旅客機初「折りたたみ翼」の仕組みとは ボーイング新型機「777X」珍機構に肉薄! 主翼シャッキーン化のワケ
ボーイングの新型旅客機「777X」は民間旅客機として初めて、主翼の端が折れ曲がる機構が採用されています。このメカニズムと折れ曲がる様子を、“間近”で見ることができました。
そもそも「折りたたみ主翼」はなぜ?
米国の航空機メーカー、ボーイングが2025年の納入を目指し開発中の新型旅客機「777X」シリーズでは、民間旅客機として初めての機構が採用されています。主翼の端が折れ曲がるようになっているのです。このメカニズムと折れ曲がる様子を、今回“間近”で見ることができました。
滑走路に入る直前に翼端を伸ばした777X(島田 駿撮影)。
この主翼の端を折り曲げるようにする機構は、空母に載せる戦闘機などでは一般的ですが、777Xにこの機構が採用されている理由は、それらとは少し異なります。
航空機は主翼の幅が長いほど航続性能は良くなりますが、駐機場で隣の航空機と接触してしまい、乗り入れることができる空港は限られてしまいます。また、誘導路の通過時にある全幅の制限にも引っかかってしまいます。
「777X」は、日本の航空会社でも多く導入されている旅客機「ボーイング777」シリーズの最新派生型のひとつに位置づけられますが、従来型でもっとも大型な777-300ERの全幅は64.8mで、誘導路を通る航空機の全幅を65mに制限した空港でも乗り入れることができます。
しかし「777X」は全幅が71.8mで、既存機より大型化が図られています。つまり、乗り入れることができない空港やターミナルが出てきてしまうのです。そのため、左右の翼端を折りたたむことで、全幅を64.7mに縮めるようにしました。こうすれば、777-300ERなどの既存の777シリースを使っている航空会社が機材更新で777Xを採用できます。
2023年6月に開催されたパリ航空ショーでは、航空機部品の主要サプライヤーとして知られる独リープヘルにより、777Xの翼端部分が実際に展示されていました。実際にこの機構を間近で見ると、仕組みなどがわかってきました。
「777X」の折れ曲がる仕組み&折りたたみの所要時間
777Xの翼端と主翼の接続部分を見ると、折り畳んだ翼端側の下部には穴が開いた4つの突き出しが伸びています。穴は、翼端を水平にした際、固定するためのロックを通すものでしょう。
長さ3mを超える折り畳まった翼端は、約20秒で起き上がったり水平になったりを繰り返します。水平の時は目にとめる人はあまりいませんが、垂直になると遠くからでも目につきます。
会場にいた社員によると、リープヘルはエアバスへの最も大きな部品供給会社だそう。主翼の上にはアクチュエーターなどの作動用の部品が置かれ配置図も描かれていたほか、「世界最大の旅客機」とも呼ばれるエアバスA380の巨大な前脚も展示されていました。
実機の胴体に描かれた777Xを採用した航空会社(島田 駿撮影)。
777Xは実際に同航空ショーで展示飛行も行いましたが、離陸の際、翼端は誘導路を進む際はずっと垂直のままで、滑走路に入る直前、水平に倒されました。
翼端を伸ばして飛行する様は、A380や「ジャンボジェット」と呼ばれたボーイング747のように2階建ての客室ではないので、巨大さゆえの威圧感こそないものの、全長も全幅も明らかに「長い」と感じさせるものでした。A380と747が巨人機の座から降りようとしている時代、旋回と上昇効果を繰り返す777Xは“新時代の超大型機の主役”ということをアピールしているようでした。
777XはANA(全日空)も導入を決めており、いずれは日本でも翼端が折り畳まれたり水平になったりする姿を日常的に見ることができるでしょう。旅客機の翼の折りたたみ機構は珍しいだけに、路線投入後の日本では、この独特な機構もファンから注目を浴びると思います。