滝藤賢一、演じる役によって自在に変貌。1カ月で10kg減量…「伝説を残したいんですよ(笑)」

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1998年、「演劇界の東大」と称される「無名塾」に約1000人の応募者の中から選ばれた5人の合格者のひとりとなった滝藤賢一さん。

約10年間舞台を中心に活動し、2008年に公開された映画『クライマーズ・ハイ』(原田眞人監督)に出演。鬼気迫る演技が話題を集め、2009年には『外事警察』(NHK)でドラマ初レギュラー。

映画『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』(本広克行監督)、映画『ゴールデンスランバー』(中村義洋監督)、『半沢直樹』(TBS系)、『S -最後の警官-』(TBS系)など多くの作品に出演することに。

 

◆主人公のセリフを全部暗記

2010年、滝藤さんは、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』に中国からきた研修生・王(ワン)明才役で出演。独特のイントネーションのカタコトの日本語、リアルすぎる仕草と表情でホンモノの中国人だと思っていた人も多かったという。

同役で2012年に映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』と『踊る大捜査線THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件』(フジテレビ系)にも出演した。

――ワンさんもユニークなキャラで印象的でした。

「あれは何のオーディションかわかんなくて受けていたんです。受かってから、織田(裕二)さん周りの強硬犯係だと言われていたので、『あ、そうなんだ』と思っていたら、中国人研修生のワンさんだったんですよね(笑)」

――いくつかの記事に「滝藤さんがオーディションで本物の中国人の方を蹴落として役をゲットした」と書いてありました。

「そんなことを書いてありました? 確かに中国人の方は来ていましたけど、何で僕が受かったんですかね(笑)。だって、中国人の方のオーディションを横で見ていましたけど、本当におもしろかったですよ」

――でも、滝藤さんのワンさんは本当にインパクトがありました。

「あれで『ついに!今度こそスターだ!』って思いましたけど、あれでも来なかったですね(笑)。『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』(テレビ東京系)で、でんでんさんにお会いしたときに、『滝藤くん、時間がかかったなあ』って言われましたもん(笑)」

――『バイプレイヤーズ〜』では滝藤さんご本人の役で、不倫を撮られてしまって大変なことに…というお話でしたね。

「そう、不倫でね(笑)。あんなことよく考えますよね」

――俳優のお仕事だけで生活ができるようになったのは?

「『外事警察』で初めて連ドラのレギュラーが決まったときに、忙しくなってアルバイトができなくなりましたけど、『ゴールデンスランバー』を撮影したときにはまだアルバイトをしていましたからね」

映画『ゴールデンスランバー』は、野党初となる首相の凱旋パレードが行われている仙台で、ラジコンヘリ爆弾を使った首相暗殺事件が起き、失業保険で生活している青柳雅春(堺雅人)が首相暗殺の濡れ衣を着せられ、逃亡の身となる。

――堺雅人さん演じる青柳が最後に整形して滝藤さんの顔になって出てくるのですが、堺さんのセリフを全部暗記していたそうですね。

「全部暗記しました。だって主役ですものね、あの役は。暇でしたし(笑)。多分、そういう逸話を残したいんです。伝説を残したいんですよ、三國連太郎さんみたいに(笑)」

 

◆ドラマ『半沢直樹』で大ブレイク!

2013年、滝藤さんは大ヒットドラマ『半沢直樹』に出演。滝藤さんが演じたのは、堺雅人さん演じる主人公・半沢直樹の同僚・近藤直弼。

慶応大学出身で同期の中では一番の出世頭だったが、上司に極度のストレスを与え続けられた結果、統合失調症を患い、半年間休職することになる。滝藤さんは、皮膚の下の血液の流れまで感じさせる繊細かつ大胆な演技が話題に。

「原作を読んでいたので、『クライマーズ・ハイ』のときと同じ感じでしたよ。『1番やりたい役だぜ!』って(笑)。

前半5話は、僕はほとんど出てないんですよ。僕が出てくるのは後半だったのですが、放送が始まると、どんどん視聴率を取っていくから、『僕の役は、誰か違う俳優に変わるんじゃないかな?』という恐怖はありましたよ。あの時代は、各局おもしろいドラマがいっぱいありましたね」

――その中でも『半沢直樹』は、社会現象のようになっていて「倍返し」は流行語大賞にも選ばれました。

「僕も道で『あっ、倍返しだ!』って言われていたけど、僕は1回も言ったことがないですからね。『倍返しだ』なんて(笑)」

――『半沢直樹』で滝藤さんは広く知られることになって。

「それはすごかったです。いまだに『半沢の』とか『倍返しの人だ』って言われますからね(笑)」

――本当に来た(売れた)わけですね。

「あのときに、世の中的には無名の僕が『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の『テレフォンショッキング』に出られるわけですから、半沢はもうすさまじい影響力だったんじゃないですか」

――お仕事のオファーもかなり多くなったと思いますが。

「僕は『半沢直樹』までの間にも結構仕事をさせてもらっているんです。『クライマーズ・ハイ』で、この世界の方に知っていただいて、いろんなお話をいただけるようになって」

――台本を何冊も抱えている状態が続いたそうですね。

「台本は常に複数抱えている状態でしたからね。朝ドラとか大河とかは特に台本が何冊もありましたし、山積み状態で。どの現場でも全部出して、覚えながら撮影とかをやっているという状態が何年もありましたね。

作品の間を空けて1本に集中できればと思ったんですけど、なかなかそういうわけにはいかないんですよね。1本1本、じっくりやれる年が1年だけあったんです。だけど、次の年から『あれもやらない』、『これもやらない』ってなって。そうすると来ないんですよ、仕事が。

天狗になっていたわけじゃないんです。俳優・滝藤賢一をプロデュースしないと、この世界では生き残れないと思ったんです。そんなとき、ある俳優さんに『滝藤くんの代わりはいくらでもいるからね』って言われたんですよね。嫌味でも何でもなく、まさにその通りなんですよ。僕がやらなくたってその役をやる俳優はいるんですよ。誰かがやるわけだから。

あと、飽きられるというのが怖かったんですけど、それもまた別の俳優さんに『そんなに滝ちゃんのことを誰も見てねえよ』って言われたんですよ(笑)。その通りなんですよ。みんながみんな僕を見ているわけじゃないですよね。

2人の俳優さんに同じ時期にそういうことを言っていただいて、また馬車馬のように働くようになったんですよね(笑)。そうすると仕事が回るんですよ。だから苦しいけどやるんですよね(笑)」

 

◆1カ月で10キロ減量

2014年、滝藤さんは、『S -最後の警官-』に末期のガンに冒された心療内科の医師・板橋役で出演。自殺サイトで死を願う人がたくさんいることを知り、「ひとりでも多く自殺から救ってあげたい」と思い「神父」というハンドルネームで相談に乗るようになるが、神父が自殺を教唆していたという情報が流れ騒動に…という展開。

――もともとスマートですが、10キロも減量されたそうですね。

「1カ月で10キロ減らしました。その直前に、大根(仁)監督の『リバースエッジ 大川端探偵社』(テレビ東京系)というドラマをやっていて、素人ランナーなのに42.195キロを2時間切って走る男の話だったんですよ(笑)。みんなおもしろいことを考えますよね。

そして、さらに『リバースエッジ〜』の前に撮った映画『るろうに剣心 京都大火編』(大友啓史監督)では“百識”佐渡島方治という役をやったんですけど、この作品では体重を増やしたんです。

それが終わって大根組の『リバースエッジ〜』の衣装合わせに行ったら、みんなが、『あれっ?こんなに太っているんだ』みたいな目で見るんですよ。場が凍るというか、『やべえ』空気でしたね(笑)。

『リバースエッジ〜』の後に『S〜』もあったから1カ月かけて体重を落としました。『リバースエッジ〜』では、隅田川沿いを朝から夕方まで3日間走り続けて、もう足が1歩も前に出なかったですね。

膝の後ろに、石の塊みたいなのがいくつもできちゃって、歩くのも大変でした。年齢的に準備はしっかりしとかないといけないっすね」

――『S〜』では、刺されて倒れたときに、からだが紙のように薄くなっていて驚きました。

「伝説を残したいんですよ。『ゲストで1話しか出ないのに、そこまでやるんだ』って。やっぱりロバート・デ・ニーロの『レイジング・ブル』(マーティン・スコセッシ監督)もそうだし、クリスチャン・ベールが30キロ減量した『マシニスト』(ブラッド・アンダーソン監督)も印象的だったしね。やっぱり俳優ってそのおもしろさがありますよね」

確かな演技力に加え、演じる役柄によって肉体も自在に変貌させる滝藤さん。2014年には、『俺のダンディズム』(テレビ東京系)でテレビドラマ初主演を果たし、広瀬アリスさんとW主演の『探偵が早すぎる』(日本テレビ系)、古舘寛治さんとW主演の『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)、映画『ひみつのなっちゃん。』(田中和次朗監督)、『グレースの履歴』(NHK)など主演作品も多数。次回は、その撮影エピソード&裏話、2023年11月11日(土)に放送されるドラマスペシャル『友情〜平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」〜』も紹介。(津島令子)

ヘアメイク:山本晴奈
スタイリスト:山粼徹