野良猫にかまれた人から新種の細菌が発見される
路上で猫がくつろいでいるのを見るとついなでたくなりますが、かまれたり引っかかれたりすると傷口から雑菌などに感染し重大な結果になることもあります。イギリスで野良猫にかまれた男性が、これまで科学者が見たこともない新種の細菌に感染していた事例が報告されました。
Soft Tissue Infection of Immunocompetent Man with Cat-Derived Globicatella Species - Volume 29, Number 8-August 2023 - Emerging Infectious Diseases journal - CDC
Man Bitten by Stray Cat Contracts Infection Unknown to Science : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/man-bitten-by-stray-cat-contracts-infection-unknown-to-science
この事例は、2020年に48歳の肥満の男性が野良猫に複数回かまれ、それから8時間後に両手に痛みを伴う腫れが発生したというもの。救急外来を受診した男性は、傷口を消毒してから包帯を巻かれ、破傷風ワクチンの接種と抗生物質の処方を受けてから退院しました。
ところが、その後男性の症状は悪化し、24時間後に男性は再び救急外来に訪れました。男性の左小指と右中指は感染症で肥大し、前腕も蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮下の細菌感染症にかかっていたため、傷口の周りの損傷した組織を取り除く外科手術と、3種類の抗生物質の静脈注射が行われました。
幸いにも治療は成功し、男性は術後5日間抗生物質を飲み続けた後に完全に回復しました。患者が完治した一方、男性の傷口から採取されたサンプルから正体不明の細菌が見つかったため、病院の医師らはその解明に追われることになりました。
検査の結果、謎の細菌は新種のレンサ球菌であることが判明しました。レンサ球菌は乳酸菌にも分類される菌で、その多くはのどや皮膚などに特に害もなく住み着いていますが、体内に感染すると髄膜炎や肺炎など体のさまざまな部位での感染症を引き起こす場合もあります。
今回見つかったレンサ球菌をゲノム解析したところ、グロビカテラ(Globicatella)属に属することがわかりましたが、既知ものとはゲノムが約20%違っていたため、新種であると判断されました。関連する菌であるGlobicatella sulfidfaciensは一般的な抗生物質に耐性があるため根絶は困難ですが、幸いなことにこの新種はいくつかの抗生物質によく反応したとのこと。
医師らは報告書に「結論として、猫による噛み傷は人獣共通感染症の一般的な原因です。また、この報告は猫がヒトに病原性を示す可能性のある未発見の細菌の保菌者となることを強調するものです」と記しました。
また、このケースを取り上げた科学系ニュースサイトのScienceAlertは「専門家は、野良猫に襲われたらすぐに石けんか塩で傷口を優しく洗い、速やかに医師の診察を受けるべきだとしています」と述べました。