生成AIがOfficeソフトに搭載されるMicrosoft 365 Copilot。米国での提供価格は月30ドルと強気だ(写真:マイクロソフト提供)

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日々の業務が激変するのでは──。多くのビジネスパーソンが熱い期待を寄せているのが、米マイクロソフトが3月に発表した「Microsoft 365 Copilot」だ。

マイクロソフトのワード、エクセル、パワーポイントなどは仕事に必須だが、豊富な機能を覚えるのに一苦労。望ましいクオリティーに到達するまでに膨大な手作業が発生するなど、悩み多きツールでもある。

これに、GPT-4をベースとした大規模言語モデル(LLM)が搭載される。対象となるのは、ワード、エクセル、アウトルック、チームズなどの主要アプリ。Microsoft Graph、365アプリ内にあるデータと組み合わせて使うことができる。

7月18日(米国時間)には、懸案の価格も発表された。当初は、大企業向けのMicrosoft 365 E3(月36ドル)、 E5(同57ドル)、中小企業向けの Business Standard(同12.50ドル)、Business Premium(同22ドル)の4つのプランの利用者向けに、追加サービスとして月30ドルで提供される。あくまで米国での価格だが、日本市場向けもこれと近い価格設定で始まりそうだ。

日本円にして、追加で4000円強。かなり強気の価格設定だが、実際どんなことが可能なのか。その使い方を一足先に紹介しよう。

ソフトに搭載されたAI(人工知能)が真価を発揮するのは、議事録や財務資料など、参照できるデータがすでにある場合だ。社内クラウド上などにそうした資料を蓄積している企業ほど価値を実感しやすいだろう。AIの動作はどのアプリも基本的に同じで、問いかけに応じて指定されたデータを参照し、作業を代行してくれる。

例えばエクセルの場合。画面右に表示されるチャット画面でAIに指示をすることで、膨大なデータから特徴を発見する、データから見やすい図表を作るといった、手間のかかる作業を、ものの数十秒でやってくれる。「エクセルは機能の一部しか使っていない人が圧倒的多数。そんな機能を自然言語で呼び出せるようになったのは画期的」(日本マイクロソフト)。


指示は具体的に

指示は、できるだけ具体的にするのが肝心だ。裏で動いているのはGPTなので、「あなたは◯◯です」といった回答精度を上げる質問のコツはそのまま適用可能。普通の対話でも十分意図をくんでくれる。こちらが次に依頼しそうなことを選択肢として示すサービス精神もある。

パワポはどうか。すでにある文書ファイルを基に「短い発表資料を作って」とざっくりお願いするだけでも、デザイン性の高いスライドを作ってくれる。自動作成されたスライドを見て、「画像を増やして」などと指示をすれば、AIがスライドを改良してくれる。


ワードではサマリーを自動生成

ワードでは、例えば議事録の文書ファイルをチャットで提示すると、自動的に要点を整理したり、提案書などの形式でまとめたりしてくれる。ビデオ会議ツールのチームズでは、途中参加者でも議論の流れが追えるよう、議事のサマリーを自動作成してくれる。

7月時点でリリース時期や料金体系を含めた詳細は未定。ただ、すでに「英語版に加え日本語版も結構高精度なものができている。年内とは断言できないが、遠くないうちにリリースできるのでは」(同社)。すでにマイクロソフトが選んだ約600社(日本企業を含む)は5月から有償のパイロット版を使っている。

マイクロソフトによれば、一般への提供時期は今後数カ月内に発表するという。月30ドルという価格は妥当なのか。じきにその答えがわかる。

(印南 志帆 : 東洋経済 記者)