新生活で注意! 肌荒れや抜け毛、お肌のトラブルの犯人は「栄養失調」!?
空気の乾燥した冬の時期が過ぎて、お肌のトラブルに悩んでいらっしゃる方々は多いのではないでしょうか? この時期、診療で多い女性のお肌のトラブルは、乾燥肌、皮膚のかゆみ・湿疹、そして抜け毛です。
総合内科専門医の私は、お肌も内臓の一部と捉えており、肌を整える栄養がとても大切と考えています。
ところが、根本的な原因である栄養不足に気が付かず、お肌の表面的なケアにばかり注目し、必要な栄養の摂取が後回しになっています。今回は、栄養失調が招く肌トラブルの解消法を解説します。
○「コラーゲン入り」に惑わされないで
肌荒れの原因は様々ですが、肌荒れの解決策は、お肌の構成要素を知ることがとても大切です。
皮膚の構成要素として注目したいのは、読者の皆さんがよく聞いたことのあるコラーゲンとセラミドです。この二つの成分が十分に皮膚にいきわたっていないと、いくらお肌の表面のスキンケアをおこなっても、根本的な解決にはなりません。
そして、この二つの成分は、栄養素から成り立っているということをまず、知っていただきたいです。
まず、コラーゲンは、タンパク質が主な原料です。このタンパク質に鉄分とビタミンCが組み合わさってコラーゲンが合成されます。
ですから、コラーゲン入り○○という化粧品やサプリメントを一生懸命取り入れても、からだの中のコラーゲンの原料であるタンパク質をしっかりと摂取していないと、コラーゲン不足になってしまうのです。
つまり、お肌のトラブルを防ぐためには、まずは、タンパク質をしっかりと取ること、朝食から、お肉、お魚、卵料理、大豆製品を少なくとも2品食べるようにしましょう。
○潤いを保つセラミドは良質な脂質から作られる
次は、セラミドです。セラミドは皮膚の潤いを保ち保湿に役立つだけでなく、皮膚のバリア機能も高める働きがあります。
このセラミドは、コラーゲンと同様タンパク質と、もう1つ大切な栄養素である脂質(脂肪酸)が主な原料です。
ですから、脂質の摂取はセラミドを作るためにとても重要な栄養素になるわけです。特に、質の良い脂、ω3系脂肪酸(EPA、DHA)を含む食品を積極的に取るようにして、お肌の質を高めることが大切です。
○原因がわからない肌荒れは「遅延型フードアレルギー」を疑え
そして、食品の中で肌荒れの原因となるものとして、小麦と乳製品があります。いろいろな対策を実践しているにもかかわらず、なかなかお肌の調子が良くならないかたは、グルテンアレルギー・カゼインアレルギーかもしれません。
小麦の成分であるグルテンと乳タンパクのカゼインは、一部の方でアレルギーを起こしていることがあります。
これは、通常の血液アレルギー検査ではわからず、遅延型フードアレルギーの検査を受けないと分からないので、遅延型フードアレルギーの検査が近くの医療機関で難しい場合には、ためしに、一度、小麦製品と乳製品を2週間ほど抜いてみるのもひとつです。いわゆるグルテンフリー・カゼインフリーです。
○抜け毛対策は発毛対策 タンパク質で髪の質を高めて抜けにくい髪に
栄養学的に抜け毛の原因は主に3つあると考えています。それは、1.タンパク質不足、2.ミネラル不足、3.ビタミン不足です。
まず、タンパク質は髪の原料となるだけでなく、頭皮という内臓の重要な構成要素です。
髪は常に脱毛と発毛のサイクルを繰り返しています。ですが、タンパク質の摂取が足りないと髪の原料不足のため、発毛しにくい状態となってしまうのです。これが、毛髪が減少する理由のひとつです。
ですから、抜け毛対策は、発毛対策といっても良いでしょう。タンパク質の十分な摂取で、髪の質を高めて抜けにくい髪にすると同時に、抜けても新しく生えてきやすい栄養状態を作ることが大切なのです。
○発毛促進に欠かせない良好な頭皮作りに不可欠なミネラル「鉄」と「亜鉛」
また、ミネラルの中で、脱毛予防と発毛促進のための最も大切なミネラルは鉄と亜鉛です。鉄は、髪と頭皮のコラーゲンを作るために欠かせない栄養素であるだけでなく、頭皮に酸素を運ぶ赤血球の構成要素としてとても大切なのです。
つまり、鉄不足になると、コラーゲン不足とともに、赤血球の品質が悪くなることで頭皮が酸素不足に陥り、コシの強い髪が作れなくなるだけでなく、髪を生やす頭皮に十分酸素が行き渡らなくなってしまうのです。
ですから、まず、肉や魚など動物性の食品に多く含まれるヘム鉄での鉄分の摂取を心がけましょう。食品での摂取が十分に取れない方は、サプリメントでの摂取をオススメします。
ただ、ここで注意が必要なのは、日本では健康食品として認可されていない、海外からの輸入サプリメントです。その中でもキレート鉄というものがありますが、これは、お勧めできません。
アミノ酸でキレートされているため、通常の鉄の吸収経路を使わずに体内で吸収されてしまうため、鉄過剰症になってしまう危険性があるのです。
当院でも、大人や子どもさんで個人輸入されたキレート鉄を飲んで肝機能障害を来して受診された方を何人も経験しています。サプリメントであれば、国産のGMPの認可を受けているより安心で高品質なヘム鉄をお勧めします。
一方で、亜鉛は、元々細胞の分裂や再生にとても重要なミネラルです。特に髪のケラチンの合成をサポートし、頭皮の再生にも重要な働きがあります。これらのことから、鉄不足と亜鉛不足は脱毛の原因となるわけです。
○髪と頭皮に働きかける仕上げのビタミン
最後にビタミンです。抜け毛・脱毛で特に私が注目しているのは、ビタミンDです。
ビタミンDは毛包の毛乳頭細胞に存在し、毛乳頭を元気に活発にさせ発毛を促す働きがあります。また、ビタミンDは髪の老化を遅らせる働きもありますし、免疫力を高め、頭皮のウイルス感染や細菌感染を防ぎ、頭皮を健康な状態に保つのです。
そして、ビタミンB群もオススメのビタミンで、特に、ビタミンB2(リボフラビン)とビタミンB7(ビオチン)が毛髪にとっても大切なビタミンBです。
ビタミンB2は、脱毛の原因となる過剰は皮脂の分泌を防ぎ、毛髪の細胞分裂を促す働きがあります。米国ではビタミンB2欠乏症で脱毛症となった報告があります。
また、ビタミンB7(ビオチン)は、タンパク質、アミノ酸、脂質、糖質の代謝に関わる重要な役割があります。特にアミノ酸は皮膚や髪の毛の主成分であるタンパク質の合成に大きく関わります。また、髪を作るケラチンを作るために重要な働きをしています。
○1.タンパク質をしっかり食べる
朝・昼・夕と3食とも、タンパク質(肉・魚・卵料理・大豆製品)を少なくとも2品取るべし! 特に鉄分を考えると動物性のタンパク質を。
○2.良い脂は積極的に食べるべし!
EPA・DHAを豊富に含む食品を積極的に取るべし!(オリーブオイル・青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸)
○3.鉄分と亜鉛の摂取を意識する
鉄分と亜鉛の多い食品を積極的に取るべし!鉄のサプリメントであれば、ヘム鉄を。キレート鉄は危険なので避ける。※肉類・貝類・レバー・豆腐・大豆・ほうれん草
○5.グルテンアレルギー・カゼインアレルギーのススメ
お腹の調子が悪い方は、グルテンフリー・カゼインフリーをまずは実践!!
○著者プロフィール:梶尚志(かじ・たかし)
梶の木内科医院 院長総合内科専門医、腎臓専門医。
総合内科専門医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「体の不調」に栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行う。
総合内科専門医の私は、お肌も内臓の一部と捉えており、肌を整える栄養がとても大切と考えています。
ところが、根本的な原因である栄養不足に気が付かず、お肌の表面的なケアにばかり注目し、必要な栄養の摂取が後回しになっています。今回は、栄養失調が招く肌トラブルの解消法を解説します。
○「コラーゲン入り」に惑わされないで
肌荒れの原因は様々ですが、肌荒れの解決策は、お肌の構成要素を知ることがとても大切です。
皮膚の構成要素として注目したいのは、読者の皆さんがよく聞いたことのあるコラーゲンとセラミドです。この二つの成分が十分に皮膚にいきわたっていないと、いくらお肌の表面のスキンケアをおこなっても、根本的な解決にはなりません。
そして、この二つの成分は、栄養素から成り立っているということをまず、知っていただきたいです。
まず、コラーゲンは、タンパク質が主な原料です。このタンパク質に鉄分とビタミンCが組み合わさってコラーゲンが合成されます。
ですから、コラーゲン入り○○という化粧品やサプリメントを一生懸命取り入れても、からだの中のコラーゲンの原料であるタンパク質をしっかりと摂取していないと、コラーゲン不足になってしまうのです。
つまり、お肌のトラブルを防ぐためには、まずは、タンパク質をしっかりと取ること、朝食から、お肉、お魚、卵料理、大豆製品を少なくとも2品食べるようにしましょう。
○潤いを保つセラミドは良質な脂質から作られる
次は、セラミドです。セラミドは皮膚の潤いを保ち保湿に役立つだけでなく、皮膚のバリア機能も高める働きがあります。
このセラミドは、コラーゲンと同様タンパク質と、もう1つ大切な栄養素である脂質(脂肪酸)が主な原料です。
ですから、脂質の摂取はセラミドを作るためにとても重要な栄養素になるわけです。特に、質の良い脂、ω3系脂肪酸(EPA、DHA)を含む食品を積極的に取るようにして、お肌の質を高めることが大切です。
○原因がわからない肌荒れは「遅延型フードアレルギー」を疑え
そして、食品の中で肌荒れの原因となるものとして、小麦と乳製品があります。いろいろな対策を実践しているにもかかわらず、なかなかお肌の調子が良くならないかたは、グルテンアレルギー・カゼインアレルギーかもしれません。
小麦の成分であるグルテンと乳タンパクのカゼインは、一部の方でアレルギーを起こしていることがあります。
これは、通常の血液アレルギー検査ではわからず、遅延型フードアレルギーの検査を受けないと分からないので、遅延型フードアレルギーの検査が近くの医療機関で難しい場合には、ためしに、一度、小麦製品と乳製品を2週間ほど抜いてみるのもひとつです。いわゆるグルテンフリー・カゼインフリーです。
○抜け毛対策は発毛対策 タンパク質で髪の質を高めて抜けにくい髪に
栄養学的に抜け毛の原因は主に3つあると考えています。それは、1.タンパク質不足、2.ミネラル不足、3.ビタミン不足です。
まず、タンパク質は髪の原料となるだけでなく、頭皮という内臓の重要な構成要素です。
髪は常に脱毛と発毛のサイクルを繰り返しています。ですが、タンパク質の摂取が足りないと髪の原料不足のため、発毛しにくい状態となってしまうのです。これが、毛髪が減少する理由のひとつです。
ですから、抜け毛対策は、発毛対策といっても良いでしょう。タンパク質の十分な摂取で、髪の質を高めて抜けにくい髪にすると同時に、抜けても新しく生えてきやすい栄養状態を作ることが大切なのです。
○発毛促進に欠かせない良好な頭皮作りに不可欠なミネラル「鉄」と「亜鉛」
また、ミネラルの中で、脱毛予防と発毛促進のための最も大切なミネラルは鉄と亜鉛です。鉄は、髪と頭皮のコラーゲンを作るために欠かせない栄養素であるだけでなく、頭皮に酸素を運ぶ赤血球の構成要素としてとても大切なのです。
つまり、鉄不足になると、コラーゲン不足とともに、赤血球の品質が悪くなることで頭皮が酸素不足に陥り、コシの強い髪が作れなくなるだけでなく、髪を生やす頭皮に十分酸素が行き渡らなくなってしまうのです。
ですから、まず、肉や魚など動物性の食品に多く含まれるヘム鉄での鉄分の摂取を心がけましょう。食品での摂取が十分に取れない方は、サプリメントでの摂取をオススメします。
ただ、ここで注意が必要なのは、日本では健康食品として認可されていない、海外からの輸入サプリメントです。その中でもキレート鉄というものがありますが、これは、お勧めできません。
アミノ酸でキレートされているため、通常の鉄の吸収経路を使わずに体内で吸収されてしまうため、鉄過剰症になってしまう危険性があるのです。
当院でも、大人や子どもさんで個人輸入されたキレート鉄を飲んで肝機能障害を来して受診された方を何人も経験しています。サプリメントであれば、国産のGMPの認可を受けているより安心で高品質なヘム鉄をお勧めします。
一方で、亜鉛は、元々細胞の分裂や再生にとても重要なミネラルです。特に髪のケラチンの合成をサポートし、頭皮の再生にも重要な働きがあります。これらのことから、鉄不足と亜鉛不足は脱毛の原因となるわけです。
○髪と頭皮に働きかける仕上げのビタミン
最後にビタミンです。抜け毛・脱毛で特に私が注目しているのは、ビタミンDです。
ビタミンDは毛包の毛乳頭細胞に存在し、毛乳頭を元気に活発にさせ発毛を促す働きがあります。また、ビタミンDは髪の老化を遅らせる働きもありますし、免疫力を高め、頭皮のウイルス感染や細菌感染を防ぎ、頭皮を健康な状態に保つのです。
そして、ビタミンB群もオススメのビタミンで、特に、ビタミンB2(リボフラビン)とビタミンB7(ビオチン)が毛髪にとっても大切なビタミンBです。
ビタミンB2は、脱毛の原因となる過剰は皮脂の分泌を防ぎ、毛髪の細胞分裂を促す働きがあります。米国ではビタミンB2欠乏症で脱毛症となった報告があります。
また、ビタミンB7(ビオチン)は、タンパク質、アミノ酸、脂質、糖質の代謝に関わる重要な役割があります。特にアミノ酸は皮膚や髪の毛の主成分であるタンパク質の合成に大きく関わります。また、髪を作るケラチンを作るために重要な働きをしています。
○1.タンパク質をしっかり食べる
朝・昼・夕と3食とも、タンパク質(肉・魚・卵料理・大豆製品)を少なくとも2品取るべし! 特に鉄分を考えると動物性のタンパク質を。
○2.良い脂は積極的に食べるべし!
EPA・DHAを豊富に含む食品を積極的に取るべし!(オリーブオイル・青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸)
○3.鉄分と亜鉛の摂取を意識する
鉄分と亜鉛の多い食品を積極的に取るべし!鉄のサプリメントであれば、ヘム鉄を。キレート鉄は危険なので避ける。※肉類・貝類・レバー・豆腐・大豆・ほうれん草
○5.グルテンアレルギー・カゼインアレルギーのススメ
お腹の調子が悪い方は、グルテンフリー・カゼインフリーをまずは実践!!
○著者プロフィール:梶尚志(かじ・たかし)
梶の木内科医院 院長総合内科専門医、腎臓専門医。
総合内科専門医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「体の不調」に栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行う。