道で「猫」を見かけた経験がある方も多いかと思いますが、もしその猫がケガをしていたらどうしますか…? 今回は保護猫の小虎くんと暮らす、ライターの高木沙織さんが出会った、ある猫との出来事をつづってくれました。

玄関先に傷だらけの猫がやって来た!

“お外で暮らす猫”を見かけたことはありますか? 千葉や埼玉で暮らす筆者は、ときおり見かけることがあります。

2022年8月夏の暑い日のこと。キッチンで洗い物をしていると、玄関先からなにかが動くかすかな音が聞こえてきました。ドアを開けると、そこにはガリガリにやせた三毛猫が1匹。推定年齢は、1歳くらい…? よく見ると、顔や手足には痛々しいケガがいくつもありました。小さな手にギュッと力を込めてフラフラな体を支える猫は、ギリギリのところで踏ん張っているようにも見えます。今回はこの猫との出会いについて少しご紹介します。

●野良猫にごはんをあげてもいいのか?

猫を見て「ごはんかな。おなかが空いてるんだよね?」とっさにこう思った筆者。わが家には愛猫・小虎がいるため、猫用のドライフードやウェットフード、おやつならたくさんあります。

だけど、次の瞬間には「ごはんってあげてもいいんだっけ?」という疑問。はたと手が止まります。というのも、お外の猫にご飯をあげて周辺の生活環境を悪化させた場合、違法になると聞いたことがあるからです。

でもこの猫は、すぐにでもなにか食べさせないとどうなってしまうかわからない。それほどまでにひどく衰弱して見えました。ごはんだけでなく、病院にも連れて行ったほうがいい気がする。

けれど、どうやって? 兎にも角にも放っておくことができず、水と「ちゅーる」をひと絞り。猛烈な勢いで舐めまわして去っていく猫を横目に、もし明日も来るようだったらどうにかして捕獲できないものかと首をひねるのでした。

迎えた翌日。また猫が来ました! ところが警戒しているのか、筆者の目論見に気づいたのか、前日のようには近づいてきません。次の日も、そのまた次の日も水とほんの少しの「ちゅーる」を用意しておくと、筆者が見ていないときに飲み食いしている様子。しばらくの間は、自分がしていることがいいことなのか、そうでないのかわからずに過ごしていたのですが…ある運命的な出会いを果たすことになります。

●わからないことは、プロに頼ることも大切

今日はどうなんだろうと、ぼんやり考えながら駅近くのスーパーに出向いた帰り道。視線の先に小さな人だかりを見つけます。“猫の譲渡会”と書かれたのぼりの奥には、簡易テーブルとその上に置かれた2つのケージ。

吸い寄せられるように近づくと、里親を探す猫たちと並んで“TNR”の看板。TNRとは、T=Trap(猫を安全に捕まえて)、N=Neuter(不妊・去勢手術をして)、R=Return(元の場所に戻す)活動のこと。なんとなく聞いたことはあったけど、自分にとって身近ではないとそれ以上に興味を示してきませんでした。

都合のいい話かもしれませんが、もしかしたらこの活動であの猫を助けられる? 心強い味方を見つけたような、希望の光が差し込んだかのような瞬間でした。近くにいたスタッフさんに声をかけ相談すると、「それは心配ですね」と親身になってくれて緊張の糸がほぐれていきます。

そこからはすぐさま捕獲して病院へ連れて行き、怪我の状態を診てもらうのと同時にTNRもすませようと、とんとん拍子。なんと数日後には、捕獲器を持ってわが家まで来てくださったのです。

●捕獲器と猫のその後…

保護猫活動のボランティアさんに、捕獲器の設置方法や使い方を教わったのですが、どうやらそれほど難しくないみたいで、ホッと一息。その夜、教わったとおりに鶏ささみを少量仕込んで物陰から猫を待ちます。

すると、1歩1歩なかに入っていく猫。しかし、用意した器が大きかったせいで、猫が入る前のちょっとした振動によってガシャン…。猫は慌てて、怯えて逃げて行ってしまったのでした。助けようと思ってしたことが裏目に出て、恐怖心を植えつけてしまいました。

かわいそうなことをしてしまった…。それからというもの、ちょこちょこ顔を出してはくれるのだけど、捕獲器には近寄らない猫。警戒心マックス。その日を最後に、5日続けて姿をあらわさなくなりました。

「もう、来てくれないかも」反省と後悔に苛まれること6日。こちらに向かってくる猫の姿が! 夢のような光景です。よく見ると、さくら耳(動物病院でTNRを済ませた目印として、耳の先端をさくらの花びらの形にカットする)になって…。

保護猫団体に報告すると、近所で保護猫活動をされているほかの方のところで捕獲されたのでは、と。相談の結果、外の暮らしが長い&人慣れが難しそうな猫だったため地域猫として受け入れてもらうのはどうかという結論に至ったのでした。

三毛猫の女の子なので、名前は「ミケ子」。今では筆者のみならず近隣の方も温かく見守ってくれるようになり、別宅でもおいしいごはんをもらっているそう。TNRについての賛否、地域猫に対する意見はそれぞれだけど、ミケ子にとっては今日を生きる術となったようでそれなりに健やかに過ごしています。

●地域猫について勉強するようになった

またこのミケ子との出会いがきっかけとなり、ただの猫好きだった筆者は保護猫・地域猫について勉強をするようになりました。

具体的なことを挙げると、保護猫カフェでスタッフの方に話を聞いたり、TNR勉強会に出席したり、保護猫ボランティアに参加させてもらったり、また保護猫イベントへ出向いたりといったところ。

先日、6/24・25に東京ドームシティで4年ぶりに開催された伝説の保護猫祭り『ネコ市ネコ座with BSキャッツ東』では、グッズの売り上げが一部猫助けに使われると聞き、散財。

入場まで1時間並んで入った会場内は大盛況! 保護猫への興味・関心の高まりをヒシヒシと感じ、1人勝手に来場者に仲間意識を抱くのでした。

物価や電気代の高騰で節約、節約と思っていたけれど、久しぶりに気持ちのいいお金の使い方をしたっ!

なんの前触れもなく、家の前にフラッとやって来たミケ子。彼女には安心してくつろげる家もなく、食事も保証されていないんだなぁという厳しい現実。ドア1枚を挟んだ内と外とで、猫生(人生)こんなにも違うのかと彼女に教えられました。

そんな猫たちを救うために邁進してくれているボランティアの方々には頭が上がりません。以上、野良猫に頼られたら…筆者はこうしました! というお話でした。もし今、野良猫をどうしたら…と悩んでいる方にとっての1つの解決策になればうれしいです。