ソールオリエンスの二冠達成を阻止する馬はいるか? 穴党記者が日本ダービーで一発を期待する伏兵2頭
3歳春のクラシック総決算となるGI日本ダービー(東京・芝2400m)が5月28日に行なわれる。
今年の3歳牡馬戦線は、2歳GIが行なわれる前から「大混戦」と言われ続けてきたが、三冠初戦のGI皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)をソールオリエンス(牡3歳)が無傷の3連勝で勝利。その豪快な勝ちっぷりもあって、すぐさま「一強」といった状況に一変した。ダービーでは、同馬が1番人気に推されることは間違いないだろう。
そして、過去10年の1番人気の結果を振り返ってみると、3勝、2着2回、3着2回。さらに皐月賞を制した1番人気に絞ると、6頭が該当して2勝、2着2回、3着1回と、その信頼度はかなり増す。ソールオリエンスも、馬券圏内(3着以内)に入る確率は相当高いと見ていいだろう。
とはいえ、過去には伏兵の台頭も頻繁に見られ、直近5年は7番人気以下の穴馬が毎年馬券に絡んでいる。おかげで、3連単ではしばしば好配当が生まれており、2018年には285万6300円といった超高額配当まで飛び出した。1番人気が安定した結果を残していながらも、馬券的な妙味は十分にあるレースと言えるかもしれない。
そうしたなか、狙い目となるのはどんなタイプか。日刊スポーツの松田直樹記者はこんな見解を示す。
「牡馬クラシック第1弾の皐月賞に臨むローテは多様化してきましたが、第2弾のダービーは皐月賞組が強さを見せつけています。過去10年で7勝。2018年以降の過去5年では、皐月賞で1番人気、もしくは1着馬が3勝、2着1回と好成績を残しています。
そうなると、3戦無敗の皐月賞馬ソールオリエンスが有力ですが、伏兵として狙ってみたいのも皐月賞組。とりわけ、皐月賞で負けていても、いい走りをしていた馬は積極的に拾い上げていきたいです」
「いい走りをしていた馬」というのは、具体的にどういった馬なのか。松田記者が続ける。
「ダービーでは『皐月賞で脚を余した馬を狙え』とよく言われています。実際、中山の直線は525.9mある東京の直線よりも200m以上短い310mで、皐月賞で差して届かなかった馬がダービーで大逆転を決めたシーンは何度も見てきました。過去10年で言えば、2014年のワンアンドオンリー(皐月賞4着)、2016年のマカヒキ(同2着)、そして昨年のドウデュース(同3着)らがいい例です」
とはいえ、今年の皐月賞は短い直線も苦にすることなく、ソールオリエンスが豪快な差しきり勝ちを披露。"差し届かなかった馬"となると、該当馬はいないような気がするが......。
「確かに、今年の勝ち馬ソールオリエンスは4角17番手からの追い込み。何度見ても、その走りには驚かされました。メンバー最速の上がりをマークしての大外一気は、『東京でこそ』と個人的にも思っています。ですが、そのインパクトの影に隠れて、いい末脚を見せた馬がいました」
松田記者はそう言って、穴馬候補の名前を挙げた。
日本ダービーでの一発が期待されるシャザーン
「シャザーン(牡3歳)です。新馬戦(7月31日/新潟・芝1800m)では押し出される形でハナに立って、直線での叩き合いの末に2着に敗れましたが、2戦目の未勝利戦(1月15日/中京・芝2000m)はメンバー最速の上がりを繰り出して、2番手から鮮やかに抜け出して完勝。躓いて最後方からの競馬となった3戦目のリステッド競走・すみれS(2月25日/阪神・芝2200m)でも、大外から強襲してゴール前で見事に差しきりました。
加速には時間がかかりますが、トップスピードに乗ってしまえば、長くいい脚を使えるのが、この馬の持ち味だと見ています。
その特徴を皐月賞(6着)でも存分に見せていました。終始外の後方を回り、3角すぎから早めのスパート。前半1000mがすべて64秒以上というスローペースしか経験していないなかで、重馬場ながら前半1000mが58秒5という速い流れのなか、昨年のドウデュースを彷彿とさせるまくりで動いていきました。
結果的にはうしろにいた勝ち馬の爆発力に屈しましたが、東京向きであろうスピードの持続力を未体験の流れのなかで発揮できたのは収穫と言っていいでしょう。
管理するのは、ダービー3勝の友道康夫厩舎。同厩舎では1週前にびっしり仕上げて、当週は微調整でレースに備えるのが調教パターンですが、1週前追い切りの動きは絶好。前走以上を思わせる出来です。良馬場濃厚の頂上決戦では、ゴールに向かってぐんぐん伸びていく末脚が見られると思います」
松田記者はもう1頭、皐月賞組以外で気になる馬がいるという。シャザーンと同じ友道厩舎の管理馬だ。
「未勝利戦からの3連勝でGII京都新聞杯(5月6日/京都・芝2200m)を勝ったサトノグランツ(牡3歳)です。
追い比べを制した前走で上がり33秒3の脚を使っていますが、どちらかというと、スパッとキレるタイプではなく、前目で脚を使い続けるタイプ。皐月賞で2着に力走したタスティエーラ(牡3歳)がそうしたように、穴をあけるなら、キレ味抜群の相手より前々の競馬で抵抗できる馬と見ています。
同じローテーションでダービー制覇を遂げた2019年のロジャーバローズ(京都新聞杯2着馬)のような積極策での一発を期待しています」
はたして、ソールオリエンスの二冠達成を阻む存在はいるのか。競馬界最高峰の舞台で繰り広げられる熾烈な争いに注目したい。