炎上する日本航空機=1月2日午後、羽田空港 Photo:SANKEI

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故郷で年末年始を過ごした帰省客や行楽地から帰る旅行客でほぼ満席だった日本航空の旅客機と、能登半島地震で救援物資を搬送する予定だった海上保安庁の航空機が2日、羽田空港で衝突した。テレビのライブ映像に映し出された焼け落ちる日航機。一方で乗員乗客379人は全員脱出との情報に安堵(あんど)した読者も多かったと思うが、残念ながら海保職員5人は命を落とした。警視庁は東京空港署に捜査本部を設置。運輸安全委員会は航空事故調査官6人を派遣し、事故の原因究明に着手した。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

「危険な11分」に
何があったのか

 本稿に入る前に、亡くなられた海上保安庁職員5人の方々に心から哀悼の意を表したい。

 事故が起きたのは2日午後5時47分。日航516便エアバスA350は午後4時15分に新千歳空港を出発し、目的地の羽田空港C滑走路に着陸するとほぼ同時に、新潟航空基地に向かう予定だった海保機ボンバルディアDHC8-300と衝突した。

「離発着の両機」の初報を聞いて、信じられなかった。航空関係者には「クリティカル・イレブン・ミニッツ」という概念がある。事故の多くを占める離陸滑走開始後3分と着陸前8分を合わせた「危険な11分」という意味で、パイロットが最も緊張し警戒する時間だからだ。

 筆者がかつて航空機事故取材を経験したことを知っている全国紙社会部デスクから相談を受け、見せてもらった動画には、今回の事故直後の息をのむような光景が映り込んでいた。炎でオレンジ色に染まる窓の外。機内に漂う煙。「早く出して」と絶叫する子どもと思われる声。

「落ち着いてください」「かがんで口と鼻を押さえてください」と指示するキャビンアテンダント(CA)の努めて冷静な避難誘導に、落ち着いて従う乗客の様子。多少の悲鳴や怒号は聞こえるが、収拾がつかないほどのパニックに陥っている様子がないのがむしろ不思議なくらいだ。

 救助された後の乗客らの話によると、着陸と同時に引っ掛かるというか、突き上げられるような感じがしたらしい。その後は窓の外に炎が見えてだんだん熱くなり、煙で息苦しさを感じて「死を覚悟した」という。

 同デスクは「CAの適切な誘導と、乗客の落ち着いた対応が犠牲者を出さなかった理由と思います。奇跡ですね」と驚いていた。一方の海保機だが、機長は何とか脱出できたが重度のやけどを負い、ほかの5人は全身を強く打って死亡した。

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