清水直行が予想したパ・リーグAクラス3チームは「戦力差がない」上位浮上のカギを握るのは?
山本由伸という球界のエースがいなくなったパ・リーグ。ロッテの佐々木朗希など新たな絶対エースの誕生も期待されるところだが、リーグをけん引していきそうなチームはどこなのか。長らくロッテのエースとして活躍し、2018年、19年にはロッテの投手コーチも務めた清水直行氏に、パ・リーグの順位予想と展望を聞いた。
今季初登板は5回1失点だったロッテの佐々木 photo by Sankei Visual
【1位予想:ロッテ】
――古巣のロッテを1位と予想した理由を聞かせてください。
清水直行(以下、清水) まず、昨季から戦力が下がっていないことです。投手ではルイス・ペルドモが抜けたのでリリーフ陣が少し苦しいと思っていますが、現在のメンバーのやりくりで補えると思います。
先発は小島和哉、種市篤暉、佐々木朗希の3枚の状態がいい。加えて西野勇士もある程度は計算できるのですが、問題は5番手以降の先発ピッチャー。C.C.メルセデスがどれだけ勝てるのか。そこに、中森俊介や唐川侑己、ルーキーの大谷輝龍、田中晴也らのうちの誰かがハマれば面白くなるかなと。
ただ、先発ローテーションはきっちり6枚いなければいけないか、というとそうではありません。4月の第2週以降から日程が変則的になっていくので、とりあえず5人確保していればなんとかなります。
――打線はどう見ていますか?
清水 毎年打線は心配ですが、今年はある程度打つと予想しています。理由はやはり、グレゴリー・ポランコとネフタリ・ソトの存在です。
彼らがいることでファーストやDHなどが埋まるので、そこで起用されていた山口航輝、今季からファーストにコンバートされた安田尚憲の尻に火がついたと思うんです(安田は腰痛で4月2日に登録抹消)。彼らはとにかく打つしかないですが、ポランコとソトがいるので「打たなきゃ」と力みすぎることはなくなるでしょう。また、サードにコンバートされた中村奨吾が、バッティングに集中することでどれぐらい打てるか、というのもポイントですね。
【2位予想:オリックス】
――リーグ3連覇中のオリックスは2位と予想。山本由伸と山粼福也が抜けた影響もあるでしょうか。
清水 山本と山粼が抜けた穴は、山下舜平大や東晃平がある程度は埋めると思います。2011年にダルビッシュ有(現サンディエゴ・パドレス)が抜け、翌2012年に優勝した日本ハムのように、エースが抜けてもなんとかなったチームは過去にも多いですが、力のある投手が2枚抜けるのは相当しんどいんじゃないかという気もします。
ただ、昨季は吉田正尚の穴を、森友哉、首位打者を獲得した頓宮裕真らがカバーしました。今季も中嶋聡監督が手腕を発揮し、成績を飛躍的に伸ばす若いピッチャーが出てくる可能性はあります。有望な若手ピッチャーも順調に育っていてチーム編成もうまくいっている印象ですし、そこを評価して2位としました。
【3位予想:ソフトバンク】
――山川穂高選手、アダム・ウォーカー選手を加え、打線が強力になったソフトバンクは3位予想ですね。
清水 ここまで挙げたロッテ、オリックス、ソフトバンクは戦力にあまり差がないと見ていますし、この3チームがAクラスを争うと見ています。小久保裕紀監督は1年目ですが、二軍監督を務めていたので若い選手を含めてチームをよく知っているでしょうし、初年度からリーグ優勝する可能性もあると思っています。それと、オープン戦では山川が想定していた以上に機能していましたが、シーズンも同様であれば他チームにとって脅威でしょうね。
――Aクラス予想の3チームにはあまり差がないとのことですが、それでもソフトバンクを3位としたのは何か不安材料がある?
清水 打線はおそらく問題ないと思いますが、懸念しているのは投手力。オリックスやロッテより劣ると思います。特に先発陣は、有原航平やベテランの和田毅に頼らなければいけない状況で、板東湧梧や大津亮介あたりの突き上げがないと厳しい。
一方で、今季から先発に転向したリバン・モイネロは投げる体力がありますし、変化球が多彩で先発の適正を感じます。打線の援護があれば12、13勝ぐらいするかもしれません。
ここまでの3チームは、"化ける"選手が1、2人出てきたチームが上にいくんじゃないかと見ています。ソフトバンクでは育成選手だった仲田慶介、緒方理貢、川村友斗が支配下登録されましたよね。川村選手は長打も期待できて面白いですし、3人とも化ける可能性を秘めていると思います。
【4位予想:日本ハム】
――日本ハムは、ここ2年に比べて戦力が充実している印象です。
清水 昨季ブレイクした万波中正やバッティングが安定している松本剛、アリエル・マルティネスが健在ですし、新加入のフランミル・レイエス、アンドリュー・スティーブンソンも含めて打線が固まってきました。特にスティーブンソンはスピードもありますし、新庄監督がやりたい野球にマッチするんじゃないかなと思っています。投手は上沢直之が抜けましたが、山粼が入ったことで戦力を維持できています。
あとは新庄剛志監督が期待している若手たちがどれだけ出てくるか。若い選手が多いと勢いに乗った時は怖いですし、ある程度は自由にやらせたほうがうまくいくんじゃないかと。新庄監督は勝負の3年目と位置づけていると思いますし、2年連続の最下位からどこまで上がるのか楽しみです。
【5位予想:楽天】
――楽天は5位と予想されましたが、どう見ていますか?
清水 今江敏晃監督が現役時代から一緒にプレーしていたメンバーも多いですし、ベテランのよさなどもわかっていると思うんです。年齢も近いので、そういった部分で意思疎通がうまくできれば面白いと思っています。一方、今江監督がベテランの選手たちに、ダメな時は「ダメ」と厳しく言えるかも重要です。
懸念点は、田中将大が開幕に間に合わないなど、先発ピッチャーが少し足りないこと。ただ、先発へ転向した内星龍はいいボールを投げますし、彼が白星を稼いでくれると先発ローテーションが安定していくと思います。それと、松井裕樹が抜けたのはやはり大きい。代わりにクローザーを務める則本昂大は経験豊富なピッチャーなので対応できると思うのですが、安定してハマるまではある程度時間がかかると思います。
――清水さんは、現役時代に今江監督とロッテでチームメイトでした。どんな監督になると想像しますか?
清水 開幕して2カードが終わるくらいには、やりたい野球が見えてくるのかなと。コーチと監督は全然違うので大変だと思いますが、指揮官としてのベンチでの振る舞い、采配、試合後のコメントなど、そういうものを含めて注目していきたいです。苦楽を共にした仲間なので、頑張ってほしいですね。
【6位予想:西武】
――最下位に予想した西武の課題とは?
清水 まずは、昨季の試合を見ていて感じていたことから話そうと思います。
たとえば、試合の序盤で西武が大量得点でリードしたとします。点差が開いていると、その後にピンチを迎えても「最少失点なら仕方ない」という考え方をする。それは当然です。でも、相手の打順や調子、相性などを考慮するべきで、「ここは1点も取らせない」と判断したほうがいい場面もあると思うんです。昨季の西武は「はい、どうぞ」と相手に簡単に点を与えてしまっている印象がありました。
ある程度点を取った後に守りたがる傾向があったのですが、試合の序盤から守りに入る試合運びでは相手に怖さを与えられません。点差をどんどん詰められて逆転されるケースも出てきます。
昨季、松井稼頭央監督は1年目でしたが、もっと攻めてもらいたかったなと。野手陣も投手陣も若手をもっと積極的に起用してみるとか、1年目はいろんなことができるはずなんです。増田達至が不振に陥った時も起用を続けていましたが、そういったケースでは思い切って若手にシフトして経験を積ませてもよかったんじゃないかと。どうしても実績のある選手に頼りたくなる気持ちはわかりますが、腹をくくる部分も必要だと思います。
――そういった采配も注目ですが、投手陣は充実している印象です。
清水 確かに、ふた桁勝利を期待できる先発ピッチャーが揃ってきていますよね。なので、西武の場合はとにかく点を取ることに尽きると思います。ヘスス・アギラーやフランチー・コルデロが加入しましたが、彼らが打つか打たないかで得点力は大きく変わるでしょう。
【プロフィール】
清水直行(しみず・なおゆき)
1975年11月24日に京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市で育つ。社会人・東芝府中から、1999年のドラフトで逆指名によりロッテに入団。長く先発ローテーションの核として活躍した。日本代表としては2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得し、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボールクラシック)の優勝に貢献。2009年にトレードでDeNAに移籍し、2014年に現役を引退。通算成績は294試合登板105勝100敗。引退後はニュージーランドで野球連盟のGM補佐、ジュニア代表チームの監督を務めたほか、2019年には沖縄初のプロ球団「琉球ブルーオーシャンズ」の初代監督に就任した。