日本でも、折りたたみスマホのバリエーションが増えてきた。写真は左からサムスンのGalaxy Z Fold4(ドコモ版24万9700円)、モトローラのmotorola razr 40 Ultra(モトローラ直販15万5800円)、グーグルのGoogle Pixel Fold(グーグル直販25万3000円)(筆者撮影)

2019年に登場したサムスン電子の「Galaxy Fold」を皮切りに、フォルダブル(折りたたみ)スマホのラインナップが徐々に拡大している。特に、2023年は、日本で発売される折りたたみスマホのバリエーションが豊富だ。7月下旬には、グーグルがPixel初の折りたたみモデルとなる「Google Pixel Fold」を発売予定。モトローラも、ガラケーのように縦に折れる「motorola razr 40 Ultra」を8月下旬以降に発売予定だ。

コンパクトさと大画面を両立

また、折りたたみスマホに先行的に取り組み、一日の長があるサムスン電子も、7月26日に韓国・ソウルで開催されたイベントで横折り型の「Galaxy Z Fold5」と、縦折り型の「Galaxy Z Flip5」をまとめて発表した。日本での展開予定は明かされていないが、同シリーズは日本でも販売されてきた実績があるため、新モデル2機種も近く発売する可能性があると見ていいだろう。ディスプレーをそのまま折りたためるインパクトが先行している折りたたみスマホだが、コンパクトさと大画面を両立できるスタイルは実用性の高さに直結する。

特に横折り型は、開くとタブレット大のサイズになるため、動画や電子書籍の見やすさは一般的なスマホを大きく上回る。PC向けのサイトなど、スマホだと見づらかったコンテンツも扱いやすい。ただ、単に持ち運びやすく、画面が大きいだけが折りたたみスマホのメリットではない。その特徴を理解すれば、活躍の幅がさらに広がるはずだ。そのテクニックを紹介していこう。

開いたときは大画面、閉じるとコンパクトな折りたたみスマホだが、この2つの状態だけがすべてではない。開くと閉じるの中間とも言える、半開きの形で使える端末も増えている。ディスプレーの開閉を支えるヒンジ部を途中で固定できるためだ。先に挙げたサムスン電子、グーグル、モトローラのスマホは、いずれもこの半開き状態に対応している。まっ平で折り曲げられないスマホとの大きな差は、ここにあると言っても過言ではない。

“半開き”も便利な折りたたみスマホ

半開きにできることで、ノートパソコンのように、机やテーブルの上に置いたまま利用できる。この形態の使用例として真っ先に思い浮かぶのが、撮影だ。例えば筆者は、発表会のプレゼンを記録するため、Galaxy Z Fold4を半開きのまま机に置き、シャッターを切ることがある。通常のスマホでも、立てかけるためのスタンドがあればできることだが、そうしたアイテムを持ち運ぶ必要がないのは便利だ。

また、置きっぱなしで撮影することで、手ブレも発生しなくなる。夜景モードのように、暗所で複数枚の写真を合成するような機能を使う際に、手ブレが起こらないことは重要。机の上に置いたまま、タイムラプスで時間をギュッと凝縮した動画を撮ることも可能だ。複数人で記念撮影をしたい場合にも、折りたたみスマホだと撮影がしやすい。“簡単に置ける”ことで、撮影の幅が広がるというわけだ。


開閉の途中で止められるヒンジを備えた端末が増えている。写真のように、置いたまま撮影できて便利だ。写真は筆者が記者会見で「Galaxy Z Fold4」を使っているときの様子(筆者撮影)

外出先で、急なビデオ会議に参加したいときも、テーブルの上に置ける折りたたみスマホが活躍するシーンだ。ノートパソコンやタブレットを持っていない場合に役に立つ。折りたたみといってもスマホはスマホ。モバイルデータ通信がオプション扱いのパソコンやタブレットと違い、折りたたみスマホでは通信がしやすいのもメリットと言えるだろう。

ほかにも、例えばGoogle Pixel Foldの場合、同シリーズで定評のある文字起こし対応のレコーダーを、半開きのまま使うことが可能。相手の話していることが、目の前の画面に表示される。相手が外国語を話しているような場合には、内容をつかみやすくなって便利だ。アプリの中には、半開きの状態を検知し、画面を上下に分割するものもある。ビデオ会議アプリやカメラなどが、こうした仕様を備えていることが多い。Google Pixel Foldのレコーダーもそうだ。このようなスタイルで使えるのは、折りたたみスマホの利点と言えるだろう。

2つのアプリを同時表示しやすい

開くとコンパクトなタブレット大のサイズになる横開きの折りたたみスマホは、2つ(以上)のアプリを同時に開いたときに、操作がしやすい。それもそのはず、一般的なスマホに近い、折りたたんだときのサイズのちょうど2倍になるからだ。1つの画面としてアプリを大きく表示するもよし、画面2つぶんとしてアプリを2つ並べるもよしと、使い方の幅が広いのは折りたたみスマホならではだ。

Google Pixel Foldは閉じたときの画面サイズが5.8インチなのに対し、開いたときには7.6インチまで広がる。Galaxy Z Fold4も、閉じたときは6.2インチなのに対し、開くと7.6インチになる。小型のタブレットとして人気の高いiPad miniは、ホームボタンのない第6世代が8.3インチ。ホームボタンを搭載していた第5世代までは、7.9インチだった。横折りの折りたたみスマホはそれより一回り小さいが、スマホ以上に広々と画面を使えるのは確かだ。


画面を分割しても、1つひとつのサイズは一般的なスマホに近く、使い勝手がいい。ブラウザーで表示した場所を、マップで検索するといったことも簡単にできる(筆者撮影)

2つのアプリを同時に使えると、さまざまな作業がしやすくなる。例えば、メールを見ながらスケジュールをカレンダーアプリに転記したり、スケジュールをチェックしながら空いている時間を返信したりといったことが可能になる。アプリを切り替えながらでも同じことはできるが、記憶に頼らなければならず、間違いも起こりやすい。こうした失敗を防ぎやすくなるのは、折りたたみスマホの利点だ。

また、同じブラウザーを2つ開き、情報を見比べることもできる。ネットショッピングの際に価格を比較するような場合に便利だ。アプリによってはドラッグ&ドロップにも対応しているため、画像などのファイルを移動するような使い方をするときにも、画面分割は役に立つ。変わった使い方として、筆者はPayPayとdポイントのように、決済アプリとポイントアプリを同時に立ち上げるようにしている。Galaxy Z Fold4の場合、あらかじめ2つのアプリのペアを作っておき、同時に開くことが可能。これを使い、ポイントと決済両方のバーコードをまとめて表示させている。

アプリによっては、タブレット用のユーザーインターフェースを備えているものも。LINEは、大画面になると自動的に2カラム表示になる。左にトークの一覧、右にタップしたトーク中身が表示される。Gmailも同様で、折りたたみスマホを開き、横長の状態にすると画面が2カラム表示に切り替わる。Google Pixel Foldの場合、開いたときの画面の比率が横長のため(Galaxy Z Foldシリーズはわずかに縦長)、自動的に2カラム表示になって便利。アプリの画面を行ったり来たりせず、スムーズに使うことができる。

2つの画面を同時に使うアイデアも

閉じたとき用の画面と開いたとき用の画面、2つのディスプレーを備えているのも、折りたたみスマホの特徴だ。これは、縦折り、横折りともに同じ。この2つを同時に使うことで、今までのスマホではできなかった、新しい使い方が可能になる。2画面同時利用ができるのも、折りたたみスマホならではの特徴というわけだ。

例えばGalaxy Z Fold4の場合、開いた状態でカメラを起動し、画面上部のボタンで「カバー画面プレビュー」をオンにすると、同じ映像が内側と外側の両方に表示される。これによって、カメラで撮られている人にも、プレビュー画面の映像を見せることができる。被写体側が、どのように写っているかを確認しながら自主的にポーズを取ったり、位置を調整したりできるのがこの機能のメリット。撮影の際の指示を減らせて、作業がスムーズになる。

同様の機能は、縦折り型のmotorola razr 40 Ultraにも採用されている。同モデルは、フリップタイプで最大級となる3.6インチのサブディスプレーを搭載している。このサブディスプレーを使い、撮影時にプレビュー画像を映し出すことが可能だ。また、単なるプレビューだけでなく、相手の興味を引いたり、にこっと笑わせるために“キャラクターの顔”をサブディスプレー側に表示することができる。こちらも、2つの画面を同時に使う好例と言えるだろう。


motorola razr 40 Ultraは、撮影中に“顔”を表示して被写体の興味を引くことが可能。子どもを撮るようなときに便利だ(筆者撮影)

撮影以外にも、2画面同時利用は広がりそうだ。現時点ではまだ実装されていないが、グーグルのGoogle Pixel Foldは、翻訳アプリが2画面同時表示に対応する予定。相手に外側のディスプレーが見えるように持ち、話しかけると、設定した言語がそこに表示される。逆に相手の話した言語が翻訳され、自分のほうを向いているメインのディスプレーにもそれが表示される。

近いことは自分と相手がそれぞれのスマホで翻訳アプリを起動すればできるが、Google Pixel Foldなら1台で済む。相手に言語設定などをしてもらう必要がなく、手軽に使えるはずだ。このように、2つのディスプレーを備えているからこそ、できることもある。撮影や翻訳など、まだまだできることは限られているものの、アイデア次第で活用の幅が広がりそうだ。一般的なスマホより価格が高い折りたたみスマホだが、折りたためるからこそ実現した機能もある。端末のバリエーションが増えた今、次の機種変更候補として検討してみる価値はありそうだ。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)