私たちは所得税に復興特別所得税を上乗せして納めています。これは、給与所得者や自営業者でも同じです。
また、株などの売買益や配当益を受け取った際にも、復興特別所得税を上乗せして譲渡所得や配当所得にかかる所得税を支払っています。

この復興特別所得税とは、どのような税金で、どのように計算されて徴収されているのでしょうか。
今回は復興特別所得税の概要や納税義務者、納税方法などについて解説します。

復興特別所得税とは?

復興特別所得税とは、簡単にいうと「東日本大震災」の復興のための施策を行う目的で私たち個人納税者に課せられる税金です。2011年の12月に公布された「特別措置法」によって創設されました。ちなみに特別措置法の内容は個人だけでなく法人も対象で、法人にかかる税金は「復興特別法人税」と呼ばれています。

特別措置法が公布されたのは2011年12月ですが、実際に徴収が始まったのは2013年からです。

では、納税の対象となる人や課税期間、そして復興特別所得税の計算方法はどのようになっているのでしょうか。次項で詳しく説明します。

復興特別所得税の納税義務がある人とは?
復興特別所得税の納税義務がある人とは、個人であり、かつ、所得税の納税義務がある人です。つまり、個人でも所得が一定以下のため所得税を納めなくてもよい人は、復興特別所得税の納税義務もありません。

また、所得税と聞くと「給与所得」や「事業所得」にかかるものと捉える人が多いかもしれませんが、所得税ですので「雑所得」や「配当所得」、「不動産所得」、「一時所得」なども対象です。退職時に受け取る退職金も退職所得として、公的年金も雑所得として、所得税の課税対象です。そのため、一定額以上の退職金を受け取った人や年金を受け取っている人にも復興特別所得税の納税義務があります。

復興特別所得税の課税対象期間はいつまで?
復興特別所得税は今後ずっと課税されるわけではなく、課税される期間が決まっています。
「2013年1月1日から2037年12月31日まで」の間に得た所得が課税対象です。現在は2023年ですので今年を含めてこれから15年間課税が続くことになります。

復興特別所得税の税率と計算方法は?
復興特別所得税額は、「基準所得税額×2.1%」で求めます。

ここで使用する基準所得税額とは、その年の所得税額のことです。居住者か非居住者か、また居住者であっても以下の区分によって、対象となる所得税額は異なります。

なお、居住者とは、国内に住所がある、もしくは、現在まで引き続き1年以上居所を有する個人のことを指し、それ以外の個人は非居住者と規定されています。

復興特別所得税はいつ支払う? 納付方法は?
復興特別所得税は自営業者の場合は確定申告で、給与所得者の人は原則として源泉徴収によって納めます。また、株式の譲渡所得については、特定口座で源泉徴収ありの口座を選択している人は、金融機関が代わりに納めてくれるため確定申告は不要です。逆に源泉徴収なしの口座や一般口座を選んでいる人は、確定申告にて納めなければなりません。副業で得た雑所得も同じです。

ただし、所得税と同様に払い過ぎた場合には、確定申告もしくは年末調整によって還付を受けられます。

たとえば医療費控除の適用を受ける人や、住宅ローン控除の適用を受ける人のほか、ふるさと納税を行っていて寄付金控除を受けられる人は、年末調整での申告もしくは確定申告を行うことにより、払い過ぎた所得税とあわせて復興特別所得税も還付されます。また、退職などで年末調整を受けていない人も、確定申告を行えば還付を受けられる可能性が高いため、該当する人はぜひ確定申告をすることをおすすめします。

復興特別所得税の予定納税は必要?
予定納税とは、その年の5月15日において確定している「予定納税基準額」が15万円以上になる場合に必要な納付制度です。ちなみに予定納税基準額とは、所得税と復興特別所得税の合計額を指します。

予定納税の時期は第1期分が7月中、第2期分が11月中で、それぞれの予定納税基準額の3分の1を納めなければならないことになっています。

予定納税は義務であり、逃れることはできません。また、納税期日までに納めなかった場合、期限の翌日から納付日までの延滞税がかかりますので、忘れずに納めるようにしましょう。

復興特別所得税の使い道は?

東日本大震災復興関連予算の執行状況(2011年度~2020年度)をみると、執行見込額は38兆6,029億円で、被災者支援や住宅再建、復興まちづくりなどのために使われています。

現在行われている具体的な支援内容および状況は以下のとおりです。

1.被災者支援
・住宅、生活再建相談支援:被災者の新たな住まい探しへの同行、入居手続きのサポート
・コミュニティ形成支援:地域住民が主体となって、見守りや健康づくりの活動が実施できるよう、住民に対して運動や交流のコツを学ぶ機会を提供
・心の復興:ふれあい農園事業により、町に帰ってきた住民が野菜作りや収穫物を利用した交流会を行うことで、参加者間の交流につなげる
・心のケア支援:被災者へのアウトリーチを含む相談支援、心の健康に関する普及啓発など
・被災者生活支援:災害公営住宅などで暮らす被災者の日常生活上の困り事への対応
・県外避難者支援:県外に避難した人の帰還や生活再建に向けた相談支援の実施

2.住まいとまちの復興
被災した地域の生活に密着したインフラ復旧:概ね完了

3.産業・なりわいの再生
・製造品出荷額などの回復:被災県の製造品出荷額については、2014年に概ね震災前の水準まで回復
・二重ローン対策:被災者事業の二重ローン問題に対応するため、震災前の債権買い取りなどを通じて事業再生を支援
・企業立地補助金事業の実施
・商店街の再生:津波企業立地補助金や自立帰還支援補助金を活用した、共同店舗型商業施設の整備による支援
・新規事業の立ち上げおよび販路開拓の支援

これらの支援により、被災した人々の暮らしや地域の産業は震災前の水準に戻りつつありますが、まだ風評被害などが残っていることもあり、これからも引き続き支援が必要です。

まとめ

復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要となる財源の確保を目的とした税金で、2037年分まで、基準所得税額の2.1%を納めるものです。

納税義務者は所得税の納税義務があるすべての人で、給与所得者は源泉徴収で、自営業者の場合は確定申告で納めます。
払い過ぎた税金については所得税と同じように確定申告または年末調整を行うことで、還付が受けられます。

東日本大震災の被災地の復興のためにも正しく納税し、払い過ぎた部分については忘れずに還付を受けるようにしましょう。