいきち TikTokで火がついたのは思いがけないことでした。

 

──それまで、歌手になるためのレッスンもしたり?

 

まいきち めちゃくちゃレッスンしたし、オーディションもいっぱい受けたし、ライブもやったし。だから、2020年に『どこでもスタート』で歌手デビューしたとき、「なんでこの子こんなに歌えるの!?」という声を多くいただきましたが、それまでたくさんやっていたんですよね。

 

──そうだったんですね。そもそも、2017年にTikTokを始めたのって世間的にも早いですよね。TikTokの日本サービスが開始されたのも同年ですし。

 

まいきち 最初は、そのとき流行っていた「Musical.ly(ミュージカリー)」という動画アプリをやっていて。

 

──2017年に、TikTokの親会社である中国の大手企業「Toutiao」が買収した、音楽動画制作アプリですね。

 

まいきち そうです。まずはミュージカリーをYouTubeの広告で見て、「なにこれ! やってみたい!」となったのが始まりです。友達と遊ぶときに撮ったり、1日7本投稿とかしていました。フォロワーを増やそうとしていたわけじゃなく、手軽に編集できて投稿して、自分の力で作った動画を見て大満足……という感じで承認欲求を満たしていたんです。そんなとき、ある日ずーーっと通知がピコピコ鳴って。「なになに!?」と思ったら、いいねが1万。急に跳ねて、「ママ! パパ! 起きて起きて! 見てこれ!」みたいな。フォロワー数も2万人に増えていました。

 

いっきにフォロワー数が20万人に

──急ですね!

 

まいきち その動画のコメント欄に「1コメ!」と書かれて。これは有名な子には毎回ついているコメントで、「私にもついてくれた!」ってすごくうれしかったのを覚えています。それで親にフォロワー数が増えたこと、いいねがたくさんついたことなどを報告したら「なにそれ?」って。今のパパだったら「よし! もっとガンガン伸ばそうぜ!」となるけど、当時は大人にとってTikTokって「子どもが遊ぶもの。どうせすぐやめるでしょ」みたいな感覚で。

 

──確かにそうでした。これほどまで主要メディアになると思っていた大人は少なかったでしょうね。

 

まいきち でもその後、親が「え! もう20万人!?」とびっくりするスピードで伸びて、上京する流れになって。同時に、2018年にSNSが乗っ取られて初めて炎上も体験しました。

 

──どんな被害に遭ったのでしょう。

 

まいきち Twitter(現X)とInstagramを同時に乗っ取られて、暴露系クリエイターさんにかなりひどいDMを送られてしまったんです。それを晒されてしまい。そんなことを私が送るはずないって普通に考えたら分かると思うんですが、「まいきち、性格悪い!」とめちゃくちゃ叩かれました。そのとき初めて、「ネットって怖いな」と思ったんです。

 

──遊びで始めて、バズって、炎上も経験して。そして歌手デビューへと繋がって。ほんの2、3年でひと通り経験したんですね。

 

まいきち 歌手デビューは、2019年にユニバーサルミュージックから声をかけていただいたのが始まりでした。作詞してMVを撮るのが夢だったから、すごくうれしかったです。

 

──『どこでもスタート』のMV撮影、いかがでしたか?

 

まいきち 朝3時から撮影でしたが、すっごくわくわくして、中3のくせに大人ぶって眠気を覚ますドリンクを飲んだら体調を崩しちゃって(笑)。現場では、出演してくれる子が「まいきちさんのTikTok、いつも見てます!」と言ってくださるので、彼女たちの前でだけ明るくしていて、控室に入った瞬間にぐったり、みたいな。

 

歌手にモデルに、次々とデビューへ

──かわいいエピソードですね(笑)。この曲、タイトルも歌詞もとても素敵ですよね。

 

まいきち タイトルをスタッフさんに伝えたとき「『どこでも』ってなに?『ここから』のほうがいいんじゃない?」と指摘されて。そのとき、中3の自分は、前に踏み出せないる……そういう空間にいる……という認識で、だから私は「ここ」に限定せずに「どこからでも、何歳でも、いつでも、スタートしていいじゃないか」という思いを込めたつもりで『どこでもスタート』にしたんです。

 

──自分の伝えたいことをそんなふうに言語化できるからこそ、響く曲ができあがったんですね。

 

まいきち 次に作るなら、めちゃくちゃかわいい曲を作りたいんです。私はファッションもお化粧も好きで、化粧をした自分を自撮りして「今日のうち、かわいい」と毎日思っています。「かわいい」と思うとその日が前向きになれるから。

 

──TikTokを見ると、ジャンル限定せずいろいろなファッションをしてますよね。

 

まいきち そう、系統を毎日変えています。好きなものも毎日変わるし。今は『Ranzuki』で専属モデルをしていますが、それぞれのモデルが“ギャル”と“清楚”にわかれるなかで、私は“個性派”といわれています。「まいきちちゃんは、“まいきちちゃん”だもんね」みたいな扱い。

 

──現時点でのTikTokの最新動画では、地雷系のメイクとファッションをしています。朝、その日の気分で決めるんですか?

 

まいきち 意識してメイクしているわけではないんですよ。メイクしていたらそれになる。ちなみに今日の私服は、「高円寺にいそうな人」です。

 

──確かに! 高円寺感ありますね!

 

まいきち ちなみにメンヘラの女の子をイメージして撮ったり。こういう子は路上が似合うだろうなと思って原宿の路上で取りました。こクラブに行きそうな子も、そういうメイクとファッションに変えるんです。

 

──場所も考えているんですか! 完成度高いですね。一番反応がいいのはどれですか?

 

まいきち Tシャツ姿のラフな感じとか。部屋着も人気です。みんなの中での私のイメージが「部屋にいる子」というのが強いと思うので。だからこういう、制服の清楚系も人気があります。

 

1動画につき30テイク

──毎日撮っているんですよね。

 

まいきち 毎日毎日、コンセプトを決めて写真を撮って投稿して、TikTokと同時にXにもポストして。こだわりもすごいんです。1枚の写真を載せるために、死ぬほど写真を撮っています。

 

──何枚くらい撮りますか?

 

まいきち 同じ画角の写真を300枚とか。スマホの写真フォルダには10万枚入ってますね。

 

──10万!

 

まいきち それくらい力を入れています。自撮りじゃなく、カメラマンさんに依頼することもあります。

 

──1カットにつき300枚のなかから、どうやってセレクトしますか?

 

まいきち これは感覚ですね。「あ、これ、バズる。イケる」みたいな。動画も同じように、下書きに1000動画のストックがあります。1動画につき30回くらい撮るし、15秒の動画に6時間かけたり。

 

──手間をかければかけるほど、バズりやすい、という傾向も?

 

まいきち 時間をかけて撮った動画は、絶対にバズってきました。友達の前で撮っていると「もうそれでいいじゃん!」とうんざりされますが、妥協が許せないんですよね。めんどうだとも思わない。一方で、「やらなきゃ。かわいく撮らなきゃ」という気持ちがストレスになるときもあります。

 

──毎日見せ方を考えて、当然疲弊する日もありますよね。

 

まいきち その上、いつ炎上するか分からないし。毎日生きること自体、すごく大変ですよ。

 

──炎上しないコツなどあるのでしょうか。

 

まいきち マイナスなことはあまり言わないようにしています。人って落ち込むと、気を引くために棘のある発言をしがちだと思うんです。そういうことをしない、とか。あと、調子の乗らないことと、ファンの子ひとりひとりを心の底から大事にすること、はずっと意識しています。

 

生きるモチベーションはファンの言葉

まいきち だから、さっきも「私、今日もかわいい」と言いましたが、それもあえて言っています。毎日「かわいい」とか「応援しています」というコメントをくれるのに、本人が「かわいくない」と否定的なことを言うと、すごく悲しいと思うんですよね。「どれだけ『かわいい』と送っても、伝わらないんだな」と。そういう気持ちになってほしくないので、今日も私は「私、かわいい」というプラスな発信をするし、「生きていてよかった」「みんなと出会えてよかった」と言うんです。そうやってすごしていると、炎上しなくなると思います。

 

──ファンの方との信頼関係を感じます。

 

まいきち それは大きいですね。炎上する子って、人気になったら、過去にファンからもらったプレゼントを蹴っている動画が流出するような子が多いんですよね。私はファンからの手紙は箱に入れてずっと取ってあるし、つらいときに読んでいます。

 

──これまで一番心に残ったファンの言葉は?

 

まいきち いっぱいありますが、例えば女の子からの手紙で、「四六時中まいきちちゃんのことを思って生活しています。勉強のモチベも、かわいくなりたいモチベもまいきちゃんだし、恋愛していて傷ついたときに元気をくれるのもまいきちちゃんです」という内容です。TikTokのコメント欄にも素敵な言葉があふれています。スマホを開くと、自分を肯定してくれる人間がいるって……それってすごく大きいんですよね。

 

──絶大な支えですね。

 

まいきち 私の活動の原動力は、ファンの声と、「もっと自分を知ってほしい。見てほしい」という気持ちです。

 

<後編に続く>
TikTokクリエイター・まいきちインタビュー! 不登校を経てからTikTokで生きていくことを決めた少女の「どうせ生きているなら、楽しんだほうがよくない?」マインド

 

まいきちさん 公式TikTok @maikichi0130

 

 

撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/