どうやって上手に仕事を割り振る?(写真:polkadot / PIXTA)

どうやって部下に仕事を振ったらいいのかわからない。そんな悩みを抱える人もいるのではないでしょうか。国内最大手のマーケティング会社で統括ディレクターを務める山本渉氏の新著『任せるコツ』を一部抜粋・再構成してお届けします。

多くの会社において大きな悩みの一つは「社員が定着しない」です。意図的にメンバーをつぶそうとする人はいないですが、それでも健康問題が起きてしまう理由の一つが、「自分ができていたから大丈夫だろう」という油断です。

組織にはさまざまな人がいる

プレーヤーとして優秀だったマネージャーほど陥ってしまう思考です。

組織には、さまざまな人がいます。キャパシティがある人/ない人、仕事のスピードが速い人/遅い人、同じ仕事でもプレッシャーを感じる人/感じない人など、それぞれです。

また、仕事の特性によって有利となる経験値、年齢、性別、能力というものがあります。

問題なく仕事を遂行できるかの基準は、マネージャー自身でもなければ、平均的なメンバーでもなく、もっともそのタスクが苦手な人に合わせるべきです。

それに加えて、依頼時に稼働状況、余力、意欲の確認が必要です。

「担当プロジェクトが重なっていますが、このスケジュールでできますか?」

「サポートが必要であれば、チーム編成を手伝います」

このように、なるべく無理をさせない工夫と、負担軽減の配慮を忘れないようにしましょう。

任せるときに、良かれと思って期待をかけすぎてしまうこともあります。
「ピグマリオンの法則」でうたわれているように、期待されていると良い成果を出すのも事実ですが、過剰な期待はプレッシャーになってしまいます。

プレッシャーが大きすぎると感じたら、「失敗しても大丈夫」「つらくなったらフォローしますよ」といった言葉で和らげましょう。

Z世代が会社に求めていること

多くの経営者やマネージャーが、いわゆるZ世代と呼ばれる若い世代の育成に悩んでいます。今までと同じように育成してるのに思ったように動かない、何を望んでいるのかわからない、といった声をよく聞きます。

“古代の壁画に「最近の若いものは」という愚痴が書かれていた”という話があるくらい、普遍的な悩みです。

Z世代が会社や仕事に求めることは昔とは変わっています。

昇給や出世へのガツガツとした意欲はさほどなく、代わりに成長欲求が強まり、パーパス(存在意義)を重視する傾向があります。

そのため、面談やミーティングの際に、仕事の意義や目的を伝えておくことが重要です。「なぜその仕事をするのか」「どのように社会に役立つのか」というパーパス重視の思考に応えて依頼することが大事です。

ほかにも、「話をしっかり聞いてもらいたい」「頻繁な承認を求める」「多様性の尊重」「上司のやり方を押し付けられたくない」という傾向が見られます。

その場合にどうすればいいかなどは、本書に詳しく書いておりますのでご一読ください。

”君は舟なり、庶民は水なり”

これは、中国の古典にある言葉です。“君主は舟で、人民は水のようなものだ”ということです。

水によって舟は浮くことも転覆することもある。その地位に胡座をかいて威張るのではなく、人民を愛して大切に扱うべき、と示唆しています。

これは、ビジネスで上司と部下の関係にも当てはまります。

「マネージャーはメンバーよりも偉いわけではなく、役割が違うだけ」であり、自分の下で支えるだけの存在と軽んずると、転覆してしまう可能性もあります。

組織内にも多様性のある価値観を

かつては圧倒的なパワーを持った一人のリーダーが強引に引っ張るスタイルが主流でした。「支配型リーダーシップ」と呼ばれるものです。

しかし、ハラスメントやメンバーのメンタルヘルスなど、多くの問題が顕在化してきました。トップの意向に沿わない人はこぼれ落ちていく、というデメリットもありました。

これからの時代は、奉仕型といわれる「サーバントリーダーシップ」「インクルーシブリーダーシップ」が求められています。

「サーバントリーダーシップ」は、メンバーを主役と捉えて、個々の力を強化しながら組織の成果を最大化していくタイプです。

「インクルーシブリーダーシップ」とは、一人ひとりの自主性を重んじて、点ではなく面で組織が拡大成長していくのが特徴で、多くの企業が取り組んでいるダイバーシティ&インクルージョンに適したリーダータイプです。


多様性のある組織に理想とされているリーダーシップ像で、トップダウンで一元管理をしたり、こまかく指示を出したりするのではなく、多彩な人材を多様な価値観に則して任せていくのが特徴です。

最後に。これからの時代、答えはAIが教えてくれるようになっていくでしょう。答えよりも気がつかない課題を見つけ出すことが、ビジネスにおいて重要になってきます。

それには、組織内に多様性のある価値観があることが不可欠です。特性もバックグラウンドも異なるダイバーシティに富んだ人材が、多様な働き方をすることで組織の同質化を防ぐことが、これからの時代の組織に重要となるでしょう。

(山本 渉 : マーケティング会社・統括ディレクター)