不動産価値が上がるタイミングや、業界トレンドはどのようにしてチェックすべきでしょうか(写真:CORA/PIXTA)

人生の3大支出の1つとされる「マイホーム」。少なくない人が長期間のローンを組んで購入しますが、どのエリアを選ぶかは、その後の不動産価格の上昇・下落に直結するポイントです。

住友不動産販売で営業マンとして働いた経験を持つ、吉本興業所属の芸人、ぺんとはうすの世良光治さんの書籍『住宅購入で成功する人、大失敗する人 元大手不動産トップ営業マンの「不動産芸人」だけが知っている』より一部抜粋、再構成してお届けします。

日本人の生活スタイルを考えれば、不動産業界のトレンドがわかる

「どのような物件を購入すれば得をすることができるのか?」という質問をよくされます。不動産業者の目線から見れば良い物件なのに、一般の方から見るとどうしても古臭く見えてしまい、なかなか成約に至らないケースもあり、判断はなかなか難しくなります。

ただひとついえることは、不動産もその時代ごとに流行(トレンド)は存在するということ。それはいったい、どういうものなのかご説明しましょう。

例えば間取りでいうと、築年数の古い物件になればなるほど3Kや4Kといったタイプが多く、同じ面積でも築年数が新しくなるほど2LDKや3LDKといったタイプが多くなります。築年数の古い物件の中にはフルリフォームをされて、まるで新築のように生まれ変わっている物件も存在しますので一概には言い切れませんが、建築当初の間取図を見ると、昔の物件ほど3Kや4Kといった間取りが多いのです。

ちなみに、KとDKとLDKの違いはご存知でしょうか。これは「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」という長ったらしい規則(通称は表示規約や広告規約と略されます)に定められているのですが、この3つの違いは、部屋の大きさの違いだけです。

キッチンが存在する部屋の大きさが、6帖未満がKと表記され、6帖以上10帖未満のものがDK、10帖以上のものがLDKと表記されます。ちなみにこれは居室が2部屋以上、つまり2LDKなどの場合で、居室が1部屋の場合は、4.5帖未満がK、4.5帖から8帖がDK、8帖以上がLDKとなります。

つまり1LDKと表記するためには、キッチンが存在する部屋が8帖以上ないといけないのです。ちなみにいろいろな物件情報を見ていると、いい加減な不動産業者が9帖しかないのに2LDKと表記したりしているケースもたくさん見受けられます。

さて話を本題に戻しますが、築年数の古い物件ほどキッチンが存在する部屋が狭く、新しい物件ほどキッチンが存在する部屋が広いのです。昔はキッチンが存在する部屋がだだっ広くてもなんのメリットも感じなかったのが、今となってはキッチンが広くないことがデメリットになってしまうのです。

これがいわゆる不動産業界のトレンドです。

なぜ広いキッチンが必要になってしまったのでしょうか。それは、日本人の生活スタイルの変化です。

時代とともに変化する住まい

昔の日本は、キッチンは台所と呼ばれ、一家の女性のみが炊事をするための空間でした。サザエさんを想像していただければわかると思うのですが、波平さんとマスオさんが台所に立っているシーンはなかなか想像できないでしょう。彼らは通常、食事が出来上がるのを居間で待ち、そこで食事をするのです。

そういった生活スタイルを考えると、キッチンが広い必要は全くありません。その広さの分だけ、他に居間を一室作ることの方が魅力的だったのです。

それから時代を経て、台所にダイニングテーブルを置いて食事をする家庭が増えました。そうなると、6帖未満のキッチンでは少し手狭になったのです。そうした流れで、2DKや3DKといった間取りの物件が増えました。

さらに時代は流れ、ジェンダー意識が変わって、家族全員で食事の準備などの家事を協力して取り組むようになると、キッチンのある部屋が家族団らんの場になっていきました。

そうなってくるとダイニングテーブルの他に、ソファやテレビまで必要になってきます。そのすべてを賄(まかな)おうとすると6帖どころでは足らないので、10帖以上のLDKが必要になってきました。

ですから同じ面積の物件でも、新しい物件になるほど居室が少ない代わりにキッチンのある部屋が広くなっているのです。こうして2LDKや3LDKといった間取りへと変わっていきました。

近年では家での時間のほとんどをLDKで過ごす家庭も増え、パソコンや子どものおもちゃまでLDKに設置する必要が生じてきました。そうなってくると、10帖どころか20帖以上といったとにかく大きなLDKというのが、リッチな暮らしの代名詞となっていったのです。それが、不動産業界における間取りのトレンドになります。

さまざま住宅のトレンドが存在しますけど、その時代の日本人の生活スタイルに合った間取りの部屋が人気になり、値崩れせずに取引されることが多いということを覚えておいて損はないでしょう。

都心の一等地だけでなく、なぜ周辺も値上がりしたのか

さて、ここまで日本人の生活スタイルの変化と、間取りのトレンドについて紹介してきました。ですが、「どのような物件を購入すれば得をすることができるのか?」という観点で見ると、最近は他にも大事な要素が存在します。それは、外国人投資家の存在です。

昨今、外国人による日本の不動産買いが話題になっています。僕が住友不動産販売へ勤めていた2013年ごろから、既に東京都心部の港区・千代田区・中央区が投機的な意味で買われて、とにかく中国人の方の勢いはすごかったんです。

日本の不動産は欧米のように非居住者の取得制限がないので、日本に来なくても買えてしまいます。また、最近は円安の影響もあって、一説には上海のマンション1室を売れば、東京でビル1棟買えるとか。

投機目的の購入だけでなく、 最初は賃貸に出しておいて仕事を引退して時間ができたら、東京の別荘にしたい。こんなお客様もいらっしゃいました。日本に観光に来たりと、中国の人は日本が好きな人が多いように感じました。日本の不動産購入のセミナーが、中国で開かれたりもするようです。

彼らの特徴は高価格帯狙い。タワーマンションの眺望の良い部屋とか、都心部で買う方が多い印象です。

この外国人による「日本爆買い(不動産編)」で高価格帯を買おうとしてる人は、1億何千万円以上のマンションを買おうとしてる一方で、もちろん8千〜9千万円ぐらいのマンションも見てらっしゃる。この影響で、東京全体がじわじわと引っ張られて、値上がりしてきた側面もあります。

元々港区に住みたかったけど値上がりで予算が足りなくなり、港区をやめて目黒区にしようとか渋谷区にしようとなって、目黒区・渋谷区までが上がる。目黒・渋谷で考えてらっしゃる方が、城南が厳しいから城西だったり城北の方に行こうとか。この10年を振り返ったときには、まず港区・中央区・千代田区が上がっていって、そこからどんどん周りへ影響が浸透していきました。

一方で裏を返せば、もし売却する際には買い手に事欠かないことになります。外国人の非居住者への不動産取得規制等の法律ができたら、潮目が変わる可能性はありますが。

知名度は高くなくても、新路線や直通電車で住宅価格は上がる

外国人による爆買いについてお伝えしたので、次はインフラ関係の鉄道の新路線や直通電車で住宅価格が上がることをお伝えしたいと思います。

鉄道の影響としては、新路線開通が不動産価格を最も上昇させます。東京を見たとき、近年ですと「つくばエクスプレス」や「日暮里・舎人ライナー」などです。

「日暮里・舎人ライナー」は、荒川区の日暮里と足立区の舎人地区を結ぶ新交通システム。開業した2008年から、地域の人は盤石な通勤・通学の足を手に入れたことになります。

知名度はあまり高くない公共交通ですが、「日暮里・舎人ライナー」ができる前とできた後では、沿線の不動産相場は実際に大きく変わりました。

有楽町線延伸(豊洲〜住吉間)、南北線延伸(品川〜白金高輪間)につきましては、運営を行う東京メトロは国土交通大臣から鉄道事業許可を受けています。開通が実現すれば、延伸するエリアの住宅価格は上がるに違いないでしょう。こうして東京の湾岸部は、またもう一段住宅価格が上がるのではないでしょうか。

不動産価格上昇の可能性大のエリアは?

僕が今注目しているのは「江東区の枝川エリア」。値上がりはほぼ確実だと思っています。豊洲駅と潮見駅のちょうど中間地点ぐらいで、木場駅からはもっと離れます。陸の孤島のような場所ですが、「地下鉄8号線」という有楽町線の延伸が計画されているのです。

この新線が開通することで、枝川には新駅ができる計画も出ています。今まで徒歩10分圏内に駅がなかった物件たちが、徒歩5分圏内に駅できて、その時点でまず価格が上がります。

プラス、この辺りは港湾とか湾岸の海が近いエリア。倉庫や工場が多い場所なのですが、まとまったサイズの大きい土地が手に入りやすいことになります。「晴海を再び」と、倉庫や工場がある場所に数年後はタワーマンションが林立するかもしれません。

住宅街にタワーマンション造ろうと思うと、何十もの地権者に「売ってください」とお願いして歩いて、全員からOKをもらわないと実現しません。

一方で倉庫や工場なら、運営している法人に「売ってください」と交渉し、「いいですよ、分かりました」となれば、タワーマンションが建られます。大規模開発がしやすい可能性があるわけです。しかも枝川はまだ、不動産価格はそこまで値上がりしていません。アベノミクスで確かに少々値上がりはしましたが、晴海ほどの影響は受けていないのです。


ただ、これは首都直下型地震、津波災害指定がないという前提付き。それさえなければ、ほぼ間違いなく枝川の値は上がると思っています。

また、既に値上がりしていますが、品川駅周辺はもう一段上がると思っています。

品川は、リニアモーターカーの発着点の開業予定と、品川駅から北西方面への便の悪さの解消としての新線「品川地下鉄」の構想が浮上しています。山手線の内側で白金、高輪までつなぎ、南北線や三田線に入っていく路線です。

交通といえば道路関係ですと、東京では外環道路をずっと計画してて、今、練馬区・大泉学園のあたりまで来ています。高速道路が全部突き抜けて東名に接続できたら、大泉学園は値上がりするかもしれません。このエリアは車移動の方が多いので、高速道路への接続は影響が大きいでしょう。便利になれば、必然的に不動産価格も上がります。

(ぺんとはうす世良光治 : 吉本興業所属の「不動産芸人」兼フリーランスの不動産営業マン)