原発事故をきっかけに、次々と電化製品を処分し、月に230円程度の電気代だけで暮らす稲垣えみ子さん。日々の暮らしが楽しいと感じる理由を伺いました。

冷蔵庫を使わなくても、食を楽しむ日々の知恵

もともと料理好きという稲垣さん。冷蔵庫を使わない決断をした当初は、不安だったそう。

【写真】江戸時代を意識した食事

「やってみたらいいことしかない。ご飯にみそ汁、漬物といった地味な献立は、飽きることがありません」

●余り野菜はベランダで干して保存

使いきれなかった野菜はベランダで天日干し。

「干せば干すほど水分が抜けていくので、腐らないんです。みそ汁や煮物などに使えば火のとおりも早く、時短になります」

かんきつ類の皮も干してオイルの香りづけや香辛料に。

●メシ、汁、漬物さえあれば幸せ

参考にしたのは江戸時代の食事。

「ご飯にみそ汁、自家製のぬか漬けや煮物などの一汁一菜が最高にうまい! 干し野菜を使ったみそ汁はうま味たっぷりで、だしをとらずとも大丈夫」

●ぬか床を毎日慈しむ

毎日欠かさず食べているぬか漬けで、腸も元気に。

「大根やトマトなど、どんな野菜も漬けておくだけで、ご飯にもつまみにもぴったりの一品に。冷蔵庫に入れるのではなく、常温で保管してこそ、ぬか漬けはおいしくできます」

●調味料のメインは自家製梅酢

梅干しを漬けるときにできる自家製の梅酢(写真右上)をメインの調味料に。

「塩気と酸っぱさの両方を兼ね備えているので、どんな食材とも合わせやすくて便利。ほかの調味料は玄米を炊くときに使う塩と、みそくらい」

●おひつご飯はおいしさ長もち

玄米に雑穀や豆などを加えたご飯は、夏場は毎日、それ以外は3日に1度炊いて、おひつに保存。

「冷めてもおいしく食べられて驚きます。電子レンジで温めたご飯って、なんだったんだろうと思う」

●保存食があれば生きていける

キッチンで常温保存しているのは左から玄米、自家製梅干し、粕漬け用の酒粕、100年ものの梅干し(いただきもの)。

「あとはその都度、旬の野菜や厚揚げなどを買えば、冷蔵庫がなくても困らず、食費は多く見積もっても月2万円程度ですんでいます」

●ガスは契約せずカセットコンロで調理

食事づくりは、カセットコンロ1つで。

「保温性の高いストウブの鍋を使い、沸騰したらすぐに火からおろし、キルティングの“おくるみ”で保温調理。こうした工夫でカセットボンベは週1本程度で乗りきります」