広汽集団の試作車は1回の水素補充で600キロメートル近く走行できる(写真は同社ウェブサイトより)

中国の国有自動車大手の広州汽車集団(広汽集団)は6月26日、「水素エンジン」を搭載した乗用車の試作車を発表した。

同社製のミニバン「伝祺E9」のプラグインハイブリッド(PHV)バージョンをベースに、研究開発部門の広汽研究院が開発した水素エンジン・システムを搭載。走行時の水素消費量は100キロメートル当たり1.4キログラム未満で、1回の水素補充で600キロメートル近く走ることができる。

「自動車の動力源は急速かつ構造的な変化の最中にある。長期的には(再生可能エネルギーで作られる)グリーン電力と水素が主流になるだろう」。広汽研究院の院長補佐を務める祁宏鐘氏は、そう予想する。

とはいえ、乗用車での水素エネルギーの普及は、まだ相当先になりそうだ。「わが社としては、まず(乗用車ではなく)大型トラック向けの事業化を優先していく」。広汽集団の総経理(社長に相当)を務める馮興亜氏は、水素エンジンの発表会でそう述べた。

燃料電池よりコスト面で有利

自動車の動力源としての水素利用には、水素エンジンと燃料電池の2種類がある。水素エンジンの原理は既存の内燃機関とほぼ同じで、燃料を(ガソリンやディーゼルから)水素に置き換えたものだ。一方、燃料電池は原理がまったく異なり、水素と酸素の化学反応から電流を発生させ、走行用モーターを駆動する。

燃料電池の製造コストは(現時点では)非常に高価であり、普及のボトルネックになっている。その点、水素エンジンのコストはガソリンエンジンの15%増し程度ですむため、相対的に有利と見られている。

とはいえ、水素エネルギーを商用ベースで本格普及させるには、まだ多数のハードルを乗り越えなければならない。


イベントで披露された広汽集団の試作品の数々(写真:同社ウェブサイトより)

水素の製造、貯蔵、輸送、(車両への)充填の各段階で、技術面やコスト面の難題を抱えているためだ。

水素ステーションの数はまだわずか

業界団体のデータによれば、中国国内の水素ステーションは2022年末時点でわずか358カ所しかない。


本記事は「財新」の提供記事です

広汽集団を含む中国の自動車業界で、大型トラックなど商用車からの普及を目指す考えが主流なのはそのためだ。

しかし現時点の広汽集団の主力は乗用車であり、商用車の生産・販売はごくわずか。そんななか、具体的な水素戦略をどのように進めるのか、真価が問われるのはこれからだ。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は6月27日

(財新 Biz&Tech)