文武両道を貫き、インターハイに出場した膳所・山田翔悟【写真:荒川祐史】

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陸上インターハイで戦う文武両道の選手たち

 2日に開幕した陸上の全国高校総体(インターハイ)は競技のみならず、勉強にも励みながら戦う文武両道の選手たちもいる。偏差値72、滋賀の進学校・膳所で男子800メートルに出場した山田翔悟(3年)は夏期講習を休んで、インターハイに初参戦。4日に行われた予選で敗退となったものの、塾と部活を両立しながら夢の全国の舞台に立った。すぐさま夏期講習に復帰し、今度は受験勉強の日々が始まる。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 陸上にかけた夏。夏期講習を休んで立ったインターハイ。「受験生」の肩書きを捨て、110秒を駆けた。

 男子800メートル予選5組。8人の集団で4、5番手のインにつけた山田はラスト1周、赤いハチマキを北海道の風になびかせ、ラストスパートをかけた。必死にもがき、前を追う。しかし、1分54秒51で組6着。初めて味わったインターハイは、ほろ苦い味がした。

「近畿のハイレベルな中で勝ち上がってきて(全国の)イメージを作ってはいた。昨日も今日も動きは良かったけど、実力が拮抗した全国の強い人たちが集まっている中で最初、インに入れられてしまったのが痛かったし、苦しかった。さらにハイレベルでした」

 エントリータイムは全選手で6位。実力通りの結果が出せれば、狙っていた入賞も夢ではなかったが、これも陸上の厳しさだ。

 膳所は1898年に創立された県立校。政財界や学術界、スポーツ界など多岐に著名人を輩出し、偏差値72とも言われる全国有数の進学校でもある。「中学時代に合格圏内だったので、陸上は関係なく、もっと勉強を頑張ることができて、さらに部活もやれる環境だった」との理由で、山田は門を叩いた。

大会後はすぐ夏期講習へ 勉強量は「1日12時間と言われ…」

 自主自律と文武両道を標榜する学校で、陸上部の練習は週5日。3年生の今は午後6時に部活を終えると、塾に向かう。クタクタの体にムチを打って、家に帰った後も寝る前にさらに復習。「最近は夏期講習があって、インターハイまでは部活に集中していたけど、余裕があれば塾に行きます」

 そんな環境ながら成績は学年360人で30〜40位につける上位クラス。得意科目は数学。難関国立大を志す。

「最初はすごく大変だったけど、2年生くらいにはもう普通になってきました(笑)。勉強で行き詰まると部活に走ったり、部活で成績が良くないと勉強やろうかみたいな」。勉強と部活を互いの支えにしながら、自分なりのカタチで文武両道を貫いた。

 膳所のグラウンドは1周350メートルの土。陸上強豪校と比べると、決して恵まれた環境とは言えないが、オンとオフの切り替えや練習の創意工夫、さらに互いにサポートし合うチーム力で才能を伸ばしてきた。

「陸上は自分との闘い。自分が一つの目標のために、チームのサポートもありながら頑張って。中距離は短距離に比べると練習がモノを言う。タイムに結果として出てくる」。そんな財産をもってスパイクを脱ぎ、今度はペンを持つ。

 滋賀に戻ると1、2日休み、すぐ夏期講習に没頭。「塾からは(必要な勉強量は)1日12時間と言われていますが、さすがにちょっと……(笑)。でも、陸上はキツイなかで絞り出す競技なので、受験勉強の時もそれを思い出しながら、ちょっとずつ勉強量も増やしていければ」と言った。

 陸上の夏の終わりは、勉強の夏の始まりである。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)