簡単に作ることのできる、旬の野菜を使った「腎臓スープ」。負担をかけずに腎臓を鍛えてくれるといいます(画像:『超!解毒スープ おつかれ気味の腎臓がよみがえる』)

さまざまな健康状況に影響する、腎臓。慢性腎臓病は自覚症状が少ないうえに、一度罹ってしまうと完治できないという恐ろしい病気でもあります。そんな腎臓を普段から食べるものでケアできたらいいですよね。

自身も20代で腎臓を壊し、そこから徹底して腎臓ケアを研究した鍼灸師の大野沙織氏がとっておきのレシピを紹介します。大野氏の著書『超!解毒スープ おつかれ気味の腎臓がよみがえる』(ワニブックス)より一部抜粋・編集のうえ、お届けします。

いちばん簡単な腎臓ケアレシピ「解毒スープ」

腎臓は、東洋医学で“命そのもの”とされています。体内に2つあることからもその存在の大切さがわかるはずです。

そんな腎臓を、私は20代で壊してしまい、現在も1つしか機能していません。思えばずっと腰痛があったのに、腎臓が悪いとは気づかず、病院でも異常なしという診断。起き上がることもできなくなってようやく「腎盂腎炎(じんうじんえん)」とわかりました。

すぐにできる治療もなくて、手術までの半年間、つらさに耐えることもできず、調べてみて、出合ったのが鍼灸でした。それまでいくら説明してもわかってもらえなかった苦しみを、脈を診るだけでわかってもらえるなんて!

そこからまっしぐらに、鍼灸の道を進み始めました。

そんなわけで、鍼灸の勉強をしている間も、現在に至るまで、自分の弱点である腎臓を強くする方法を調べまくり、腎臓のセルフケアを確立しました。

そして腎臓ケアのための情報をYouTubeにアップし始め、スープのレシピを紹介したところ、思った以上に嬉しい反響がありました。腎臓が悪い人はもちろんのこと、さまざまな悩みが解決したというコメントが届き、多くの人と交流できるようになりました。

私が腎臓や健康のためにスープを作るのは「面倒くさいから」。

腎臓が弱っている人はつかれやすいので、毎日おかずを何品も作ったり献立を考えたりするのは、身体的にも気持ち的にも負担です。スープなら作るのも食べるのも楽で、効率的に栄養が摂れます。「何を食べればいいかわからなくなっていたけれど、スープのおかげで食事のストレスがなくなった」という声を聞くと、本当によかったと思います。

私自身も現在は週に1、2回のスープ食、本でも紹介したマッサージを毎日することでつかれを感じることなく元気です。腎臓は誰でも60代になると機能が半分になるといわれているので、大事に労わってあげてください。

私たちの体は食べたもので作られます。腎臓の数値が気になる人、不調を抱えている人、なんとなく体力がない人、もっと元気になりたい人も、スープを食べたり、セルフケアを取り入れると好転していきます。体の中がきれいになると、美肌や痩せたりして若々しくいられるのも嬉しいですね。

本のレシピを基本に、アレンジしても問題なし。気軽においしく、楽しく、ストレスなく自由に、スープを生活に取り入れてみてください。

まずは基本の「腎臓スープ」を作ろう!

解毒スープの中でも、まずは基本の「腎臓スープ」を作ってみましょう。野菜たっぷりで、自然な甘みがおいしいスープです。

具材がすべてなくても大丈夫だし、好きな野菜をプラスしてもOK。このスープと少しのごはん(満足感があるので、たくさんなくても大満足!と感じるはず)で、一食となります。小麦粉は腎臓や胃腸に負担をかけるので、麺類などを入れるのは控えてください。ほかにおかずをたくさん食べるのは、栄養的に過剰かもしれません。

このスープとごはんの食事を週に1、2回取り入れるだけで体の調子がぐんぐん変わっていくのがわかるはず!

私がスープに使っているのは、このスープに限らずどこのスーパーでも買えるものばかり。「これでいいの!?」と拍子抜けするかもしれません。また、下処理などの手間もほぼいりません。

ただ、毎日同じものを作って食べると、同じ食材に腸が慣れて刺激にならないのと、摂れる栄養が偏ってしまうので、入れる野菜を変えたり、毎日の場合は夕飯だけにするなど頻度を工夫してください。どの野菜も栄養価が高い実力派なので、まずはこれらを買いそろえて作ってみましょう!


(出所:『超!解毒スープ おつかれ気味の腎臓がよみがえる』)

1 ポイントは、皮。

皮のまわりは栄養価が高く、味もおいしいのでできるだけ残したいです。たとえば、にんじんは、出荷前の洗浄ですでに皮が除かれている状態になっており、むかなくてもおいしく食べられます。

もちろん汚れや残留農薬は気になります。私は水で流しながらたわしでごしごしとこすってきれいにします。

あとは、食感が残るよう大きめにしたり、とろけるくらいの小ささにしたりとお好みで切ってください。特にかぼちゃは小さめに切って、煮崩してスープの「ルー」のように使います。


(出所:『超!解毒スープ おつかれ気味の腎臓がよみがえる』)

2 野菜はさっと炒めるのが理想です。

理由は2つ。1つはβカロテンなど、油と一緒に使うことで吸収率が上がる栄養素があるからです。もう1つは、コクが出ておいしいから! 

油は酸化しにくいものがいいので、基本的にオリーブオイルを使っています。ココナッツオイルの次に酸化しにくい油で、どこのスーパーでも手に入るのが嬉しいですね。最近は酸素に触れにくいボトルのものも登場していて、おすすめです。もちろん、つかれているときは炒める手間を省いてもOK!


(出所:『超!解毒スープ おつかれ気味の腎臓がよみがえる』)

3 具材をさっと炒めたら、水分を注いで煮ます。

なので少し深めのフライパンで作るのがベスト。登場するのは水、昆布だし、アレンジによってはトマトジュースや豆乳など。添加物が入ったものは使いません。

炒めているフライパンにジャーッと注いで、塩を入れ、ふたをして煮ます。煮る時間は20分が目安。野菜がくたっとやわらかく煮える時間です。

つまり、これは野菜の細胞壁が壊れている証拠。体の中に入った時にも、野菜の成分がすんなりと私たちの細胞に取り込まれていきます。


(出所:『超!解毒スープ おつかれ気味の腎臓がよみがえる』)

調理の際に気をつけておきたいこと

大事なこと1 旬の野菜を上手に取り入れる

スープの主役は、旬の野菜です。どの野菜にも旬があり、おいしさも栄養価もピークを迎えます。今は1年中売り場にある野菜も多いですが、旬のものを選んでください。1年を通して旬のものを食べることで、季節に順応できる、巡りのいい体になります。季節ごとに会えるおいしい野菜が楽しみですね。

野菜はスーパーで買えるものばかりですが、基本的に薬膳の考え方をベースに、一般的な栄養学や最新の研究データをもとに組み合わせています。それらをいかに効率よく体内に入れるかを考えたのが、スープなのです。

野菜の食べ方にもいろいろありますが、毎朝スムージーを飲む人が実は冷えで悩んでいたり、サラダは細胞膜を咀嚼では壊しきれず、吸収できない栄養が多く残ってしまいます。

また、サプリだと野菜と違って栄養が単体なためバランスがとりにくく、体にとっては不自然です。食事として咀嚼する行為は人間の本来の姿であり自然な形。噛むことで脳が働き、腎臓を鍛えてくれますよ。旬の野菜をよく噛んで食べるのがベストです。

大事なこと2 天日塩を使う

スープを作るときに、必ずやっていただきたいことがあります。それは、昔ながらの自然の製法で海水から作られた、ミネラルたっぷりの自然塩を使うこと。中でも私が一番に推奨しているのが「天日塩」です。天日塩とは、海水を太陽の光と風によって結晶化させて作る塩のことです。

生命は海の中から生まれたといわれています。私たちの体内の多くは水分であり、今もイオンバランスは海水によく似ています。腎臓がつかれてしまうのは、このバランスが崩れてしまうから。だから、海水と同じミネラルを含む天日塩とたっぷりの水を摂ることで、腎臓はゆった〜りすることができる。そんなイメージを思い浮かべてみてください。

逆に、食塩などの安い精製された塩はミネラルが偏っており、腎臓にダメージを与えてしまいます。また、自然塩であっても岩塩はミネラルが少ないので、私のレシピでは使っていません。

もし天日塩が手に入らなかったら、原料が「海水」のみで、窯炊きなどの製法を使った塩ならスーパーで手に入りますから、塩だけは必ずいいものを使ってください。


(出所:『超!解毒スープ おつかれ気味の腎臓がよみがえる』)

スーパーで買えるレベルの“いいもの”を使おう

大事なこと3 いい調味料を使う

天日塩以外にも、スープにはいろいろな調味料が登場します。どれも特殊なものではなく、味噌、醤油、お酒やみりんといった一般的なものです。天日塩でしっかり味をつけることが多いので、風味をつける役割になります。

とはいえ、調味料は一度買ったらしばらく使うものなので、少しいいものを手に入れたいと思っています。“いいもの”とはいっても、私自身近所のスーパー「ライフ」で買っていますから、難しいことではないでしょう。

味噌や醤油は発酵食品であり、熟成しています。まずは、天日塩と同じようにパッケージをよく見て、余計なものが入っていないかをチェック。意外と甘い化学調味料や保存料が入っていたり、味噌にだしの素が入っていたりしているものです。こういったものは腎臓での処理に労力がかかって負担になりますから、毎日使うものではできるだけ避けましょう。


おすすめなのは、材料がシンプルで、発酵に時間がかかっている、つまり自然な形で熟成している調味料。味噌なら3年熟成などを選びます。

じっくり作られた調味料は人間には作り出せないアミノ酸などの成分がたくさん含まれ、化学的な添加物では出せないおいしさがあるからです。塩と同じように、腎臓に負担なく、それだけで薬のようです。調味料も、薬膳の世界では体への効能が期待できます。

高価なものでなくてもいいので、少し意識を向けるだけで体は変わっていきます。


(出所:『超!解毒スープ おつかれ気味の腎臓がよみがえる』)

スープを作る際は、以下に注意

□ 大さじは15㎖、小さじは5㎖です。
□ 調味料は、基本的に以下を使っています。
 ・塩……天日塩
 ・醤油……薄口醤油
 ・味噌……天然醸造味噌
□ 火加減は記述がない場合は中火です。
□ スープを煮込む際に、アクが出たら除いてください。
□ 野菜を洗う、皮をむく、種を除くというような基本的な下処理は省略している場合があります。皮はできるだけむかずに食べてほしいですが、農薬、汚れなどが気になる場合は、たわしでよく洗ってください。
□ 天日塩や味噌は天然の味なので味の濃さに差があります。好みで加減してみてください。
□ おろしにんにく、おろししょうがは生の野菜をおろしたものを使用してください。

※このメソッドは著者独自のものであり、効果・効用には個人差があります。
※事故やトラブルに関して本書は責任を負いかねますので、あくまでも自己責任においてご活用ください。
※このメソッドを行うことに心配や不安がある場合は、専門家や専門医にご相談のうえお試しください。

(大野 沙織 : 鍼灸師/心合いの風鍼灸院 主宰)