「世界一」をゴールと定めたU−20日本代表の旅はまもなく、目標のはるか手前で終わりを迎えようとしている。

 U−20ワールドカップのグループリーグ第3戦。この試合に勝てばもちろん、引き分けでも自力での決勝トーナメント進出が決まる日本は、しかし、イスラエルに1−2と痛恨の逆転負けを喫した。

 この結果、C組3位でグループリーグの戦いを終えた日本は、自動的に決勝トーナメント進出となる2位以内に入れなかったばかりか、3位での進出(全6組の3位チームのうち、成績上位の4チームが決勝トーナメントへ進出できる)も数字上、かなり厳しい状況となっている。グループリーグのすべての試合が終わる5月28日(日本時間29日)までわからないとはいえ、日本に朗報が舞い込む可能性は極めて低い。

「負けてしまったことは現実だし、これを受け止めないといけない」

 悔しい敗戦についてそう語ったキャプテンのMF松木玖生は、「まだ(決勝トーナメント進出の)可能性は残っているので、そこに希望をかけるが」と前置きしながらも、「世界との差を見せられた大会かなと思う」と力不足を認めた。

 決勝トーナメント進出がかかった、勝負のイスラエル戦。日本はこれまでの3試合のなかで、最もいい内容で試合に入ることができたのは間違いない。立ち上がりから落ち着いてボールを保持して主導権を握り、いくつかの決定機を作り出すことにも成功した。

 そして前半終了直前の45+1分、日本は敵陣で得たFKから、最後はFW坂本一彩が頭で押し込み、先制。劣勢のなかでワンチャンスを生かした過去2試合とは異なり、日本が攻勢に試合を進めるなかで手にした先制ゴールだった。

 冨樫剛一監督が語る。

「(試合前に想定した)プラン的には、前半の終わりに1−0になったところまでは、選手はすばらしかった」


前半終了間際に先制し、いい形で試合を進めていたU−20日本代表だったが...

 後半に入っても、反撃姿勢を強めるイスラエルに日本は落ち着いて対応。ピンチらしいピンチもなく、試合を進めることができていた。

 しかも後半68分には、イスラエルにイエローカード2枚による退場者が出たことで、さらに戦況は日本優位に傾いた。この時点では、同時刻キックオフの試合でグループ1位のコロンビアがセネガルに0−1でリードされていたため、日本がもう1点加えることができれば、逆転首位通過も見えてこようか、という状況にまでなっていた。

 ところが、日本優位の試合展開が、逆にイスラエルを奮い立たせる一方で、日本を受け身に回らせてしまったのかもしれない。

 松木が悔しさをかみ殺すように語る。

「相手はひとり少ない状況だったが、すごく勢いを持ってきた。自分たちはビルドアップのところで焦ってしまって、(前がかりになった)相手の裏をつくことができず、相手のプレスが効いていたので、少しビビってしまったかなという印象がある」

 キャプテンが感じていた印象が実際のプレーとなってピッチ上に表れたのは、後半76分のことだ。

「勝っている状況で、自分のミスで(与えたFKから)失点してしまった。あれは本当にいらないプレーだったし、相手が(前がかりに)きていたので、そこを(裏を取って)ひっくり返すようなプレーをしないといけなかった」

 MF佐野航大の言葉どおり、直接的には佐野のミスパスでボールを失ったことが相手のFKにつながったとはいえ、それを誘発したのはチーム全体の弱気な姿勢である。

 冨樫監督が語気を強める。

「相手の退場までは非常に我慢強くやっていたと思うが、せっかく(イスラエルが)10人になったのに、1失点目のスタートはたぶん(マイボールの)FKをうしろに下げたところから(ミスが出てボールロスト)だったと思う。そういうところがサッカーの勝敗をどっちに転ばすかの機微だと思うし、私も含めて、そういうところが非常に拙いなと思う」

 結果的に、日本は今大会の3試合すべてで前半のうちに先制しながら、勝ったのは1試合だけ。残り2試合は後半に2点を失い、逆転負けを喫した。唯一逃げきって勝利したセネガル戦にしても、終盤は引いて守ることしかできず、ただただ耐える時間を過ごしている。

 松木が振り返る。

「意図的にではなく、ビビってしまって守備に回ってしまっているところが(後半劣勢になる)一番の原因かなと思う」

 加えて松木は、すでに前半からその兆候を感じていたことを明かす。

「前半はボールを動かせていたが、(守備では)プレスのところがちょっと合わない部分があって、それが後半、時間が経つにつれて修正できなくなってきて、その部分で失点してしまった。そこが悔やまれる」

 数的優位を生かしてボールを保持し、1点リードのまま時間をやり過ごす。そんな芸当ができるほど、日本の選手たちは賢明でも、狡猾でもなかった。若さゆえと言ってしまえばそれまでだが、あまりに寂しい負け方だった。

 冨樫監督が語る。

「イスラエルは10人でリスクをとって攻めてきたので、逆に言えば、スペースはものすごく空いていた。幅と深さをとりながらボールを動かすことは、彼らの力なら十分できたと思うが、それをさせてもらえない圧力があったのかなと思う」

 1−0でリードしながら、終わってみれば、退場者を出して10人になった相手に逆転負け。まさかの、としか言いようのない結末である。

 思えば22年前、同じアルゼンチンで開かれたU−20ワールドカップ(当時はワールドユース選手権)で、日本はグループリーグ敗退に終わっている。それは過去、開催国枠で出場した1979年大会を除けば、日本が唯一決勝トーナメントに進出できなかったU−20ワールドカップだった。

 再びアルゼンチンで開催された今大会、またしても悲劇は繰り返されようとしている。