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大谷(中央)と談笑するカステン球団社長(右)。この米スポーツ界の事情を知り尽くした仕事人も二刀流スターには驚くばかりだ。(C)Getty Images

 投打で違いを生み出せる天才をドジャースに惹きつけたのは、球界の酸いも甘いも知る球団社長の一言だったかもしれない。

 現地時間12月11日、ドジャースは今オフのフリーエージェント市場で「最大の目玉」となっていた大谷翔平との契約を正式に発表した。10年総額7億ドル(約1015億円)という球界のみならず、プロスポーツ史でも見ても最高額となる契約は、世間に大きな驚きを提供した。

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 この歴史的な獲得劇に小さくない貢献を果たしたとされるのが、2012年からドジャースで球団社長を務めているスタン・カステン氏だ。では、5度のリーグ優勝を飾るなど黄金期を築いた1990年代のブレーブスで球団社長を務めた仕事人は、いかなるアプローチを大谷にかけたのか。

 14日に本拠地ドジャー・スタジアムで行われた大谷の入団会見後に、MLB公式ネットワーク局『MLB Network』の番組に出演したカステン氏は、極秘裏に行われた面談で大谷と交わした会話を明かした。

「我々が10年前にも彼の契約を試みたことは、今回の交渉中にも伝えた。彼が高校を卒業したタイミングだ。当時の彼は日本のプロ野球でプレーする決断をしたんだけどね。さらに我々は彼がメジャー移籍を決断した6年前にもアプローチをした。だから、私は『君が10年前にここにいたら、我々の人生も全く違っていたかもしれないね』と彼に言ったんだ。そしたら彼は言ったんだ。『同じ間違いをしないでください』とね(笑)」

 冗談を交えながらも、熱心な交渉を行った舞台裏を明かしたカステン氏は、「今回の彼は良い決断をしてくれた。これはドジャースファンだけじゃなく、球界にとっても利益になるはずだ」と強調。世界的な注目を集めるスターがもたらす影響力の大きさを興奮気味に語った。

「彼のように『ユニコーン』と呼ばれる選手は他にいない。そもそも彼はまだ6年しかメジャーリーグにいないんだ。これがこの先10年も続くなら彼は最高のアスリートであると言わざるを得ない。そうした部類の選手の中には、ジョーダンやレブロン(ともにNBAの英雄)も含まれるが、オオタニはそういう選手たちにも引けを取らない。

 ドジャースとオオタニという組み合わせは、太平洋地域での野球人気を確実に拡大させる。さらにヨーロッパや他の地域でもプレーされるようになっている今日の野球界にあって、彼らとの結びつきもより良いものにするはずだ。野球にとって素晴らしい時代が来ると思う」

 百戦錬磨の球団社長をも唸らせる大谷。その底知れぬ影響力は球界にどこまで波及するのか。今後も一挙手一投足に注目だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]