【衝撃の現場ルポ】獣との命のやり取りの数々…!兵庫県在住アメリカ人ハンターの猟に密着「戦慄写真」

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前編記事『猟師不足の一助に! アメリカ国籍の男性が日本でハンターになるまでの「波乱万丈人生」』では、ハモール・ジェフリー・ヒースさん(41)が日本にわたり「アメリカ人ハンター」として生きていく決断をするまでの経緯を取り上げた。後編ではハモールさんと仲間たちの猟の様子を紹介する。

ハモールさんは狩猟免許を取得したばかりの新人、藤田さんを猟に同行させて指導を行うという。この日は住宅地近くの雑木林、農地など3ヵ所に仕掛けた罠を巡回。猪が見破れないよう、ワイヤーを落ち葉で隠して獣の通り道に罠を仕掛ける方法などを丁寧に説明した。

「市役所の農政課に住民から獣害の連絡が入ると、市と猟友会が共同で被害状況を調査をして罠をどこに仕掛けるかを決めます」

見回りを終え、猟師たちが“小屋”と呼んでいる西宮支部の事務所兼物置へと向かう。この日、ハモールさんは新人猟師たちにワイヤーを使った罠の作り方を教えるという。西宮支部ではハモールさんやベテランたちが銃猟、罠猟、獲物の解体法などのレクチャーを行っている。

「アメリカではコヨーテをトラバサミ(足を入れるとバッチン!と金属製の板が獲物を挟む罠)で獲りますが、鹿や猪をくくり罠で獲ることはありませんでした。日本の罠猟は独特。私の師匠は1年間で猪を100頭も獲る。すごいです」

日曜日、ハモールさんは兵庫県と京都府の県境にある丹波篠山市で地元猟友会と合同で巻狩りを行っている。猟場の山に着くと、ハモールさんが指示を出して立間(射手)を配置する。甲斐犬を連れた勢子(追いかけ役)の米田さんが獲物を追い立てるという作戦だ。私が同行した日は午前中、獲物が出なかったので、昼ご飯を食べてから別の猟場へと向かった。

ハモールさんを先頭に山を登り、立間についた。途中で猪か鹿が泥浴びをする“ぬた場”があったことから期待できそうだ。

それぞれが持ち場について間もなく、米田さんから「鹿が出た。ハモちゃんの方に向かってる」と無線が入った。ブローニングのAボルトを構えるハモールさん。数分後、近くで銃声が響いた。

続けざまにもう1発の銃声。「獲りました」と無線が入る。ハモールさんが銃声がした方向へ急ぐと雌の鹿が倒れていた。仕留めたのは猟を始めて5年目の笹本圭子さんだった。

「いきなり鹿が飛び出してきたのですが、思ったより冷静に対処できました」

記念すべき初めての獲物を仕留めた笹本さんに、狩猟メンバーから祝福の言葉がかけられた。

「今日は最高です!」

ハモールさんも大満足の猟だった。

翌朝、仕掛けた罠に猪がかかったという連絡を受けたハモールさんが現場へと向かった。現場は斜面に面した高級住宅地にある公園だった。

左前足をワイヤーにとらわれた30kgほどの猪が必死にもがいている。油断すると逆襲されるので慎重に背後から近寄る。ハモールさんが“とどめ”として鉄パイプで脳天を一撃する。

「小さなウリ坊だったら、素手でヘッドロックをかけてとどめをさしますよ」

「車の輸出の仕事をしていた時は、毎日が忙しくて精神的に余裕がありませんでした。都会での生活に馴染めなくて、ストレスが溜まっていたと思います。兵庫県に引っ越して、自然が間近にある環境で家族と暮らせるようになり、猟友会の先輩や仲間との出会いがあった。山で獲れた肉を頂き、米や野菜を作るようになって、自分にとって理想の生活を手に入れることができました」

かつてアメリカで祖父や父から猟を学んだように、息子の海晴君にも猟の楽しさを伝授したいというのがハモールさんの願いだ。

撮影・取材・文:横田徹