生き生きと働きたい!

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「ああ、仕事にやりがいがある! この会社に入って本当によかった!」

心の底からそう思えて、後輩や友人にオススメしたい企業はどこか――。

就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク(東京都渋谷区)が2024年1月25日、「社員が選ぶ『働きがいのある企業ランキング2024』」を発表した。

仕事にやりがいを見いだせる上位50社の企業には、どんな魅力があるのか。社員のクチコミから分析した担当者に聞いた。

1位リクルート、2位PwCコンサル、3位電通

OpenWorkは、社会人の会員ユーザーが自分の勤め先の企業や官庁など職場の情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイト。会員数は約605万人(2023年12月末時点)という。

OpenWorkでは、企業の評価を「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」の8つの指標を5段階で評価している。

日系・外資系合わせて50社がランクインした結果、1位に日本の総合人材企業リクルート、2位に英国に本拠を置くコンサル企業のPwCコンサルティング、3位に日本の大手広告代理店の電通、4位に日本のコンサル企業アビームコンサルティング、5位に米国に本拠を置く大手IT企業の日本IBMが入った。

つづいて、6位に日本の電機メーカー・ソニー、7位には日本の自動制御機器キーエンス、8位に米国のプルデンシャル生命保険、9位にアイルランドのコンサル企業アクセンチュア、10位に世界最大規模の会計事務所デロイト トーマツ コンサルティングが入った【図表1、2】。

オープンワークの調査では、ここ数年、外資系企業が上位を独占している。昨年(2023年)もトップ10のうち7社が外資企業だったが、今年は上位10社中、5社を日系企業が占めた。また、ベスト50位にも多くの日系企業の躍進が目立った【図表2、3】。その理由としてこう分析している。

(1)働き方に関する先進的な取り組みを行っている企業が名を連ねる形となり、ランクインした日系企業のクチコミからは、「社会へのインパクト」「成長機会」に関する声が多く見受けられた。
(2)全体として「年次に関係なく、若手にも裁量権が与えられること」に対する評価の声が多く見受けられた。終身雇用制度を廃止し、ジョブ型雇用を導入する企業が増えるなか、若手のうちから裁量権を与えられ、スキルアップできる環境を求める機運の高まりがうかがえる。
(3)OpenWorkの定量スコアには、総合評価のほかに8つの項目がある。各項目のスコアを基に8角形の評価グラフができるが、各指標とも高評価を得ている「オールラウンド型」とは別に、特定の項目だけ特に高い評価を得ている「スパイク型」企業が複数ランクインした。限られた経営資源の中で、どこかに特化した強みを持ち、それを求めている人材を採用する戦略が功を奏したかたちだ。

「社会にインパクトを与えたい」

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したオープンワーク広報に話を聞いた。

――「働きがい」に関して、日本企業の躍進が目立った理由として、「社会へのインパクト」と「成長機会」を上げています。具体的にはどの企業の社員のクチコミにそれが表れているのですか。

オープンワーク広報 1位のリクルート社員のクチコミにこうあります。

「基本的にどのサービスも社会課題(リクルート社内では「負」と呼んでいる)の解消を目指しており、社会へのインパクトを重視している人は働きがいを感じやすいのでは。進みたい道が見えていなかったとしても、上司・社内人事のサポートが充実しており、強みや関心を起点にキャリアを開発しやすい」(マーケティング・在籍3年未満)

また、3位の電通の社員クチコミでもこう評価しています。

「世の中で話題になっているものの裏には、ほぼ広告代理店が絡んでいるのではないかと感じるほど、社会に与えるインパクトをもたらしている。自分自身が関わった案件から人の気持ちが動いたり、流行が生まれたりすることは、大きなモチベーションになっている」(営業・在籍3〜5年)

――電通の場合は「話題になっているものの裏には、ほぼ広告代理店が絡んでいる」とはいえ、たとえば、東京五輪(2021年)の汚職事件や談合事件で元社員たちの裁判が行われているなど、マイナスのイメージがあります。その企業が「働きがい」で3位に入るということに、正直、意外感もありますが。

オープンワーク広報 電通に関しては、ここ数年で強いイニシアティブのもと、抜本的な改革が行われてきた印象を受けています。現に、「働きやすさ」に関する高い評価のクチコミが目立っています。たとえば、こんなクチコミが相次いでいます。

「以前と比較すると、だいぶ休みやすくなりました。自分の裁量で、プロジェクトのメンバーに事前に申し出ていれば、自由に休むことができるし、その日に休もうと決めても、打ち合わせに支障がなければなんら問題ない。まわりも、休むことを推奨する空気作りができていて、休んでも気まずさをそんなに感じない。気分で午前休をとったりしています」(クリエイティブ、在籍10〜15年)

「若手のうちからチャンスをもらえる機会が多い。また、自分から働きかけていくことで、いくらでもチャンスはつくれるような会社。好きなこと・やりたいことを発信し続けていれば、声をかけてもらえることもあるし、自分で仕事をイチから作っていくことも頑張れば可能」(ソリューション・在籍5〜10年)

「ゆるブラック」に反発、若手を成長させてほしい

――日本企業の躍進が目立った理由として「社会へのインパクト」がありましたが、この点を評価する声は、傾向として日系企業に多いのですか。

オープンワーク広報 いえ、日系、外資ともに働きがいのモチベーションのもとになっているようです。たとえば、外資系のプルデンシャル生命保険では、こんなクチコミがあります。

「保険というイメージを完全に覆す、社会貢献ができる組織である。現に、お客様に感謝され、使命感や自分の存在価値を高めることができる。もちろんそれに見合った報酬も出るので、お客様のために尽くせた割合=サラリーマンでは得られない収入となる」(営業所長、在籍3〜5年)

ソニーでは、こんなクチコミがあります。

「何よりも、グローバルにおける認知、社会的なインパクトが大きいこと」(事務職、在籍20年以上)

「社会を豊かにするものばかり作っているので、働きがいはある。頑張れば頑張った分評価されるが、大企業ならではの年功序列的なところもあるように感じる。優秀な社員が多く、みな向上心があるため、自分を高めることができる企業だと思う」(事務補助、在籍3年未満)

――「社会に尽くしたい」という気持ちが、働きがいにつながっているわけですね。ところで、かつては「外資に行くと、成長できる」という意見が多かったですが、最近は日系企業でも若手の成長機会を与えてくれるという評価が高まっているのですか。

オープンワーク広報 最近、若手への裁量権に関しては日系企業に限らず、全体的な特徴として注目されています。というのは、OpenWorkには8つの評価項目があるのですが、10年単位で推移を見た際に、唯一下降しているスコアが「20代の成長環境」なのです。

働き方改革の浸透により、働きやすさが向上した一方で、近年では「ゆるブラック」という言葉が注目を浴びるように、若手を厳しく鍛える風潮が薄れて、「成長実感があるか、ないか」が若手社員を中心とした大きな課題となっています。

そんななか、若手の成長環境に関して評価が高い企業のクチコミを紹介します。

キーエンス「新卒から個人の数字面について全責任を負い、裁量権を持って活動するため、短期的な成長速度は早いと感じる」(営業、在籍3年未満)

サイバーエージェント「若手から裁量権を持って働けるので、責任は伴いますが、他社では経験することの出来ない仕事ができると考えます。成長は、経験の総量と困難と逆境の数で変化すると考えますが、サイバーエージェントでは両軸補うことができるので若手から圧倒的な成長ができると思います」(営業、在籍3年未満)

野村證券「若手にも裁量権を与えられ、挑戦と結果を求められるため、働きがいは非常に高い。一方でやる気がなければ一切結果は出ないうえ、給与が下がるため、一度沈んでしまうと負のスパイラルに陥る可能性は高い。しかし、一念発起すればキャリアにおいても逆転は効くため、本人の努力が結果に直結するという面では、結局働きがいは人による」(営業、在籍3年未満)

「法令順守意識」満点でランクインしたアダストリア

――いずれも、若手がバンバン伸びそうな企業ですね。ところで、「オールラウンド型のみならず、スパイク型企業も複数ランクインしている」という解説が非常に興味深いです。どういう企業が、突出した魅力と持ち味を出しているのですか。

オープンワーク広報 「法令順守意識」が突出して高いのが、カジュアル衣料品のアダストリアです。8項目の評価では、ほかが5点満点中2〜3点台なのに、「法令順守意識」だけ4.6点とほぼ満点です。社員のクチコミをみると――。

「法令遵守にも積極的で、サービス残業などは美徳とされません。決められた時間の中でいかに成果を出すか、が大切な環境です。社内での監査や定期的な上長との面談があるため、不正など起こりにくいと感じます。パワハラなどに対しても、普段から社内連絡等での注意喚起がなされるため、意識が高められます。細かなトラブルなどあっても異動などで、環境を変えられる点も働きやすいです」(店長、在籍3〜5年)

「風通しの良さ」と「20代成長環境」が4点台前半と、突出して高いのがウェブサービスのディップです。こんなクチコミがあります。

「働いている人は本当に皆良い人で、楽しく人間関係を広げることができる。若手が多いので、20代でも上のポジションに就くこともでき、自分の意見や、やりたいことをやれる環境がある」(営業、在籍3年未満)

総合商社が見当たらないのはなぜ?

――なるほど。ところで、50位までの企業名を見て驚くのは、こういった企業ランキング、特に学生の就職人気企業ランキングなどでは、必ず上位を独占する総合商社の名前がほとんど見当たらないことです。
33位に住友商事が入っているだけで、1位常連の伊藤忠商事は圏外です。やはり、総合商社は日本企業特有の「年功序列」型体質から脱していないということでしょうか。

オープンワーク広報 今回の調査では、一定数の投稿がある企業を対象に集計しているため、「総合評価の低下を理由にランクインしていない」とは一概には言えません。実際に、総合商社のデータで経年変化を見ていくと、複数の企業が昨年よりもスコアを上げていました。

直近投稿されたクチコミを確認すると、若手への裁量権・成長実感に関する声が多く見受けられました。

三井物産「入社1年目から海外出張の機会を与えられる。やる気がある人、自ら手を挙げてやる人、主体性ある人などにはどんどん仕事を任せてくれる」(営業、在籍5〜10年)

三菱商事「グローバルな視点で、金額規模の大きい仕事に若手のうちからチャレンジさせてもらえるのは、キャリア形成上大きな糧となっている」(営業、在籍10〜15年)

伊藤忠商事「それなりに活躍の場を与えてもらうことができ、若年層でも責任ある仕事を任せてもらうことができ、成長の場=一段上の役割を担うことができたと自負できる」(経営企画、在籍20年以上)

――調査を担当して、従業員が生き生きと働きがいを持って活躍する企業にするためには、何が一番重要だとお考えになりますか。

オープンワーク広報 調査では、「若手への裁量権」や「成長機会」に関する声が多く集まる企業がランクインしていましたが、働く社員が感じる「働きがい」はそれぞれ異なります。

また、特定の項目で高い評価を得ている「スパイク型」の企業も複数ランクインしていたり、同じ評価スコアでも寄せられるクチコミは全く異なるものだったりと、企業によって強みは異なります。

採用時に自社の強みや企業文化といった、求人票では十分に伝わりきらない情報をいかに伝えて、ミスマッチのない採用を行えるかが1つの重要ポイントであると捉えます。

「自分にとって働きがいのある会社」は人それぞれだと思います。風通しの良さが第一という方もいれば、待遇面の満足度が第一という方もいらっしゃるかと思います。こうしたランキングは1つの参考として、リアルなクチコミを参考に、よりよいキャリアを考えるきっかけになったら嬉しく思います。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)