「白内障」になると、目のかすみなどの症状が出る

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 目の病気の一つに「白内障」があります。高齢者がなりやすい病気という印象がありますが、実際にどのような症状が出るのか分かりにくいと感じる人は多いと思います。

 そもそも、白内障とはどのような病気なのでしょうか。若い人も発症する可能性はあるのでしょうか。白内障を発症する原因や主な症状などについて、いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんに聞きました。

加齢、糖尿病などが原因

Q.そもそも、白内障とはどのような病気なのでしょうか。

岩見さん「目の中のピント調節をつかさどる『水晶体』が濁る状態になる病気です。進行し過ぎると水晶体が全て真っ白になり、瞳の向こうに白いレンズが見える、つまり瞳が白くなることから、白い内側の障り(体に悪いもの)ということで白内障と名付けられました」

Q.白内障にかかると、主にどのような症状が出るのでしょうか。眼科を受診する目安も含めて、教えてください。

岩見さん「白内障になると光が通りにくくなるため、『目がかすむ』『視界が暗くなる』『色の違いが分かりにくくなる』『暗い場所で見えにくくなる』といった症状が出るようになります。また、目の中で光が散乱することにより、まぶしさなどを感じるようになるため、眼精疲労の原因となります。

このほか、白内障はレンズに異常が生じている状態のため、ピントの位置が変わることで、近視になったり遠視になったりするほか、乱視が増えたりします。

白内障が生じると、眼科医はよく『すりガラス越しの見え方』と表現しますが、進行して水晶体が真っ白になる『成熟白内障』の状態になると、障子紙越しの見え方のように、物のシルエットしか分からなくなります。

目の病気は、自分では判断が非常に難しいです。これまで見えていたものが見えなかったり、疲れを感じたり、文章を読む効率が落ちたりするなどの症状があれば、眼科を受診しましょう。その際、緑内障などの早期に発見すべき病気が見つかることがあります」

Q.白内障を発症する原因について、教えてください。高齢者に多い病気という印象がありますが、若い人でも発症するケースはあるのでしょうか。

岩見さん「加齢が原因で白内障を発症するケースが多く、年齢とともに発症の確率が上がります。厚生労働省の白内障に関する研究班の報告では、加齢に伴って白内障が生じる割合は50代で半分、60代で4分の3、70代で9割強、80代で100%とされています。

加齢以外の原因としては、外傷やアトピー性皮膚炎、糖尿病、強度近視などが挙げられます。そのため、若い人でも白内障を発症することがありますし、強度近視の人は白内障が早く生じやすいといわれています。

特に糖尿病は、白内障を進行させる危険因子とされています。医学に関する解説書には、糖尿病の人は、健康な人よりも20年早く白内障を発症するという情報が記載されています。そのため、糖尿病にならないように、日頃から健康を意識した生活を心掛けることは、白内障の発症を遅らせる上で有効だと考えられます」

Q.ちなみに、スマホやパソコンの使い過ぎが原因で白内障を発症する可能性はあるのでしょうか。

岩見さん「目を使い過ぎることが原因で白内障の発症リスクが高まるという報告は、今のところありません。しかし、日頃からスマホやパソコンの操作で目を使うことが多い場合、適切に休養を取らないと眼精疲労によって頭痛や肩こり、ピントが合いにくくなるといった症状が生じる可能性があります。無理は禁物です」

Q.白内障を放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性がありますか。失明するケースはあるのでしょうか。

岩見さん「先述の通り、白内障は物が見えにくくなる病気です。放置すると、眼精疲労が生じるようになるだけではなく、危険度が増し、転倒リスクが増えます。

古い報告ですが、高齢者で白内障がある人と白内障の手術を済ませた人とを比較すると、転倒による大腿骨頸部骨折の確率に差があったと報告されています。また、白内障の手術を済ませた人とそうでない人とで、軽度認知障害(MCI)の発症の確率に差があったという報告もあります。

人によって異なりますが、白内障が進行すると水晶体が膨らみ、目に強い痛みなどが生じる『急性緑内障発作』を発症することがあります。これは眼圧をつかさどる目の中の水の流れが、膨らんだ水晶体によって邪魔されることで生じます。さらに、白内障を放置すると、水晶体が目の中で溶け出すことによって炎症が起き、その後、炎症から緑内障を発症し、失明することもあります。

これらのことから、白内障は基本的に放置してはいけない病気です。ただ、治療のタイミングは人それぞれなので、眼科を受診して医師と相談する必要があります」

Q.白内障にかかった場合、どのような治療を行うのでしょうか。

岩見さん「白内障によって視機能が下がってきている場合、手術でしか治せません。水晶体の機能は透光(光を通す)と屈折(ピントを合わせる)です。そのため、白内障手術の目的は濁りを取って光の通り道をつくり、ピントを合わせるために眼内レンズを挿入することです。

眼内レンズは健康保険適応の単焦点眼内レンズ、保険適用外で老眼を改善させる多焦点眼内レンズなどがあり、それぞれメリット、デメリットがあります。保険適用外のレンズがすべての人に対して最も優れているというわけではないため、向き・不向きについて、ご自身のライフスタイルに基づき、眼科医と相談する必要があります。

このほか、白内障の患者に対して点眼療法が行われることがありますが、厚労省の白内障に関する研究班の報告では、点眼療法は、十分な科学的根拠がないとされています。すなわち、はっきり効果があると証明されたものではないため、この治療を受けるかどうかは眼科医と相談する必要があります。

人間は外界の8割の情報を目から取り入れるといわれており、年を取ってもできるだけ目の健康を維持したいものです。そのためには、将来的な白内障の手術に備えて、定期的に目の検診を受けたり、情報を収集したりすることが大切です」