(写真:Kazpon/PIXTA)

会議でなかなかいいアイデアが出ない、意見がまとまらない、時間内に終わらない……。それは、会議やプレゼンテーションの種類を意識せず、どれも同様に行っているからかもしれません。世界の名だたるクリエイターがこぞって絶賛するプレゼンの名手であるダン・ローム氏の著書『THE POP-UP PITCH 最もシンプルな心をつかむプレゼン』より、目的に応じた「5種類の会議」について解説します。

プレゼンテーションを行う目的を明確にする

そもそも、人はなぜ会議(プレゼンテーション)をするのか?

この問いが持つ意味は大きい。というのは、会議を通じて何が得たいかを理解したうえで会議に臨めば、あなた自身だけでなく会議に出席する全員にとって、会議がより充実したものになるからだ。

プレゼンテーションを行う目的が明確になればなるほど、あなたは自信を持ってプレゼンを行うようになり、出席者たちも安心してそれに耳を傾けるようになるのだ。

会議にはさまざまな種類があり、世間では1日に100万もの会議が開かれている。情報を伝える会議、意思決定を行う委員会、問題解決を目的としたブレーンストーミング、新しいアイデアのプレゼンテーション、売り込み……。

どれも会議ではあるが、目的はそれぞれ異なり、会議が変われば、方針、進め方、ゴール、議題も変わる。とはいえ、どの会議にも共通し、かつ私が重視していることが1つある。それは、会議には必ず説得の要素が含まれるという点だ。

説得は、それを聞く人たちを変えたくて行うのではない。自分が提案するやり方や成果は、聞いている人たちにとってもメリットがあると思っているから行う。

それではここで、本稿における「説得」の意味をはっきりさせておこう。私の言う「説得」は、相手の意見に挑むことでも、目標を強制することでも、巧みに人を操ることでもない。また、雄弁であるかどうかという話でもない。

いまあげたことはどれも、「押しつけ型」のアプローチだ。そういうアプローチにも効果はあるが、変化を定着させたいならポジティブな説得を目指したほうがいい。

相手を追い詰めてはいけない

ポジティブな説得は、聞き手の注意を引きつけるばかりか、説得の中身が聞き手のためになることだと彼らに理解させ、そう信じさせることができるものだ。

世界的ロングセラー『人を動かす』の著者で自己啓発の元祖であるデール・カーネギーが見出した自分の考えに相手を引き寄せるアプローチは、ウィン・ウィンを求めるやり方の典型で、この種の説得は、された側の心に強く刻まれる。

相手を追い詰めて、何かを要求するようなやり方はいただけない。そうではなく、手を差し伸べる気持ちで彼らのためになるアイデアを公開し、向こうから歩み寄ってくるのを静かに待つ。このような形で説得すれば、長い目でみたときに、どちらの側にも望ましい結果がもたらされる。

会議の種類はいくつもあるので、それぞれの特徴と重要な要素がわかるように、下の図にシンプルにまとめた。

この分類に従って会議を5つに分けると、目的に応じてプランを立て、いちばん大事なことを視覚化し、いちばん効果的に伝わるストーリーを構築する道筋が定まりやすくなる。

目的に応じた5種類の会議

図を見ればわかるように、あなたが主催もしくは出席できる会議は5種類だけだ。会議で成し遂げたいことが何であれ、それに適した会議はこの5つのなかに必ずある。


『THE POP-UP PITCH 最もシンプルな心をつかむプレゼン』P.46より

➀「情報を伝える会議」でいちばん大事なのは「内容」

これはもっとも基本的なタイプの会議で、もっとも頻繁に開かれる。この会議の目的は、出席者に新たな情報を周知することにある。出席者に何を期待しているかを伝え、期待どおりの行動をとってもらうのだ。

それには、「内容の明確さが何よりも重要」になる。そこでポジティブな説得という形をとれば、伝える新情報が重要なもので、その情報に即した行動をとらねばならない理由が伝わりやすくなる。この種の会議の理想的な所要時間は15〜30分だ。

出席者全員が決断の当事者

➁「意思決定を行う会議」でいちばん大事なのは「成果」

これは、主催者と出席者がその場で決めなければならないことがあるときに開かれる会議だ。出席者全員に発言する機会があり、決断の当事者であるという自覚を各人が多少なりとも抱くのが理想的だ。

だが何よりも大切なのは、「決定されたことは何で、次に何が起こり、その責任者は誰かを、全員が正確に把握すること」だ。ポジティブな説得という形で会議を進行すれば、決断しなければならないことを設定し、合意に向けて意思決定のプロセスを進めやすくなる。選択肢の吟味や議論をどの程度求めるかにもよるが、この種の会議の理想的な所要時間は40〜55分だ。

➂「問題解決のための会議」でいちばん大事なのは「過程」

これは、出席者全員で知恵を絞って問題の対処にあたる必要があるときに開く会議だ。この種の会議の進行役は、問題を解決するという同意を全員から得たうえで、全員に発言する機会を与え、議論への積極的な参加を促し、その場で選ばれた解決策の実行を各自に決意させる必要がある。よって、この種の会議では「過程が何よりも大事」になる。

ポジティブな説得という形をとれば、解決が必要な問題を要約して伝え、その後解決策として決まったことを(おそらくはピッチにまとめて)発表するという流れが生まれやすくなる。これはもっとも時間を要するタイプの会議なので、60〜90分は予定しておいたほうがいい。

➃「アイデアを発表するための会議」でいちばん大事なのは「理解」

これは、新しいアイデアを発表したり、視点を変えたものの見方を提案したりするときに開く会議だ。この種の会議では、「理解が何よりも大事」になる。

発表を聞く人は、発表を通じて得た知識が自分にどう関係するかを深く理解すればするほど、その知識を自分で試したくなるからだ。素晴らしい授業を受けたときの感覚に似ていると思ったなら、まさにそのとおりだ。

統率、指導、教育といった呼び方もできるが、いずれにせよ、この種の会議ではポジティブな説得がカギを握るので、ポップアップピッチのスキルが非常に役に立つ。この「参加者を教育するピッチを発表する」会議の理想的な所要時間は、30〜45分だ。

出席者に自らアクションを起こさせる

➄「売り込むための会議」でいちばん大事なのは「アクション」を起こさせること


これも出席者に新たな情報を与える会議の一種だが、こちらでは、あなたの提案に応じて「出席した人たちに自らアクションを起こさせることが何よりも重要」になる。

ポップアップピッチが誕生したのは、この種の会議の準備をしたときのことだった。これもアイデアを発表するプレゼンテーションではあるが、ほかのプレゼンとの大きな違いが1つある。それは、プレゼンを聞いた人たちに、自らの行動を変えたいと思わせるまでが仕事になるという点だ。

つまり、聞き手にあなたの提案を実行することを自発的に選択させるとともに、そう決めてよかったと思わせることが求められるのだ。ポップアップピッチを活用すると、驚くほど短時間でそれを成し遂げることができる。

会議の種類は以上の5つとなる。会議を呼びかける前にその目的を鑑みて、進行役のあなたと出席する人たちにとって最善となるのはどの種類の会議かと考えることは、いいウォーミングアップになる。

これを行うだけでも、あなたが主催する会議の効率が高まり、ほかの出席者から感謝されることは間違いない。

(ダン・ローム : 著作家)