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今年は自由裁量の支出が減少したかもしれないが、人々は利便性への支出は減らしていないようだ。

ウーバー(Uber)とドアダッシュ(DoorDash)は、アルコール、コンビニエンス商品、食料品などデリバリー事業における新垂直市場で第3四半期に成長した。ウーバーの新垂直市場における予約総額は、恒常通貨ベースで前年同期比46%増となった。一方、ドアダッシュは、新垂直市場での事業がレストラン事業よりも急速に成長していると述べた。

景気後退、インフレ、消費者の買い控えの脅威も、ウーバーやドアダッシュの成長を妨げてはいない。実際のところ、これら2つのデリバリーアプリの予約や注文は、この四半期に大幅に増加した。ウーバーのデリバリー部門の予約総額は前年同期比18%増の161億ドル(約2兆4300億円)に達し、ドアダッシュの合計注文金額は同24%増の5億4300万ドル(約820億円)だった。

サイズモアキャピタル(Sizemore Capital)の最高投資責任者チャールズ・ルイス・サイズモア氏は、「これらの企業は、今年小売業界を襲ったインフレという災難の影響を受けなかった」と語る。「デリバリー業界における最大の不安のひとつは、パンデミックのあいだは非常に便利だったが、その後の生活が平常に戻るにつれ、売上や成長は先細りになり、素晴らしい成長のストーリーも消えていくのではないかということだった。だが、それは事実からはほど遠かった」。

米フードデリバリー売上の65%を占めるドアダッシュとキャビア



ドアダッシュは2016年にレストラン以外のデリバリーのテストを開始し、2019年には多くの小売業者にこのサービスを売り込みはじめた。その後、2020年にパンデミックが起こると、同社は数十もの小売業者を自社プラットフォームに取り込むことで、レストラン以外のデリバリービジネスも拡大できた。一方、ウーバーは、2015年から商品の即日配達をテストしてきた。

現在のドアダッシュは、フードデリバリー市場において大きなシェアを占めている。ブルームバーグセカンドメジャー(Bloomberg Second Measure)のデータは、ドアダッシュとその子会社のキャビア(Caviar)が米国で観測されたフードデリバリーの売上のうち65%を占めることを示している。ウーバーイーツ(Uber Eats)は23%、ポストメイツ(Postmates)は2%だ。

ドアダッシュの今四半期の収益は前年同期比27%増の22億ドル(約3320億円)に達した。今期の純損失は7300万ドル(約110億円)で、前年同期の2億9600万ドル(約447億円)から改善された。ウーバーの収益は前年同期比11%増の93億ドル(約1兆4000億円)で、デリバリー事業は今四半期に29億ドル(約4380億円)を記録した。また、純利益も2億2100万ドル(約334億円)に達した。

新市場での成長



マクロ経済の落ち込みにもかかわらず、デリバリー企業は新垂直市場で成長し、投資を行っている。サイズモア氏は、「景気後退のとき、人々は大きな買い物を控える。車や家具をあまり買わなくなり、家のリフォームもあまり行わなくなる」と語る。しかし、人々はアルコールや食品など比較的安価なものにはお金を使うし、宅配アプリはそれらを収益化することができると同氏は付け加えた。

デリバリー企業はここ数カ月、食品以外にもビジネスを拡大してきた。ほんの2カ月前の9月、ドアダッシュはイータリー(Eataly)、エルスーパー(El Super)、フィエスタマート(Fiesta Mart)など8つの新しい食料品パートナーをプラットフォームに引き入れた。これにより、食料品事業だけでも合計注文数量が前年同期に比べて2倍になった。

「すべての支出カテゴリーを見たとき、食品は誰もが支出しなくてはならないカテゴリーのひとつだ」とドアダッシュのCEOであるトニー・シュー氏は決算発表で述べた。「たしかに、デリバリーにお金を費やす必要はないという意見もあるかもしれない。しかし一方で、さらに利便性を求めるというマクロなトレンドもあるということだ」。

一方、ウーバーは、ザ・フレッシュ・マーケット(The Fresh Market)、ハイビー(Hy-Vee)、セーブマート(Save Mart)とのパートナーシップにより、第3四半期に食料品の品揃えを拡充した。クロスプロモーションが効果的に行われたことで、現在ではデリバリー利用者の14%が新しい垂直市場の商品を注文していると同社は明かした。

広告事業も拡大



これらのデリバリー企業は、広告事業も強化してきた。ウーバーはウーバーイーツで決済した後に表示される広告を、カナダ、オーストラリア、フランスなどの国際市場に拡大したと発表した。また、車内でのタブレット広告を米国の新市場に拡大した。

ウーバーのCEOであるダラ・コスロシャヒ氏は、同社の事前原稿に、「当社の広告ビジネスは、収益性を維持したまま拡大し続けている。広告主ベースは前年同期比で70%増の44万5000社以上となり、あらゆる規模の企業を取り込んでいる。第3四半期には、レストラン以外の小売業者がウーバーイーツのアプリで広告を出せる機能『Post-Checkout Ads(決済後広告)』をいくつかの主要な国際市場に拡大した」と記している。

一方で、ドアダッシュは昨年以来リテールメディアでのプレゼンスを強化してきた。昨年10月にはレストランやブランドのパートナーがより多くの顧客にリーチできるよう、一連の広告ソリューションをリリースした。シュー氏は今月初め、CNBCによるインタビューで、広告ビジネスが「極めて急速に成長した」と語った。

「これは非常に収益性の高いビジネスであり、すでにアプリやサービスを活用しているすべての顧客を収益化できる。ドアダッシュとウーバーの場合、アプリ内の操作が多いため、広告の機会も非常に多いことになる」と、ガートナー(Gartner)で小売業を担当するディレクターアナリストのブラッド・ジャシンスキー氏は語った。

ウーバーは第4四半期に、予約総額が365億ドル(約5兆5100億円)から375億ドル(約5兆6600億円)に達すると予測している。一方で、ドアダッシュはマーケットプレイスのGOV(合計注文価格)が170億ドル(約2兆5700億円)から174億ドル(約2兆6300億円)と予測しており、これは前年比で18%から20%の成長となる。

[原文:Delivery apps like Uber and DoorDash are seeing growth in new verticals]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Doordash