3歳牝馬クラシックの第1弾、GI桜花賞(阪神・芝1600m)が4月7日に行なわれる。

 その本番を前にして行なわれたトライアル戦では、強烈な末脚を繰り出したスウィープフィート(牝3歳/父スワーヴリチャード)がGIIチューリップ賞(3月2日/阪神・芝1600m)を快勝。そして、エトヴプレ(牝3歳/父トゥーダーンホット)がGIIフィリーズレビュー(3月10日/阪神・芝1400m)を、キャットファイト(牝3歳/父ディスクリートキャット)がリステッド競走のアネモネS(3月10日/中山・芝1600m)を勝った。

 また、GIIIフラワーC(3月16日/中山・芝1800m)は、ミアネーロ(牝3歳/父ドゥラメンテ)が勝利したが、同馬は桜花賞をスキップして、GIオークス(5月19日/東京・芝2400m)へと向かう予定だ。

 いずれにせよ、これで役者は出そろった。ただ、これら主要トライアルでも、1番人気の勝利はナシ。当初から「混戦」とされてきた3歳牝馬戦線は、昨年のリバティアイランドのような断然の存在がいないまま、クラシック本番へと突入する。


激戦の3歳牝馬戦線。クラシックで戴冠を遂げるのはどの馬か!? photo by Eiichi Yamane/AFLO

 まさしく群雄割拠。はたして、桜花賞、オークスで"主役"となって、勝ち負けを演じるのはどの馬なのか――。そのヒントとなる、3歳牝馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』をここで発表したい。なお、牡馬クラシックへの参戦を表明しているレガレイラは、ここには含めないこととする。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、JRAのホームページでも重賞データ分析を寄稿する競馬評論家の伊吹雅也氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、今春のクラシックに挑む3歳牝馬の、現時点における実力・能力を分析しランクづけ。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。

 1位は前回同様、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)を制して、2歳女王となったアスコリピチェーノ(牝3歳/父ダイワメジャー)。桜花賞には同レースからのぶっつけとなるが、ここまで評価を落とすことはなかった。

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「前が強い体形の馬は、本質的に頑強な先行力を発揮するタイプが多いです。それは、終(しま)いの末脚の爆発力に影響する後肢(トモ)が甘いからですが、この馬は前駆体型でも、追ってしぶとい脚が使える異質なタイプ。この辺りが、レースでの勝負強さにつながっているのでしょう。

 阪神JFでも、その勝負強さを発揮。直線に入って、まずは外から襲いかかってきたコラソンビート(牝3歳/父スワーヴリチャード)に並ばれますが、そこで右手前に戻して同馬を振りきり、その直後、今度は内からステレンボッシュ(牝3歳/父エピファネイア)が迫ってきた際には左手前に戻して、最後までしのぎきりました。

 つなぎが短く回転の速いピッチ走法からすれば、オークスよりは桜花賞向き。阪神JFで1分32秒6と、レースレコードとなる勝ちタイムを記録したことも素直に評価すべきで、桜花賞では2歳女王の底力を見たいですね。ぶっつけ本番となりますが、早めに栗東入り。順調な攻めを消化して、大舞台に向けての態勢作りに抜かりはありません」

伊吹雅也氏(競馬評論家)
「3月24日終了時点の本賞金は1億320万円で、JRAに所属する現3歳世代の牝馬としてはいまだ単独トップ。牡馬を含めても、ジャンタルマンタル(1億3120万円)に次ぐ単独2位です。

 近年の桜花賞は、右回りの重賞で好走した実績のある馬や、重賞を除く右回りのレースで崩れたことのない馬が優勢。反対に、右回り、かつ今回と同じ距離のJRA重賞で3着以内となった経験がない馬は2018年以降、1勝、2着0回、3着1回、着外63回(3着内率3.1%)。さらに、JRAのレース、かつ重賞を除く右回りのレースで2着以下となった経験がある馬も2018年以降、0勝、2着1回、3着0回、着外46回(3着内率2.1%)と苦戦しています。

(桜花賞出走の)特別登録馬のうち、この2条件をクリアしているのは、アスコリピチェーノ、コラソンビート、タガノエルピーダ(牝馬3歳/父キズナ。※桜花賞は除外対象)の3頭だけ。桜花賞向きと思しき馬が思いのほか少ないメンバー構成なので、(アスコリピチェーノに関しては)素直に信頼していいのではないでしょうか」

 2位も前回と同じく、クイーンズウォーク(牝3歳/父キズナ)がキープ。好メンバーがそろっていたGIIIクイーンC(2月10日/東京・芝1600m)を快勝し、"打倒アスコリピチェーノ"の一番手と目されている。

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「昨年、リバティアイランドで牝馬三冠を達成した厩舎&鞍上。それだけに、信頼感があります。

 フランケル産駒の半兄グレナディアガーズは、GI朝日杯フューチュリティS(阪神・芝1600m)を勝つなど、かなりのスピードがありましたけど、父親がキズナとなったこの馬は、よりパワーがありそうな印象。距離的にも融通が利きそうな感じがします」

 3位もまた、前回と同じチェルヴィニア(牝3歳/父ハービンジャー)が入った。ただ、同馬は阪神JFを左後肢の違和感で回避。そのため、GIIIアルテミスS(10月28日/東京・芝1600m)からのぶっつけとなる。加えて、騎乗予定だったクリストフ・ルメール騎手がドバイで落馬・骨折して戦線離脱と、本番に向けての不安要素が尽きない。

吉田氏
「アルテミスSで2着のサフィラ(牝3歳/父ハーツクライ)は、次走の阪神JFで4着と健闘。3着スティールブルー(牝3歳/父ルーラーシップ)も、次走のGIIIフェアリーS(1月7日/中山・芝1600m)で4着。4着ライトバック(牝3歳/父キズナ)は、次走のリステッド競走・エルフィンS(2月3日/京都・芝1600m)を勝って、6着ラヴスコール(牝3歳/父ドゥラメンテ)は次走のフェアリーSで3着と好走しました。そんな好レベルの一戦を勝ち上がった実績は高く評価すべきでしょう。

 その後は一頓挫あって、ぶっつけで桜花賞に挑みますが、気性面からまったく問題ないと見ます。同馬も早めに栗東入りし、素軽いフットワークを披露。状態は申し分なく、復帰戦でも楽しみのほうが大きいです」

 4位も前回と変わらず、ステレンボッシュがランクイン。同馬も阪神JFからの直行で桜花賞に臨むが、鞍上にブラジルの名手、ジョアン・モレイラ騎手を確保し、勝負気配が漂う。

土屋真光氏(フリーライター)
「ここまでの4戦で3人の騎手が騎乗してすべて好成績を残しているように、鞍上を問わないタイプ。そうなると、モレイラ騎手の起用はかなりプラスに働くように思います。

 阪神のマイル戦もすでに経験し、桜花賞に向けて不安はありません。また、エピファネイア×ルーラーシップといった血統面から、距離が延びてこそ、という面もあり、オークスでも無視できない存在です」

 5位は、前回5位のアルセナール(牝3歳/父エピファネイア)が桜花賞をパスして評価を下げた。代わって、フェアリーSの勝ち馬イフェイオン(牝3歳/父エピファネイア)が入った。母イチオクノホシも3歳クラシックでの躍動が見込まれた1頭だったが、その期待に応えることはできなかった。同馬が母の果たせなかった夢を実現するのか、注目である。

伊吹氏
「2020年以降の過去4年に限ると、フェアリーSで2着以内となった馬の3歳牝馬三冠競走(桜花賞・オークス・秋華賞)における成績は、2勝、2着1回、3着3回、着外12回(3着内率33.3%)。以前はクラシック戦線につながりにくい印象のレースでしたが、近年の上位馬からはスマイルカナ(桜花賞3着)、ファインルージュ(桜花賞3着、秋華賞2着)、スターズオンアース(桜花賞1着、オークス1着、秋華賞3着)らが出ていて、イメージが変わりつつあるところです。

 桜花賞の傾向を見ても、右回り、かつ今回と同じ距離のJRA重賞で3着以内となった経験がある馬は2018年以降、5勝、2着6回、3着5回、着外26回(3着内率38.1%)と堅実。近年は右回りのレースに対する適性が明暗を分けている印象ですから、同馬もしっかりマークしておきたいところです」

 ここのランキング上位馬をはじめ、初顔合わせとなる面々が多い桜花賞。2歳戦から直行する有力馬も多数おり、比較材料が少ないうえに不確定要素も多い。馬券予想は難解を極めるが、競馬通にとっては腕の見せどころとなる一戦だ。