英Nothing Technologyは18日、フルワイヤレスイヤホンの新製品として「Ear」「Ear (a)」を発表した。

 18日夜のグローバル発表に先駆けて同日午後に開催された発表イベントには、Nothing Technologyのカール・ペイCEOや、Nothing Japanのマネージングディレクターに就任した黒住吉郎氏が登壇し、同社にとって日本の市場が重要であることをあらためて強調した。

 カール・ペイ氏は、「Nothingのワイヤレスイヤホンに関して、日本は米国に次いで2番目の大きな市場となっている」とコメント。同氏にとっては驚きの結果であり、日本への本格進出を決めるきっかけになったと語った。

カール・ペイ氏

 黒住氏は、4月13日に放送されたNHKの「新プロジェクトX 挑戦者たち」に触れ、日本初のカメラ付き携帯電話を取り上げたストーリーに「涙しそうになった」と語った。同氏は「我々もそのような歴史を作っていきたい」と意気込みを見せる。

黒住氏

 「イノベーティブで優れたデザインへの強い思いを大切にしている私たちにとって、日本はとても意味があって重要なマーケット」と黒住氏は語る。伝統と文化に裏打ちされた日本のデザインはNothingの価値観とも重なり、「私たちのプロダクトにとってあらゆる意味で理想的な環境」(黒住氏)。

 NothingのWebサイトへのアクセス数が世界で5番目に多いのが日本で、ユニークビジター数は150万人以上になるという。2023年12月に京都で開催されたイベントにも多くの人が集まった。

 「2024年はNothingにとってこれまで以上に大切な年になる」と黒住氏。顧客のニーズを理解し、Nothingを世界的なブランドにしていくための確固たる拠点を、日本に構築していくと語った。今後は販売チャネルやパートナーの拡大に加え、デザインや研究拠点の展開も視野に入れているという。

質疑応答

――ChatGPTの導入についてコスト面を教えてほしい。ユーザーはずっと無料で使えるということなのか。

カール・ペイ氏
 今回、OpenAIのAPIではなく、ChatGPTのアプリとの連携という形式をとっています。ユーザーの皆さんの使い勝手を考えてこのような結論に至りました。

 ChatGPTの無料ユーザーであればそれをそのまま使っていただけますし、有料で使っていらっしゃる方は、それを使っていただけます。したがって特別な追加のコストは発生せず、あくまでユーザーのChatGPTの契約状況に連動するかたちです。

――「Ear (1)」「Ear (2)」と来て、今回「Ear」「Ear (a)」になった。ナンバリングが廃止された理由は。

カール・ペイ氏
 我々のスマートフォンは毎年のように新製品を出し、アップデートしています。ですから「Phone (1)」「Phone (2)」「Phone (2a)」と名付けていますが、オーディオ製品についてはそこまでの頻度でアップデートする予定はありません。

 そこで、ナンバリングをやめて名前を簡素化しようということになりました。たとえば自動車メーカーも同じような感じで、車のモデル名に1、2、3といった番号はつかないと思います。

――Nothingのスマートフォンについて、これまでの日本市場における売上をどう評価しているか。

カール・ペイ氏
 Phone (1)やPhone (2)にはFeliCaが搭載されていません。私自身も日本に来て、電車に乗るときにいちいち切符を買わなければいけない煩わしさをすごく感じました。

 とはいえ、機能が限られているなかで、Phone (1)やPhone (2)については非常にポジティブな反応をいただいたと思っています。そしてPhone (2a)ではFeliCaが搭載され、SNSでも多くの反響がありました。

 日本の皆さんは期待値が非常に高く、我々でも気づかないような細かいところに対して意見を持っていることがあります。日本市場でブランドを確立してニーズに応えることで、企業としても成長していけるのではと思っています。そういう意味で、日本は特別な市場です。

――EarとEar (a)のチップセットを教えてほしい。

カール・ペイ氏
 スマートフォンのカテゴリーでは、チップセットについて知っている人が本当に多くいらっしゃいます。一方で、オーディオ分野の方はチップセットにはあまりこだわりがなく、むしろオーディオ体験のクオリティのようなものを重視しているのではと思っています。

 私たちもチップセットはいろいろと検討していますが、重視しているのは「何が面白いか」というようなことです。イヤホンとスマートフォンを組み合わせたり、あるいはAIという要素を入れてみたりして、イノベーションが実現できるかどうかが大切です。ちなみにEarやEar (a)のチップセットのサプライヤーはBESです。

――Phone (2a)にはFeliCaが搭載されたが、マイナンバーカードのスマホ用電子証明書のサービスへの対応予定は。

黒住氏
 「今すぐに」というかたちでお答えはできませんが、政府もそのあたりに関する強い動きを持っていますので、しっかり真摯に対応していきたいと思っています。

――日本への本格参入が今ということだが、円安なので状況は厳しいと思う。なぜ今なのか。

カール・ペイ氏
 私たちは長い目でこのビジネスを考えています。もちろん為替の上下などはありますが、私たちがコントロールできることではありません。

 長期的な目線で日本に大きなポテンシャルを感じ、私たちは進出することにしました。短期的な為替の動向などはあまり気にしていません。

 むしろ、為替の問題によって、若い人がよりリーズナブルでデザインや機能性に優れた端末を求める可能性もあります。ですから、チャンスになることもあるのではないかと思います。

――スマートフォンについて、キャリアとの販売を考えているのか。

黒住氏
 我々がまずやりたいのはやはり、多くのお客さまに知っていただく機会を作ることです。そのなかで、キャリアさまの販売チャネルも大切になると思います。

 ただ、キャリアさまとお付き合いする際には、我々としてもしっかりと体制を持たなければいけません。そういった体制がない状態で(キャリアと)お付き合いしようとしても、キャリアさまにご迷惑をかける可能性がありますし、回り回ってお客さまのご迷惑になる可能性も出てきます。

 キャリアさまとの販売の時期などを具体的にお答えすることはできませんが、しっかりと視野に入れてやっていきたいと思います。

――どういった属性のユーザーにアプローチしていきたいのか。

黒住氏
 我々としては年齢や性別といったものはあまり考えず、クリエイティブなマインドを持っている方や、「テクノロジーが生活をどう豊かにしてくれるのか」という部分に興味をお持ちの方に(Nothingを)知っていただきたい。ですから、そういった感度の高い方が集まるようなお店で展開しています。