パリ五輪予選メンバーに19歳の内野航太郎を抜擢 U−23日本代表は攻撃陣の機能がカギになる
パリ五輪アジア予選を兼ねるAFC U23アジアカップに臨む23人のメンバーが以下のとおり発表された。
GK
小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、野澤大志ブランドン(FC東京)、山田大樹(鹿島アントラーズ)
DF
半田陸(ガンバ大阪)、西尾隆矢(セレッソ大阪)、関根大輝(柏レイソル)、木村誠二(サガン鳥栖)、鈴木海音(ジュビロ磐田)、内野貴史(デュッセルドルフ)、大畑歩夢(浦和レッズ)、高井幸大(川崎フロンターレ)
MF
川粼颯太(京都サンガF.C.)、山本理仁(シント・トロイデン)、藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)、佐藤恵允(ブレーメン)、山田楓喜(東京ヴェルディ)、田中聡(湘南ベルマーレ)、松木玖生(FC東京)、平河悠(FC町田ゼルビア)
FW
藤尾翔太(FC町田ゼルビア)、荒木遼太郎(FC東京)、内野航太郎(筑波大)、細谷真大(柏レイソル)
ウクライナ戦で選手に指示を送る大岩剛U−23日本代表監督 photo by Sano Miki
3月のマリ戦、ウクライナ戦に招集されたメンバーから藤田和輝(ジェフユナイテッド千葉)、バングーナガンデ佳史扶(FC東京)、馬場晴也(北海道コンサドーレ札幌)、小見洋太(アルビレックス新潟)、染野唯月(東京ヴェルディ)、植中朝日(横浜F・マリノス)の6人が外れ、山田大樹、木村誠二、内野航太郎の3人が再招集された。
欧州でプレーする鈴木唯人(ブレンビー)、小田裕太郎(ハーツ)、三戸舜介、斉藤光毅(ともにスパルタ)ら実力者は選外となった。
一番の注目はこの春、筑波大の2年になった19歳の大型ストライカー、内野航太郎だろう。185センチ79キロ。この体格で彼より足下がうまいストライカーは日本サッカー史上、いなかった――と断言したくなるほど、長身選手にありがちな技術的な負の側面を内包しない、癖がない万能型ストライカーである。
このチームの看板フォワードである細谷は、今年に入ってからはタイ戦、アジアカップと、立て続けにA代表でもプレーしている。実力者であることに間違いないが、アジアカップでも露呈したが、周囲との噛み合わせに難を抱える。
【荒木遼太郎0トップの可能性も】
日本サッカー界にはポストプレーヤータイプの選手が決定的に不足している。細谷もボールを収める力に優れているとは言えない。細谷の周り、たとえば4−2−3−1なら1トップを務める細谷の下にその手のプレーヤーが存在すれば、裏に抜けるプレーを得意にする細谷は生きる。だがA代表も含め、日本にはそのタイプが少ない。真ん中の高い位置でボールが収まりにくいサッカーに陥る傾向が強い。
その意味で、日本サッカー界に待望される選手像に内野航太郎はハマる。ほめすぎを承知で言えば、日本のマルコ・ファン・バステン(80年代、90年代に活躍した元オランダ代表FW。バロンドールを3度受賞)だ。希少なタイプであることは間違いない。ただし、それはあくまでもタイプの話であり、可能性の話だ。経験の浅いチーム最年少が攻撃の軸として機能するか。機能すれば日本のパリ五輪出場は視界良好となる。
3月のマリ戦で1トップを飾った184センチの藤尾も、ポストプレーが期待できる選手だ。さらにドリブル技術も備える。同戦では細谷が交代で1トップに入ると、右ウイングに回ってプレーしている。ユーティリティ性を評価されてのメンバー入りだろう。
荒木も1トップ候補に名乗りを挙げたと言うべきか。水曜日に行なわれたJリーグの浦和レッズ戦では、アビスパ福岡戦、川崎フロンターレ戦に続き4−2−3−1の1トップとしてスタメンを飾った。ディエゴ・オリヴェイラの1トップ下だったそれまでより、ポジションをさらに1列上げ、FW化したわけだ。
もちろん典型的な1トップではない。その下で構える松木とポジションを頻繁に入れ替わる、いわば0トップである。FC東京のピーター・クラモフスキー監督のこのアイデアに、大岩剛監督がどこまで感化されたか定かではないが、長い間燻っていた荒木をここに来て招集し、今回の23人に抜擢したところをみると、荒木の0トップ起用もない話ではなさそうに見える。
【ユーティリティ性が選考のキーワード】
純然たるウイングは平河、佐藤、山田楓喜の3人。このうち平河と佐藤は左右とも可能だ。そのユーティリティ性を評価してのメンバー入りだろう。今回の選手枠は、繰り返すが23人だ。26人で戦ったA代表のカタールW杯より3人少ない。パリ五輪本大会に至ってはわずか18人での戦いになる。ユーティリティ性こそが選考のキーワードになる。
佐藤がこのチームの常連であるのに対し、平河はここに来て大きく評価を高めた選手だ。町田の躍進とそれは密接な関係にある。藤尾しかり。荒木を含めたまさしく"上がり馬"とでも言うべきユーティリティ選手の出現は、大岩監督にとって嬉しい誤算であるに違いない。
試合は「まず守備から」と言われるが、「まず攻撃から」という考え方があっても何ら不思議ではない。むしろサッカーらしい考え方と言える。このところ森保ジャパンがパッとしない理由は、「いい守備からいい攻撃へ」と「いい攻撃からいい守備へ」のバランスが悪いことに尽きる。キチンと攻撃できないことが苦戦を強いられている最大の要因だ。ボールが高い位置に納まらない点は、その大きな理由のひとつになる。この問題と大岩監督はどう向き合うか。
そうした意味で年少の内野航を選んだことは評価できる。しかし内野航太郎を選ぶなら、同い年の左ウイング、俵積田晃太(FC東京)も選んでほしかった――とは筆者の個人的な感想だ。
先述のFC東京対浦和戦に話を戻せば、ヒーローはゴールを挙げた荒木と松木だった。翌日、ふたり揃ってU−23日本代表に選ばれて、話は丸く収まったかに見えるが、浦和を最も慌てさせたプレーは、左ウイングで先発した俵積田のドリブルだった。
「理想的な攻撃を展開するためには、攻撃のルートを左、右、中央と3本確立することだ」と説いたのは、ビセンテ・デル・ボスケだが、それこそが五輪出場権獲得のカギだと筆者は見る。